「2024年1月1日から強制される米国企業透明化法の概要を解説」GO法律事務所 佐渡山弁護士が解説

更新日 2023.11.27

目次

GO法律事務所の
佐渡山美紀弁護士 

2024年1月1日から報告書の提出が義務化される
企業透明化法(CTA)とは? 


米国連邦政府は、2021年1月1日に、企業透明化法(CTA)を制定しました。この法律は、国防権限法の一環として導入され、マネー・ローンダリング、税務詐欺、テロ資金供与などの違法行為を防ぐことを目的としています。CTAに基づき広範な法人は、所有者や支配者を特定する報告書を米国財務省の金融犯罪捜査網(FinCEN)に提出する義務があります。この義務は2024年1月1日に発効し、それ以降に設立される法人は即座に、既存法人は2025年1月1日までに報告書を提出する必要があります。


CTAはこれまで規制されていなかった企業に対し、所有権の総合的な追跡を目指すものです。法人のコンプライアンスは所有者ではなく法人自体に課せられ、既存法人や休眠法人も対象となります。報告に問題のある法人は早急に対策を講じる必要があります。この要件に対処し、遵守するために、関係者はCTAの適用について理解し、報告期日に向けて準備することが重要です。

なお、この記事は法的助言ではなく、法的な助言やサポートが必要な場合は、別途専門家に相談することをおすすめします。 

CTA報告要件の概要

報告義務の対象となる会社(報告会社)とは? 

現地法人である報告会社(Domestic Reporting Company)
小規模かつ規制の対象外の企業が報告書提出の対象であり、「報告会社」には現地法人と外国法人が含まれます。現地法人は、米国内や米国領・インディアン部族の法律に基づき、州務長官などの登記当局に所定の書類を提出して設立された法人を指します。

例えば、ハワイ州の登記当局である商業消費者局(DCCA)に「Articles of Incorporation」を提出したcorporation、または「Articles of Organization」を提出したLLCは、報告会社に該当します。また、ハワイ州の場合は、Corporation、LLCに加え、limited liability partnerships、limited partnerships、general partnershipsが含まれます。

外国法人である報告会社(Foreign Reporting Company)
米国の法律の下で、登記当局に外国法人として登録した、あるいは登録される米国外で設立された株式会社、合同会社等を指します。
例えば、ハワイで事業を営むために、日本で設立された株式会社を外国法人としてDCCAに登録された場合は、報告会社に該当します。
 

「報告会社」に該当しない法人とは? 

CTAは、報告義務から免除される法人(適用除外会社)をリストしています。その中には、大手事業会社、特定子会社、上場会社、休眠法人、政府当局、銀行、信用組合、マネーサービス事業、ブローカーディーラー、有価証券報告書発行者、証券取引法下の登録法人、投資会社または投資顧問業者、ベンチャーキャピタル・ファンド顧問業者、保険会社、商品取引法下の登録法人、非課税法人や非営利法人等が含まれます。
上記に加え、特定のプールされた投資ビークル(Pooled Investment Vehicle)は、銀行、信用組合、ブローカーディーラー、連邦法の下に登録された投資顧問業者、ベンチャーキャピタル・ファンド顧問業者等の適用除外会社に運営あるいは助言されていることを前提に、適用除外とされます。但し、適用除外会社に該当するPooled Investment Vehicleが米国で登録された外国法人である場合は、当該法人の実質的支配者の情報をFinCENに報告する必要がございます。

なお、適用除外会社に該当しなくなった法人は、その日より30日以内に報告書を提出する義務があることに留意する必要があります。

報告書に記載するべき個人

CTAでは新たな報告義務として、これまで非公開であった法人もその所有者・支配者、設立者に関する情報を提供しなければなりません。法人設立や経営に関わる個人情報の開示にも必要となるため、その了承を取るなどの準備が必要となってきます。報告書に記載すべき個人としては大きく下記の2つの種類に分類されます。

 

Beneficial Owner(実益所有者) 

FinCENは、各報告会社につき、最低でも1人のBeneficial Ownerとして以下の条件に当てはまる個人を報告することを義務付けています。

実質的支配力のある者(Substantial Control): 例えば、報告会社のPresident、CEO、CFO、COO、General Counsel、または同等のSenior Officerや、Senior Officerや取締役会の過半数を選任・退任させる権限を持つ者、報告会社の重要な意思決定に影響を与える者、報告会社を実質的に支配する仲介事業体の支配者などが含まれる。

25%以上の持分を所有する者(Ownership Interests): 持分は株式やLLCの持分だけでなく、さまざまな契約や関係も含まれる。債権者もOwnership Interestsを保有すると見なされ、株主と同等の権利を有する債権者も該当。

Beneficial Owner除外者: 未成年者やその親権者、ノミニー、仲介人、報告会社の従業員、将来相続によって持分を受ける権利を有する者、債務の支払い権利のみを有する債権者は、Beneficial Ownerの定義から除外。

Company Applicant(会社設立等申請者)

 Company Applicant(会社設立等申請者)として、法人を設立するための書類を直接提出する者についての報告も必要です。また既存法人にはこの申請は報告義務はなく、報告する必要がある新規設立の場合でも、当初報告された情報が正確でさえあれば、以降、その内容に変更があっても当該情報を更新する必要はありません。

だれがCompany Applicantに該当するのか?についてはCTAのガイダンスでケース別に解説がされています。報告会社の従業員として直接書類提出を行った者、書類提出業務を監督・責任を持つ者、登記当局での設立書類処理を行う弁護士事務所の弁護士およびパラリーガル、個人が弁護士事務所や他者の支援を受けず自ら書類を用意・提出した場合などが該当します。複数の申請者が関わっている場合には、主に当該業務を監督し、責任を持つ者がそれにあたります。

報告書に含めるべき内容

Beneficial Owner(実益所有者) とCompany Applicant(会社設立等申請者)の内容

  • 姓名
  • 生年月日
  • 現住所(Company Applicantが例えば弁護士等の場合は、事務所の住所を開示)
  • 有効な特定番号(unique identifying number)入り写真付き身分証明書。



Beneficial Owner・Company Applicantに該当する者が上記情報を報告会社に開示したくない場合、あるいは複数の報告会社のBeneficial Owner・Company Applicantである場合は、予めFinCEN番号(FinCEN Identifier)を取得し、上記情報の代わりに当該FinCEN番号を報告会社に提供し、報告に含めることが可能。但し、FinCEN番号保持者は、以下の義務があります。


・FinCEN番号を取得する際、開示した情報に変更が生じた場合は、当該変更後30日以内に登録された情報を更新すること。
・開示した情報が不正確であった場合、当該事実を知ってから30日以内に訂正すること。なお、直接、間接を問わず、報告会社のOwnership Interestを所有している者が適用除外会社であり、ある個人が当該適用除外会社のOwnership Interestを所有しているが故に、報告会社のBeneficial Ownerに該当してしまう場合は、当該個人の情報ではなく、適用除外会社の名称のみを開示することができます。他方、当該個人が適用除外会社に加え、適用除外会社でない法人を通じても報告会社のOwnership Interestを所有している場合、あるいは報告会社のBeneficial Ownerである場合は、上記例外対応は適用されません。

Reporting Company(報告会社)の内容

  • 法人名
  • 商号(正式な登記・登録の有無を問わず)
  • 住所(米国に本店所在地がある報告会社は、その住所。その他の報告会社は、米国内の主要営業所の住所を報告する。P.O. Box、第三者の住所(例:設立を支援する弁護士事務所の住所)はNG。)
  • 法人の設立等米国管轄区域
  • 納税者番号(国納税者番号を取得していないForeign Reporting Companyは、母国の税務申告番号、並びに発行国を要開示)

まとめ 

CTA(企業透明化法)は、米国で事業を展開している既存法人および新設法人に対して、所有権を明示的に示す新たな報告義務を課す法律です。これまで非公開だった法人も、所有者や支配者、設立者に関する情報を提供する必要があります。報告義務は法人に向けられるため、個人の特定や了承が求められます。また、ほぼ休眠状態である既存法人も報告義務の対象となり得ます。CTAの期日が迫っているため、適切に対処・遵守できるよう、早急に準備を進めることが重要です。この要約はCTAの報告要件についての概要であり、詳細な精査や法的助言が必要な場合は専門家に相談することが推奨されています。


CTAに関し、詳しい精査や法的助言その他のご支援が必要であれば、まずはお気軽にGO法律事務所までご相談ください。 

 


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