日本で不動産を所有している方が、海外不動産に投資しようと言う時、気になるのが賃貸のルールや法規制が日本とどのように違うのか?ということではないだろうか。その法律に変化の波が来ている。
今回は、ご自身も不動産投資家として長期賃貸物件(6ヶ月以上)を所有しながら、長年ハワイで賃貸管理を手掛けるグレースインターナショナル不動産の岡崎恵子さんに、2026年の法改正と、オーナーが知っておきたいポイントについて伺った。
さまざまな法改正で、強まる「テナント保護」の動き。
不動産オーナーはご注意ください
ご自身も不動産投資家であり、
不動産売買のほかに、不動産管理も60件以上。
そもそもの日米の賃貸事情の違い
岡崎さん:
ハワイで「長期賃貸」というと一般的に、6ヶ月以上の貸し出しのことを意味します。今日は、長期賃貸物件を所有している日本人オーナーにぜひ知っていただきたい最新情報をお伝えしたいと思います。
そもそもの話ですが、日本とアメリカの賃貸事情にはさまざまな違いがあります。例えば、賃貸マーケットの需給バランスや文化的な背景から、アメリカではどちらかと言えばオーナー側の権利が強く、日本はテナント側の権利が強いと言われていました。
契約期間一つとっても、日本では、2年更新など長期契約が多いの対し、アメリカではまず6ヶ月や1年の長期契約からスタート、それを過ぎた後はMonth to Month(毎月更新)の契約に切り替えるなど、オーナーが長期コミットを避ける傾向にあります。これもどちらかといえばオーナー側にメリットが多いルールです。
しかし近年は、アメリカでもコンシューマープロテクション、つまり消費者保護の流れが強まっています。それを受けて、ハワイの不動産賃貸においても「テナント保護」の方向へバランスをとるべく法律が見直されています。その代表例が、2026年2月から施行されたAct278です。
そのほかにも、近年、入居審査や修理対応などについてもルールが整備され、オーナーや管理会社にはこれまで以上に正確な知識が求められるようになっています。
知人の紹介やオンライン広告を利用して、ご自身でテナント募集から契約、管理まで行っている方もいらっしゃるでしょう。ここで、しっかりした法令を遵守した募集や管理体制をとれているか、今一度ご確認いただきたいと思います。
ホノルル不動産 賃貸管理の大きな変化
2026年施行「Act278」
テナントの家賃滞納による退去までのプロセスが長期化することに
貸し出している物件でテナントの家賃滞納があった場合の退去(エヴィクション)を求めるプロセスに大きな変更がありました。できれば避けたい事態ですが、入居時の審査で「クレジットスコアが良かったからこの人は安心だろう」と思っていたのに、いつの間にか失業や離婚など事情が変わり、家賃が払えなくなってしまった・・・といったケースは起こり得ます。
具体的にはこのようなルールが発表されています。
- 家賃滞納が発覚後、テナントに「支払いまたは退去」を求める通知書を送付するまでの待機期間が10暦日に伸びた
- 通知書は州指定の仲裁機関(メディエーション)にも送付する必要がある
- テナントが希望した場合は、訴訟前に仲裁機関が立ち合いのもとでの話し合いの機会を設ける必要がある
- 退去までに以前より時間がかかるケースが増える可能性がある
今までの法律では、家賃滞納が起きてしてから、5営業日でオーナーから「支払いか退去か」を迫り、訴訟を起こす権利が発生していました。しかし、2026年の法改正では、それが10暦日に伸び、かつ仲裁機関という第三者を交えて話し合いの機会を設けることが定められました。
これにより、オーナー側からすると、家賃滞納が発生した際に物件を取り戻すまでの期間が以前より長くなる可能性があるという点は、知っておかなければなりません。数少ない仲裁機関が、多数の案件を捌いてるため、さくさくと進むとは限りません。
特に個人オーナーで知人・友人に貸してきた方などに信頼ベースで貸して来た方は注意が必要です。家賃未払いのまま、だらだらと居座られてしまう可能性があります。
賃貸申し込み料(アプリケーションフィー)は実費のみ請求
そのほかのルールとして、アプリケーションフィーは実費のみ請求可というのが明記されました。この実費というのは、オーナーや管理会社が申込者へ請求できるのは、信用調査会社への調査費用を指します。通常は25〜35ドル前後です。
以前は、実際の調査費用よりかなり高い金額を請求していた悪徳不動産業者もあったと聞きます。過剰請求を許さない、という点ではよい改正だと思います。また申し込む方も、実費以上の支払いを求められたら「ここは怪しい」と思ってください。
人種や国籍などによる差別は厳禁
アメリカでは人種をはじめとして、さまざまな差別が厳しく禁じられています。不動産賃貸も例外ではなく、人種、性別、出身国、家族構成などを理由とする住宅差別を厳しく禁止連邦のフェアハウジング法およびハワイ州法によって禁止されており、ハワイ州公民権委員会が住宅取引における差別の申し立てを扱っています。
〇〇人だから、子供がいるから、高齢者だから、シングルペアレントだから、病気だから、LGBTQだから、といった理由は、すべてNGです。
申込を断った人に対して「なぜあなたが選ばれなかったのか」を伝える必要はありません。しかし、断られた人が「自分は〇〇差別によって落とされた」と感じさせるような言動はくれぐれもご注意ください。基本的に、審査基準として認められるのは「収入と信用調査(クレジットヒストリー、クレジットスコア)の結果」のみです。
例えば、日本人オーナーであれば、綺麗好きな日本人のテナントさんに貸したい、と思うのは自然なことだと思います。しかし広告で「日本人限定で募集」という表現も差別にあたるためNGです。
「知らなかった」では済まされず、差別されたと訴えられるケースも、アメリカではよく聞く話です。法令を遵守した審査や管理を行える不動産管理会社を選ぶべきです。
テナントから修理依頼を受けた場合の対応・手続きのスタートに期限が厳格化
ハワイ州の住宅賃貸ルールで、テナントから室内の設備などの不具合が報告され、修理依頼を受けた場合の対応時期が法律(Landlord Tanant Code Chapter 251)で明記されました。
とくに電気、水道、配管など、衛生的かつ安全に生活するために必要な設備に関する緊急性の高い問題については、3営業日以内にオーナーが返信、手続きを開始することが定められています。
- Landlordが修理を開始する期限
- 緊急修理(居住に必要な設備:電気・水道・配管・主要家電など) 3営業日以内
- 一般的な修理(緊急ではないもの) 12営業日以内(テナントから書面通知を受けた場合)
- 保健所・建築局などから違反通知を受けた場合 5営業日以内
個人で管理されているオーナー様の場合、日本に滞在していてメールに気づかなかったり、お仕事が忙しくて返信が遅れたりするケースがあります。
しかし、「連絡に気づかなかった」「日本にいたので対応できなかった」という事情があっても、テナントへの対応義務がなくなるわけではありません。
グレイスインターナショナルでは、24時間以内に返信することを徹底しています。
すぐに業者を手配できない場合でも、「現在確認しています」「この日までに次の連絡をします」とお伝えするだけで、テナントの安心感は大きく変わります。 こうした日々の小さなコミュニケーションが、深刻なトラブルや信頼関係の悪化を防ぐことにつながります。
長期賃貸管理の専門性が、これまで以上に重要に
法律遵守、テナントとのコミュニケーション力。隙なく不動産を守るには
上記のような法改正を経て、家賃滞納からトラブル時の対応まで管理会社としてやるべきことが厳格化する中、二つのことが言えると思います。
一つは、上記のような法改正についてキャッチアップし、法律を遵守した管理ができる会社であること。法改正をタイムリーに抑え、日々の管理オペレーションに反映させ、賃貸契約書をしっかり作成し、テナントさんには紙面と口頭で説明、サイン、保管しておくことも必須です。「知らなかった」「うっかり」で訴訟を起こされるリスクを理解した、隙のない管理が求められます。
一つが、管理会社として「テナントとの日々のコミュニケーション、テナントの状況把握」の重要性が高まっていること。 テナントさんの方から、自分の収入状況が変われば報告や相談があるべきですが、そうしてくれるとも限らない。その場合、家賃の支払いが少し遅れ始めた、返信が遅くなった、失業したようだ、などの変化の小さなサインを早く察知し、「支払う意思はあるのか」「住み続けたいのか」を確認し、早く手を打つ必要があります。
私は「問題が起きてから対応する」のではなく、「問題を起こさない管理」が何より大切だと考え、そこに注力しています。
最後に:投資家目線で、「日本とハワイ、どちらの不動産投資が利回りがよい?」と聞かれたら
私は、投資家・不動産管理のプロとして、日本とハワイの両方で不動産投資を検討されているお客様から、「利回りだけを見るとどちらが良いですか?」というご質問をよくいただきます。
でも私は、そのご質問をされる段階では、その方は、まだ海外不動産投資への準備が十分ではないと思っています。
日本では、一部の都市部を除けば、建物の価値は年々下がっていくケースがほとんどです。土地についても人口減少の影響を受ける地域が増えていくでしょう。
海外投資をしている日本人の方は、もはや「日本円・日本不動産だけ」というポートフォリオ自体がリスク、というマインドで、日本と海外を同列で単純に比較するという考え方をしていないのです。
ご自身にとっての、自分の資産をどのような形で持ちたいか?取れるリスク、流動性の高さ、将来をどのように見ているか?そういった投資家的な観点からハワイ不動産を購入し、管理して行きたい方、ぜひご相談ください。
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