第2次トランプ政権下でのアメリカビザの最新事情を、アドビス法律事務所の曾我 愛 弁護士にインタビュー

更新日 2026.10.21

第2次トランプ政権の発足以降、アメリカの移民・ビザ政策は大きく動いており、不法移民の摘発が厳しく行われている様子などが報道でも大きく取り上げられている。しかし、この移民に対する厳しい姿勢は不法移民だけでなく、合法移民に対しても向けられているという。
 

今回は、アドビス法律事務所で移民法を中心に活躍する曾我 愛弁護士に、最新のアメリカビザの動向を伺った。特に、日本人の取得の多いビザとして、Eビザ、H-1Bビザ、Fビザを中心に情報をお届けする。

曾我 愛(そが めぐみ) 弁護士
 

第2次トランプ政権下におけるビザ事情

曾我先生:
第2次トランプ政権に入り、今まで以上に移民の受け入れを絞り込み、不法滞在につながりかねないルールを厳格化する姿勢を打ち出しています。ビザ別にお話ししていきたいと思います。

【E-2ビザ】追加資料請求が増え、審査期間も延びる傾向に

Eビザは、アメリカと通商航海条約(Treaty of Commerce and Navigation)を結んでいる国の国民に発給される就労・投資ビザです。日本もその条約締結国の一つです。国同士の条約に基づくビザであり、アメリカの一存だけですぐに変えられるものではないため、他のビザに比べると影響は軽微といえます。

その中でも、取得までが早いことから日本人に人気があり、取得件数が多いのがE-2ビザです。アメリカの事業へ相当額を投資するE-2投資家ビザと、その事業を運営するためのE-2従業員ビザがあります。


変化は少ないとはいえ、やはりE-2ビザ審査も厳しさは増しており、今までであれば通ったレベルの資料を提出しても、追加資料を求められるケースが増えました。その結果、ビザ発行までの期間が延びるケースも増加しています。

特にE-2従業員ビザは、その人の今までの経験やスキルが、投資案件にマッチしているかなどが今まで以上に厳しく見られています。審査資料の作成、面接での受け答えなど今まで以上に慎重な準備が必要と言えるでしょう。

【H-1Bビザ】高給与・高スキル人材優先を徹底

H-1Bは、専門的な知識を必要とする職種で、アメリカ企業が外国人を雇用するための就労ビザです。年間発給枠が85,000件に限定されており、毎年申請者がその数を大きく上回るため、高い倍率での抽選となっています。

2026年のアメリカ移民局(USCIS)が発表した新ルールでは、アメリカ経済への貢献度の高い、高スキル・高所得の人に絞り込んでH-1Bビザを発行する方針が強く打ち出されました。
 

最も大きな変更は、抽選方式の変更です。
長年、完全ランダムに行われていたこの抽選ですが、今年から賃金の高い人ほど当選確率が上がる仕組み「加重選考プロセス(Weighted Selection Process)」が導入されました。具体的には、労働省が規定する4つの賃金レベル(レベル1~レベル4)に応じ、レベル1の人は1回、レベル4の人は4回の抽選チャンスがあるという形です。

また、水増しでの応募を防ぐために、以前から『申請者中心(Beneficiary-Centric)』の選考方式が導入されています。複数の企業が同一人物を登録した場合でも、抽選上は一人の申請者として扱われる仕組みとなっています。

”アメリカ企業・アメリカ経済にとって価値がある高度人材、稼げる人材”に絞ってアメリカに受け入れる、逆にエントリーレベルや低賃金職種に就く移民を減らす、という姿勢の現れと言えるでしょう。

【F-1ビザ】I-20の期間に関係なく、原則入国から最長4年の滞在期間へ切り替わる方針へ

F-1は、アメリカの高校・大学や語学学校などで学ぶ留学生用の学生ビザです。これまでF-1で入国すると、学校がプログラム期間に合わせて発行するI-20(入学許可証/在籍資格証明書)が有効、かつ学生としてのステータスをきちんと維持している限り、特定の日付を滞在期限とせずにアメリカに滞在することができました。

これをアメリカ国土安全保障省(DHS)が「I-20の期限に関係なく、F-1での滞在期間は原則入国から最長4年間(語学プログラムは2年)に変更する」と発表しました。
新規則が施行された場合には、必要に応じて米国内で滞在期間の延長申請を行うこととなり、留学生にとって手続き面での時間や費用の負担が増える可能性があります。

しかし、教育団体などが規則の差し止めを求めて一旦、仮差止命令が出ている状態です。

こちらも長期間F-1で滞在する学生に対するビザ運用の厳格化の動きの一つです。一定期間ごとに移民当局がステータスを再確認できるようにし、オーバーステイや不正利用を防ぐ目的があります。

バースツーリズムも規制強化

アメリカは親の国籍に関係なく、アメリカで生まれた子供には全てアメリカ国籍を与える「出生地主義」を憲法で定めています。そのため、アメリカ国籍取得を目的に、妊娠中の女性がアメリカに入国・出産をするいわゆる「バースツーリズム」が行われてきました。しかし、2026年8月、トランプ大統領がこれを厳しく規制する大統領令にサインしました。

これを憲法違反として差し止めを求める声も上がっていますが、アメリカへの渡航を予定している妊婦さんは、入国時のチェックが厳しくなる可能性がありますので、ご注意ください。

【E-1ビザ】の可能性にいまこそ注目

上記のように、さまざまなビザのハードルが上がる中で、私がいま注目しているのがE-1ビザ(投資貿易ビザ)です。

前述したEビザの一種で、日本と米国の間で継続的に国際貿易(物品・サービスの輸出入)を行う日本国籍の個人や企業に対し、米国での就労を認めるビザです。

主な取得要件は以下の4点です。

  • 日米間の過半数出資:企業の株式の50%以上を日本国籍者や日本法人が所有していること。
  • 相当な貿易量:日米間で十分な金額かつ継続的な貿易実績があること。
  • 51%ルール:その企業の全国際貿易量の半分以上が日米間の取引であること。
  • 管理職・専門職:申請者が経営者、管理職、または不可欠な特殊技能を持つ従業員であること。


E-1ビザは、日本にいながら日米間の貿易を積み上げることで申請が可能です。商品のみならず、サービスの売り上げでも良いため、旅行業、IT企業などさまざまな事業が対象となります。その貿易から得られる収入が、申請者とその家族の生活を支えられる程度であれば、貿易の実質性を判断するうえで有利な要素となります。

E-1ビザの事業としては、安定的・定期的な取引がおこなわれていることが評価される傾向にあります。例えば20,000ドルの取引が月1回あるよりも、2,000ドルの取引が月10回あるほうがよい、といった形です。

E-2ビザは、アメリカへの相当額の投資を先に行い、それからビザ申請し、ビザが取れてやっと事業に参加できる流れですが、E-1ではそれまでに手がけてきた事業をベースに、ビザ申請できることがメリットです。

まとめ

トランプ政権が掲げる「アメリカ第一主義」は、不法移民の排除のみならず、合法移民に対しても、上記のようにさまざまな形で影響が及んでいます。

大統領令の行政権限に基づく新しいルールの連発、そしてそれに差し止めを求める動きがせめぎ合い、常にビザを取り巻く状況は流動的と言えます。

アメリカでのビザ取得をお考えの方は、どのビザが適切か、またそれぞれのビザの注意点など、最新情報をもとに検討や準備を行うことをお勧めします。

ぜひ、アドビス法律事務所までご相談ください。

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