シリーズ!ハワイ不動産、相続トラブル事例と回避策!【ケース4】

更新日 2022.04.06

米国不動産を個人所有、または共同所有する方が亡くなった場合、その不動産の名義変更(相続)を行うには「プロベート」という裁判所の監視下で行われる遺産分割・相続手続きが必要となる。その手続きは、完了するまでに数年かかるという。その為、相続対策においてプロベート回避策はとても重要な要素となっている。 ここでは、エステートプラン、リビングトラスト、資産形成、日米間の相続対策などを専門とし、アメリカで18年の実績をもつ佐野郁子弁護士に「実際にあった相続トラブル事例と回避策」をシリーズとし、複数回にわたり解説してもらう。今回はその第4弾目。
 


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相続対策として母から娘夫婦への名義変更がトラブルとなった事例

家族構成:母、娘夫婦(ハワイ在住) ハワイの不動産は母の単独名義で所有(母は日本在住)

経緯と発生したトラブル

数十年前に日本に住む母親の単独名義でハワイ不動産購入。そのハワイ不動産に娘夫婦が居住しており、母親が高齢になったため、相続対策として不動産の名義を娘夫婦へと名義変更をした。

その結果、日本の税務調査で「母親から不動産を娘夫婦に贈与した」とみなされ贈与税が課税さることに。その後、慌てて娘夫婦の名義から母親の名義に戻してしまった。今度は「娘夫婦から母親に贈与があった」と問われ二重課税になる羽目に。。。
 

 
◎名義変更の豆知識◎

不動産の名義を変更するという行為は、所有者を変更するということになり、自身の所有している不動産を他人に譲渡することになるため、原則として、無償で譲渡すれば贈与、有償で譲渡すると売却と見做される。

贈与は贈与税の対象(日米の違い)
米国居住者同士の贈与であればアメリカのルールが適用され、贈与の申告や納税は贈与者にある。(アメリカの贈与税の基礎控除額は受贈者1人につき年間15,000ドル) たとえ基礎控除額を超えた場合でも、正しく申告を行い遺産税の控除額を前借りするシステムを利用すれば納税義務は生じない。

日本居住者が関わる場合は日本のルールが適用され、日本では贈与の申告や納税は受贈者にある。従って名義変更後の所有者がハワイ居住者であっても、贈与者が日本居住者であれば日本のルールに従う義務がある。よって、上記のケースでは、母から娘夫婦に、娘夫婦から母へ、と2度贈与があったとみなされ贈与税が課税されることになった。

売却は譲渡税の対象
売却という形で名義変更(所有者変更)を行うと、キャピタルゲイン税の対象となる。さらに日本居住者が売買という形で米国不動産の所有者変更または名義変更を行う場合は、FIRPTA・HARPTAの源泉にも注意は必要だ。日本居住者が所有するハワイ不動産を売却すると、特例を除いて売却価格の15%をFIRPTA(連邦)+7.25%をHARPTA(ハワイ州)、合計22%もがwithholdingsが対象となる。

FIRPTAとは「Foreign Investment in Real Property Tax Act」といい、アメリカ国外に住む外国人および外国法人が、アメリカ不動産を売却した際の源泉徴収税。

HARPTAとは「Hawaii Real Property Tax Law」といい、ハワイ州外に住む外国人および外国法人が、ハワイ不動産を売却した際の源泉徴収税。

どのような回避策があるのか

◎佐野弁護士からのワンポイントアドバイス◎  

例え親子間など関係者同士の名義変更であっても、贈与と見做されれば贈与の申告や納税義務が生じます。また、実際にお金の動きがなくても、売却と見做されればキャピタルゲイン税やFIRPTA・HARPTAの納税義務が生じるので注意が必要です。

相続時にプロベートを回避する対策としては、母名義のハワイ不動産を母のリビングトラスト名義に変更しておくことが万全です。またTODDを用いて娘夫婦を相続発生時の受取人として登記しておくことでもプロベートは回避できます。

名義変更は簡易にできますが、後から取返しがつかない事態になり兼ねないので、事前に専門家に相談しましょう。



 

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