ハワイ・パシフィック・ヘルスのストラブベニオフ・メディカルセンターにて、プライマリーケアを担う米国家庭医療学会(ABFM)認定専門医。南カリフォルニアで生まれ、日本で小学校から高校まで育つ。ワシントン州のワラワラ大学を経て、米海軍の奨学金でローマリンダ大学医学部へ進学。アメリカ海軍のオフィサー(軍医)として横須賀基地などで勤務。東日本大震災においては被災者のサーチ&レスキューにも加わった。退役後、ハワイに移住し、ハワイ・パシフィックヘルスに加わる。2024年からはハワイ・パシフィック・ヘルスの取締役会(Board of Directors)のメンバー。
体全体を診る家庭医として、ハワイの医療の入り口を支える
幅広く診られることが、家庭医の魅力
飯塚先生:
私はハワイ・パシフィックヘルスのストラブ・ベニオフ・メディカルセンターで、家庭医としてプライマリーケアを担っています。
医師を目指し始めたのは高校2、3年生の頃ですが、その時から、一つの分野に限らず幅広く診られるプライマリーケアに魅力を感じていました。
研修では、外科、皮膚科、産婦人科など、さまざまな科でトレーニングを積み、海軍時代には出産にも数多く立ち会いました。しかし、私が面白いと感じるのは、人の体を全体として診られること。その幅広さが、家庭医の魅力だと思っています。
プライベートでは、年に1、2回、学生たちを連れてフィリピンに医療ボランティアとして滞在し、僻地診療を続けています。限られたリソースの中での治療となりますが、そんな時に、幅広いケアに携わってきたからこそできる診療、見えるものがあると強く感じます。

AIと二人三脚で、患者さんの話を聞く時間を大切にする
この数年、医療現場でもAIの活用が進み、診療のあり方が大きく変わってきました。プライマリーケアの現場でも、すでに大きな助けになっています。
例えば、これまで自分で入力していた診療記録の作成です。現在は患者さんとの会話をもとにAIが記録を作り、私は内容を確認して、必要な部分を修正しています。これだけでも、かなりの時間を節約できます。さらに、「この質問はしましたか」「この診断は考えましたか」と提案してくれるところまで来ています。主治医は自分ですが、優秀な助手がいるような感覚で、AIと二人三脚で診療しています。
医師としては、データを見て短時間で診断の見当がつくこともあります。しかし、診療は病名を判断するだけではありません。患者さんにとって、自分の言葉で症状や不安を伝え、医師に聞いてもらえたという実感や安心感も、治療の一部だと思っています。記録の作成をAIが助けてくれる分、患者さんとより深く話す時間を生み出せるようになりました。
患者さんとの信頼関係を築き、家族の一員のように思ってもらえるくらいの関係が理想です。「何かあったら飯塚先生に会って相談したい」。そう思っていただけることが、AIが進化する時代に、ますます大切になるのではないでしょうか。

専門医との連携、病院間の連携を強めていく
こうしたテクノロジーも活用しながら、改善したいことの一つが、プライマリーケアから専門医につながるまでの流れです。
プライマリーケア医は不足しており、そもそも予約を取るのが難しく、かかりつけの患者さんでも何カ月も待つケースがあります。この状況を改善するために、AIのサポートを受けながらの診療も進んでいくでしょう。
ただし、入り口が広がれば、専門医の診療を必要とする患者さんの数も増えます。そこで大切なのは、紹介するまでに、プライマリーケアの段階でどこまで準備を整えられるかだと思っています。例えば、専門医の診察前に「こういう場合には、この検査をしておいてほしい」という手順を共有する。そうすれば、専門医は必要な情報がそろった状態で、診療を進められます。
また、医療機関同士の連携だけでなく、保険と医療の連携も重要です。現在、HMSAとハワイ・パシフィックヘルスが連携する「ワンヘルス・ハワイ」という構想が進められています。保険と医療の仕組みがより一体となって動くことで、患者さんが必要な診療を受けるまでのハードルも低くなるのではないかと期待しています。すでに同じ電子カルテシステムを利用している病院も多く、情報を共有できる基盤はあります。必要な手順を共有し、入り口でできることを増やせば、専門医につながる流れも、もっと良くできると思います。
医療にはビジネスとしての側面もあります。しかし、医療現場にいる者として、誰もが早く、そして平等に医療を受けられる仕組みに改善できればと思っています。
「薬を出すのが好きじゃない」ドクターが考える、予防医療の未来
私の患者さんはご存じだと思いますが、私はあまり薬を出すのが好きではありません。どちらかというと、生活習慣について話すことが多いんです。何を食べるか、きちんと運動しているか。少し口うるさいくらいに伝えています。生活習慣に働きかけることで、専門医の治療が必要になる時期を、できるだけ先に延ばしたい。予防に関わることも、プライマリーケアの大切な役割だと思っています。
将来の夢として、予防医学の観点から、ヘルスコーチのように健康づくりを支える部門があったらいいなと考えています。栄養の専門家や運動を指導する人もいて、患者さんが健康について学べる場所です。
例えば、糖尿病や高血圧について、一対一で同じ説明を繰り返すだけではなく、同じような課題を持つメンバーが一緒に学ぶ。その後は「みんなで運動しよう」と、隣のジムに行く。そこで仲間ができて、「血圧はどうだった?」と声をかけ合う。運動だけでなく、人とのつながりも健康を支えてくれるものになります。そういう意味では、ハワイの「オハナ」の精神は素晴らしいですね。家族や友人・知人がコミュニティとしてつながり、助け合うマインドが息づいています。
私自身、アメリカ人と日本人のハーフとして、アメリカ本土にいればアジア人、日本にいればアメリカ人と見られ、いつもどこか「よそ者感」を感じながら育ちました。ハワイに来てようやく「ここが自分のホーム」だと呼べる場所に巡り会えたと感じました。
ハワイで数少ない、日本語でも診療のできるプライマリーケア医として、患者さんの話を聞き、生活習慣にも目を向けながら、この地域の人々の健康を長く支えていきたいと思っています。

住所: 1001 Queen Street, Suite 102, Honolulu, HI 96814
電話: (808) 462-5200


