ハワイの不動産に関わる日本の贈与税と相続税 <ジョイントテナンシーで不動産を購入した場合>

更新日 2020.05.07

ハワイ不動産に関わる日本の贈与税と相続税について、辻・本郷 税理士法人の伊藤健司 税理士に、聞いてみました。今回はジョイントテナンシーでハワイ不動産を購入した場合のお話です。


編集部:まずジョイントテナンシーについて教えてください。

伊藤さん:

​​まず、ジョイントテナンシーとは2人以上の個人が同一の割合で、1つの不動産を所有する財産権のことで、同時に同一内容の利益と占有権を有します。一方が死亡した場合、アメリカの裁判所(「プロベート」と呼ばれる遺産分割手続き)を通さずに権利が譲渡されるということで、ジョイントテナンシーで不動産を購入する日本人夫婦は多いのですが、実は落とし穴もあるので、買う前に検討すべきでしょう。


 

編集部:実際の例を挙げて詳しく教えてください。

伊藤さん:

実際の例①
例えば1億円のハワイの不動産を購入するとき、ジョイントテナンシーにすれば、夫婦の持ち分は同率の50%50%で所有できます。ここでのポイントは1億円の出所。夫が1億円出して買うなら、50%の所有権を持つ妻への贈与と見なされ、先ずは購入時に贈与税を払わなければいけません。ただし、妻が自分の資産から5千万を出すのであれば、贈与税は生じません。次に「死亡時の場合」。夫が先に死亡した場合は、ジョイントテナンシーであれば、誰に相続されるか検討する必要もなく、生き残っている妻へ、プロベートと呼ばれるアメリカの裁判所による遺産分割の手続きもなく自動的に権利が移動します。ただし、日本では相続と見なされ、5千万円相当の不動産を相続したものとして相続税が発生します。つまり、贈与税と相続税の両方がかかります。

実際の例②
夫が1億円の不動産を自分で購入し、ジョイントテナンシーにせず、自分一人の所有権を有し、遺言で奥さんに譲渡するとした場合。この場合は、買った時点では贈与していないので贈与税は発生しません。ですが夫が先に死亡した場合、夫が所有していた不動産の所有権を妻に与えるという遺言を残していれば、相続後は1億円相当の不動産を相続したものとして、日本では相続税がかかるとともに、アメリカでのプロベートも必要とされます。この場合は、相続税とプロベートの費用がかかります。


編集部:ジョイントテナンシーのメリットとデメリットは何ですか?

伊藤さん:

ジョイントテナンシーのメリットは、通常2〜3年かかるアメリカでのプロベートを避けられるということです。多額の費用と時間がかかるだけでなく、個人情報や家族構成、遺産目録などを公開する必要もあるのがプロベート。これがないということはかなりのメリットです。一方のデメリットは、購入時にお金の出所がどちらか一方の場合、贈与税がかかることです。



 

編集部:もっと良い購入(所有)方法などはありますか?
 

伊藤さん:

私どもがおすすめする方法は、単独(1人)で不動産を購入して、遺言で受取人を指定。それと同時にジョイントテナンシーではなく、TODD(Transfer on Death Deed)と呼ばれる登記をしておくのです。これにより、名義人が亡くなった時でも事前に決められた内容で権利が移転できます。(ただし不動産に限る)そうすれば、プロベートも避けることができ、受取人に遺産は移動できます。はじめの購入者の死亡後、相続税は変わらず発生しますが、買う時の贈与税は回避されます。詳細はTODDを得意とする弁護士にご相談ください。


これからハワイ不動産の購入を検討されている方も、すでに所有されている方もいざという時に備えて、まずは購入時の方法(所有形態)について税理士さんに相談してみてはいかがでしょうか。
 


<今回お応え頂いた専門家>
 


伊藤健司 税理士(辻・本郷 税理士法人)
辻・本郷税理士法人 法人ソリューショングループ統括部長。2005年税理士登録。主に資産税や事業承継対策、法人顧問の税務に取り組んでいる。顧客向けセミナーや金融機関でのセミナーも開催。

<お問合せ先>
2155 Kalakaua Ave., #410
☎808-922-5192
k.ito@ht-tax.or.jp
https://www.ht-tax.or.jp

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