デジタル証明書アプリとは、新型コロナウイルス感染症の検査結果などを、医療機関が発行した新型コロナウイルス感染症の検査結果や、渡航先の入国要件・渡航資格などを、スマートフォンなど各種デバイスで確認できるというもの。
デジタル証明書アプリを利用すれば、非接触、非対面でスムーズな搭乗手続きが可能になり、また到着国での入国審査や検疫通過などもスムーズに行えるようになる。
JALの取り組み
JALは、3つのデジタル証明書アプリ「コモンパス」・「VeriFLY」・「IATAトラベルパス」を使った実証実験などの取り組みを開始しており、すでにハワイ便に関しては、「コモンパス」を使った実証実験が終了している。
3つのアプリのうち、開発中の「コモンパス」と「IATAトラベルパス」は、安全な情報管理と世界共通の規格となることを目指しており、将来、世界中の空港で使用される可能性がある。一方の「VeriFLY」は、アメリカの一部の路線で既に使用されており、早期導入が可能なアプリである。
コモンパス(ハワイ便で実証実験済み)
スイスの非営利組織であるコモンズ・プロジェクト(The Commons Project)が世界経済フォーラムの連携で推進しているデジタル証明書アプリ。医療機関から発行される検査結果が受入国の入国基準を満たしているかをコモンパスが検証し、検査結果をデジタル証明する仕組み。
コモンパスを利用した実証実験はすでに終了しており、対象便となったのは、4月2日のJL074便(羽田発21:00ホノルル着09:30)と4月5日のJL711便(成田発17:55シンガポール着翌00:20)。
東邦大学羽田空港第3ターミナルクリニック(ハワイ州の指定医療機関)からアプリへのPCR検査結果の連携、および、空港チェックインカウンターでの確認などが実施された。
また、ハワイ便に関してはハワイ到着後の検疫審査を出発時に済ませるハワイ州の定める旅行者向けの事前申請プログラム(プリクリアランス・事前検疫審査)と組み合わせて実施された。
結果としては、出入国時の手続きを通常よりスムーズに終えられたことが実証され、今後ハワイでは、ハワイ州の定める旅行者向けの事前申請プログラムとコモンパスが部分的に連携される予定だそうだ。
VeriFLYを使っての実証実験
「VeriFLY」はすでにアメリカの一部路線で活用されているデジタル証明書アプリ。生体認証技術による本人認証サービスを行っているアメリカのDaon社が開発した。
搭乗者は、検査結果などの登録や渡航先の入国要件に合わせた準備書類などの確認を事前に参照・入力・管理する。登録した情報に基づく渡航資格をアプリ画面に表示させ、チェックインカウンターにて提示することで、搭乗手続きをスムーズに進められる。
JALが運航する日本=北米の一部路線にて、「VeriFLY」を利用した搭乗手続きを4月下旬より開始している。
IATAトラベルパスを使っての実証実験
IATA(国際航空運送協会)が開発中のデジタル証明書アプリ。JAL、ANAをはじめ、大韓航空、シンガポール航空など世界23社の航空会社が実用化に向けた取り組みに参加している。医療機関から検査結果などを受領する仕組みと、結果を踏まえて入国要件を満たしているかの検証ができるようになる。
JALでは5月下旬から一部路線で試験導入を予定。パスポートを利用した本人認証、医療機関からアプリへのPCR検査結果が連携でき、アプリ画面での渡航先入国要件の閲覧、空港チェックインカウンターでの渡航資格の確認などができるようになる予定だ。
ANAの取り組み
5月下旬より「IATAトラベルパス」を用いた実証実験を開始
一方のANAでは5月下旬より「IATAトラベルパス」を用いた実証実験を開始している。対象となっている路線にハワイ便が含まれているので、これから6月頭にかけてホノルルに来られる方はぜひ実験に参加してみてはどうだろうか。
実証実験の詳細:https://www.ana.co.jp/ja/jp/topics/IATA-travel-pass/
対象路線は下記の通り:
実験に参加するには下記のような条件がある。
- 18歳以上であること
- NFC(Near-field communication)を利用してパスポートに埋め込まれたICチップを読み取ることができるスマートフォンを持っていること
- ICチップ搭載のパスポートを持っていること
- ANAが指定した医療機関で新型コロナウイルス検査を受検可能であること。
「IATAトラベルパス」実証実験の手順
■ステップ1:実証実験登録フォームを提出 https://questant.jp/q/ANA-IATA-Travel-Pass-trial
登録フォームの質問事項には、氏名、メールアドレス、希望言語、往復の搭乗便名、往復の出発日、予約番号などが含まれる。
■ステップ2:「IATAトラベルパス」アプリをダウンロードしてデジタルIDを作成する。
アプリはApp Store(iOS)またはGoogle Play(Android) から「IATAトラベルパス」アプリをダウンロードできる。
■ステップ3:ANA指定の医療機関で検査予約する
【東京の医療機関】
【ホノルルの医療機関】
【ニューヨークの医療機関】
■ステップ4:検査を受検し、検査結果を受け取る
■ステップ5:搭乗手続き時にアプリと検査結果の書類(またはPDF)の両方を提示する
■ステップ6:搭乗手続き後のアンケート調査を提出する
*各ステップには細かい注意事項があるので、ANAの実証実験の詳細ページで確認してください。
実証実験参加で受けられる特典
ANAでは実証実験に参加した搭乗者に対して特典を用意している。
- 1,000 マイルをANAマイレージクラブのマイル口座に付与(搭乗手続き後のアンケートに協力した場合。期間中に複数回搭乗する場合でも最大1,000マイル)
- 期間中実証実験に参加され、「IATAトラベルパス」で検査結果を受領されるお客様に限り、以下の医療機関で新型コロナウイルス検査の割引が受けられます。
①東邦大学羽田空港第3ターミナルクリニック:検査(陰性証明書含む)費用より5,500円割引
②クリニックフォア(田町・大手町・飯田橋):検査(陰性証明書含む)費用より5,500円割引
まだ、「コモンパス」・「VeriFLY」・「IATAトラベルパス」のいづれが日本の空港で採用されるのかは不明だが、今後、日本や世界でワクチン接種が進めば、このようなデジタル証明書アプリを利用したスムーズな搭乗がデフォルトになるのではないだろうか。今回の実証実験は、ワクチンパスポートへの実現化に向けて一歩前進したと言える。