日米移住の際、税制面で気を付けるべきことは?日本からアメリカ移住、そしてアメリカから日本への本帰国、パターン別解説 (山田&パートナーズ社)

更新日 2024.08.30

海外に住む日本人は約130万人、そのうちアメリカに居住する日本人は約40万人。世界の中で最も日本人が多く居住しており、移住先としての人気は変わらず高い。その一方でアメリカに長く暮らした移住者の中には、親の介護やアメリカの高額な医療費の問題から日本への帰国を希望する人も増えている。

今回は、日本からアメリカへの移住、またアメリカから日本へ本帰国する場合の税務的な注意点について、山田&パートナーズの遠藤元基 先生に伺った。山田&パートナーズ社は米国はホノルル・ロサンゼルスの2拠点、そして日本には20拠点を構え、日米をまたぐ税務コンサルティングを得意とする税理士法人となっている。

山田&パートナーズロサンゼルス事務所の遠藤元基 先生
遠藤先生:

日本からアメリカに移住する方、またアメリカから日本へ移住・帰国される方、いずれのケースもさまざまな移住の背景があり、資産やご家族の状況などを加味してプランを立てる必要があります。

例えば、日本もアメリカも出国勢という制度を設けており、一定以上の資産を有している方は注意が必要です。また、日米両方に資産があったり、家族が日米に分かれて住むケースでは、所得税だけでなく相続や贈与などにおいて複雑になることも多いです。それらを理解せず移住や帰国をしてしまうと、対策できる選択肢が少なくなってしまうばかりか、誤解して実行に移してしまい高額な納税が発生してしまうことがあります。

山田&パートナーズは日本とアメリカ両方に拠点がある強みを活かし、日米両国の税制を踏まえたワンストップアドバイスが出来る数少ない税理士法人となっています。資産状況や家族状況によって、税務上の最適解は変わります。ぜひお早目にご相談下さい。



個人から法人まで多くのクライアントを抱えており、さまざまなケースを見てこられた遠藤先生から、アメリカ移住や日本への本帰国を考える方、必見のアドバイスとなっている。

日本からアメリカの移住のケース

日本よりアメリカのほうが税金が安くなる傾向に

遠藤先生:
日米どちらの国も累進課税ではありますが、同じ収入であれば相対的に日本よりもアメリカのほうが納税額は下がります。

その理由は、日本にはない夫婦合算での税務申告(Married Joint filing)という仕組みにより税控除枠が広がることや、アメリカのタックスブラケット(最高税率)では税率の低いところに組み込まれることなどです。

アメリカでビジネスがしたい、子供を育てたいなどさまざまな理由でアメリカ移住を考える方がおられると思いますが、税制においてはアメリカ移住はポジティブな要因、日本から移住するメリットの一つとなります。

ただし米国移住後も例えば日本不動産賃貸収入などの日本の所得がある場合は、日本所得税が課せられますので、軽減効果はありませんのでご留意ください。 

日本からアメリカへ移住する場合の出国税

気を付けていただきたいのは、2015年7月から導入された日本出国税です。正式には「国外転出時課税制度」といいます。1億円以上の有価証券等の対象資産を所有している日本居住者が国外に転出する際に、対象資産の含み益に対して15.315%(復興特別所得税を含む)の所得税が課税される制度です。これは日本居住者が出国するタイミングで対象資産の譲渡等があったものとみなして、将来、実際に売却益を出した時点で支払われるべき所得税の取り逃しを防ぐための制度です。含み益が不明や高額な場合、税額次第では移住を見直す場合、10年以内に日本に戻る場合などは特に事前の検証を推奨します。

またこの国外転出時課税は、出国する人だけなく、その対象資産を非居住者に贈与や相続した場合も対象です。そのため、現在の所有者が最終的に日本居住の場合であっても、海外居住相続人等がいる場合は注意が必要です。

アメリカ居住になると全世界課税、
資産開示や国外法人の報告義務もあり

アメリカ市民や永住権保持者は、自己の居住地にかかわらず アメリカ国外の資産を含めた全世界での所得を申告し、税金を支払う義務があります。

基本的に日本での収入は日本で納税、アメリカでの収入はアメリカで納税が原則です。日米双方で税額が発生する場合でも、所得の内容により日米どちらで外国税額控除を用いるかは異なるものの、適宜適切に申告していれば外国税額控除により二重課税は生じない仕組みになっています。

その際に、知らない方が多いのがFBAR(Foreign Bank and Financial Accounts Report)つまり、アメリカ居住者が米国外の金融機関に持つ口座の情報開示義務です。一年のうち一度でも米国外の金融資産が1万ドルを超えたら報告しなければなりません。

また日本に法人を所有している場合は、From5471の情報開示義務がある点もご注意下さい。

アメリカから日本へ本帰国するケース

そもそも「本帰国」とは?グリーンカードの期限切れ=アメリカ永住権の喪失ではないことに注意!

そもそも、永住権を取得して長くアメリカに住んでいた方の日本への「本帰国」とはどういうことを指すのでしょうか?

ほとんどの方が「日本に引っ越しをして、グリーンカードの期限が切れても更新しなければ、自動的に永住権がなくなる」と考えていると思いますが、これは間違いです。ご自身で「米国永住権の放棄」の手続きを行わない限り、その方は米国永住権ステイタス保持者のままであり、タックスリターンやFBARの申請義務は続いています。

「物理的なグリーンカードの期限が切れた状態」は「米国永住権の喪失」とイコールではない、という重要なポイントをぜひ理解しておいてください。例えば日本のパスポートの期限が切れたとしても、その方の日本国籍がなくなるわけではないですよね。それと同じイメージです。
 

親御さんの介護などをきっかけに、日本滞在が長くなり段階的に帰国することになった方も多いですが、ご本人の転居の日付は米国税務上では重要ではありません。税務処理上は「米国永住権放棄が承認された」という日付が「米国出国税の基準日」となるのです。

これを知らずに日本に引っ越したから「米国所得税や開示義務はもう無関係」と勘違いしていると、あとから大きなペナルティを受ける可能性があります。次の章で説明します。

アメリカから日本へ本帰国する場合の出国税

例えば、米国永住権保持者で日本への本帰国をお考えの方で8年以上アメリカに在住している場合には、出国税に留意が必要です。

米国出国税の対象となる人は3つの条件のいずれかが当てはまる人です。

①過去5年の平均所得が19万ドルを越えている
②全世界合計で200万ドル以上の資産を所有している
③過去5年間の税務申告や情報開示が適正ではない

これらの方は、米国出国税として全財産の含み益の約20%を支払うことになります。

他にも源泉所得税や遺産税で特別な取り扱いになる場合があります。
 

本帰国を決めたら、帰国前・帰国後の準備リストを作りましょう

基本的には「その国で築いた資産は、その国の税法のテクニックを用いることで最適な対策が見つかる」ことが多いと言えます。ただし、中長期的に見れば 効果的な対策が異なる場合もあります。例えばリタイアを機に日本への本帰国を検討されている場合がその典型ですが、ご子息が米国籍を有していたり、米国に残られたりするケースが多く、日米両面からの検討が必要になります。

アメリカに長年住んでいた方の中には、長期保有してきた不動産や株の価格が上がり、出国税が心配だという方も多いでしょう。

山田&パートナーズでは、移住する方の資産内容やご家族の状況などを踏まえて「本帰国に向けたタスク整理」を行います。
 

繰り返しになりますが、複数の国に資産があったり、ご家族の居住地が別々といった複雑なケースでは、事前にタスクを整理し税務上のベストシナリオを理解しておくことが大切です。
ぜひ、日本からアメリカへ、そしてアメリカから日本への移住を考えている方は、お早目にご相談下さい。



 

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