アメリカでは通常毎年4月15日を締め切りとして 前年12月31日までの所得を申告します。日本では一定の所得水準以上の場合確定申告を義務付けられていますが、米国でも同様です。但し、水準以下でも源泉があり還付請求をしたい場合は申告できます。米国では会社勤務でも個人で毎年連邦及び州の所得税を申告し、必要な場合は納税します。会社勤務の場合は毎月支給される給与から連邦及び州の所得税やソーシャルセキュリティ税などが源泉されます。この場合、勤務先から前年の総所得と支払った税金額を明記した「W-2」というフォームが送付されますので、これを基に税金申告を行います。この場合、源泉徴収された税金が申告後に戻ってくる可能性もあります。
申告時のステータス
前年の12月31日時点のステータスが申告時のステータスとなります。基本は独身(単独申告)、既婚(合算申告)、既婚(別申告)、世帯主のいず れかとなります。[収入―経費・控除=課税所得] 基本はご自身が前年に得た収入から控除できる経費を引いて課税所得を計算します。 課税所得に応じて決められた税金を確定させ、勤務先を通じて支払った源泉額あるいはこれまでに納めた予定納税額の方が多い場合には還付を受けられますし、少ない場合には不足分を納付することになります。
居住者は全世界の収入を申告
収入は米国居住者か非居住者によって異なりますが、居住者は米国内で得た収入の他に、日本を含めた米国外での収入を合算して申告する必要があります。この場合には日米租税条約により、日本で納めた税金を控除できる場合もあります。非居住者の場合には米国内で得た収入のみを申告します。
定額控除か項目別控除か
収入に対して差し引くことができる項目は、税務当局から認められている経費となりますが、定額控除、または項目別控除の選択ができます。但し、2017年12月に議会で承認されたトランプ大統領が提唱したトランプ減税が実行される2018年度(延長申請を行わない場合2019年4月15日までに申告)は減税実行前の2017年度以前とは定額控除の金額が大きく異なるので注意が必要です。2018年度分の申告に際しては、定額控除は内容及び実績を問わず、独身(単独申告)であれば$ 12,200、既 婚(合算申告) で申告するのであれば$ 24,400を差し引ことができます。他方、項目別控除合計がこれらの金額より大きい場合には項目別控除で申告することとができます。項目別控除に含められる項目は医療費、州、地方税支払い分、支払利息、寄付金、災害等で被った損害費用等がありますが、詳しくは税理士、もしくは会計士に確認されることをお勧めします。税法改正により、従来免除が可能であった項目内容に変更があります。
基礎控除、扶養控除は廃止
2017年度分までは日本の基礎控除、扶養控除に相当する人的控除がありましたが、2018年度以降分からは定額控除金額の増額と共に廃止されたので注意が必要です。
領収書は保存すべき
領収書を保存すべきかと聞かれることがありますが、前述の項目別控除を申請する場合には支払った医療費、税金(州、地方税)、利息等の領収書は保存する必要があります。税務調査が入る可能性を考慮して7年間保存すべきと考えた方がいいでしょう。申告書に誤りがない場合、過去3年に遡って税務調査が行われますが、誤りがある場合には6年に遡って調査されます。意図的な(悪質な)誤りがある場合には無制限で調査が行われます。従って最低4年、できれば7年間保存しておくことが適切と考えられます。
日本に$10,000以上の金融資産がある場合
日本に銀行口座あるいは証券口座等を所有し、$10,000以上の金融資産がある場合にはFBAR(外国金融口座残高報告書)を併せて申告する必要があります。
非居住者の申告
不動産購入の際、税務当局に何か申告する必要があるか聞かれることがありますが、日本在住で不動産を購入しただけでは申告義務は発生しません。但し、購入した不動産を賃貸し、収入を得ている場合には日本在住でも米国で税務申告をする必要が生じます。この場合には非居住者用の1040NRで申告を行います。また、この際には米国でのSocial Security の番号を取得していない方は、個人の納税者番号(通称ITIN)を取得する必要があります。当該番号の取得に関しては税理士、会計士に相談することをお勧めします。なお、賃貸に出さず、個人使用していた不動産を売却する場合にはSocial Security番号もしくは個人納税者番号が必要となりますので、注意が必要です。
初めての申告は相談を
自分で申告できるかという質問も時々受けますが、初めての場合には税理士、会計士に相談することをお勧めします。
デュアルステータス
1月1日に米国の居住者として米国に入国したという人はあまりいないと思います。多くの場合、年の途中に米国に入国するということになると思います。米国での税金申告は前年の1月1日から12月31日までが基本ですので、初めて税金を申告する年(前年分)には非居住者と居住者の両方のステータスが存在することになります。例えば、 6月1日に居住者として米国に入国したとすると税務申告上は6月1日以降が居住者として扱われます。そしてそれ以前の1月1日から5月31日までは非居住者となります。このように同じ年の間に、非居住者と居住者の両方のステータスをもつことをデュアルステータスと呼びます。これは駐在員の方の場合を例にとれば、赴任する年と帰国する年には居住者と非居住者の二つのステータスを持つことになります。デュアルステータスの方の税金の申告には制限事項がありますので、特に注意が必要となります。詳しくは会計士、税理士にご相談されることをお勧めします。
情報提供・監修
EOS会計事務所
EOS ACCOUNTANTS LLP
500 Ala Moana Blvd., Suite 5-350, Honolulu, HI 96813
(808)599-7949 www.eosllp.com