カパフルの一角に、口コミで知る人ぞ知る小さな店がある。 ハワイ屈指のヘルシーカフェと評される「カイマナ・ファーム・カフェ」。 元エリート金融マンの伊藤ブライアンさんが、なぜ人生の後半戦にハワイでのビジネスを選んだのか。その思いを語ってもらった。
Kaimana Farm Café (カイマナ・ファーム・カフェ) オーナー伊藤ブライアンさん

金融マンの私が最後のキャリアチェンジで見つけた
「稼ぐ」よりも「人とつながる」という天職
地元の高校時代は、今は作家で有名なブレイディみかこをバンドに誘い、ずっとライブハウスに出ていました。授業はサボって勉強しなかったですよね(笑)。でも宅浪して早稲田に入り、計量経済学のゼミ幹としてコンピューター言語を習得しつつプログラムを書いていました。
卒業後は都銀に就職し、職場を1年で辞めてアメリカへ飛び込みました。あの頃から「型にはまる」ことが体に合わなかった。実は英語が不得意で高校時代は100点満点で40点も取れなかった。だからこそ行ったんですよ。一番苦手なことに挑戦する、それが私の流儀なので。
米国に渡り銀行に拾われて、主計業務とデータ分析用ITツールの開発をしていました。その後の監査兼コンサル法人で、日本で初めての不良債権処理の現場マネージャーとして日本とアメリカを行き来。最終的に自分でIT&経営コンサル会社を立ち上げ、順調に年商が$4M台となり、ポルシェを乗り回す日々でした。 一度帰国してモルガン・スタンレー、福岡銀行、KPMGジャパン、EYストラテジーなど渡り歩いて、外資企業でも定年という日本的人事制度にズレを感じていました。「もっと自由に生きたい」そう思い始めた頃、昔から好きだったハワイで売りに出ていたカフェを見つけたんです。
昔、日清、ドンキやイオンの担当だったので、「ヘルシーフードが伸びてくる」という確信はありました。低価格や人気で戦わず、カテゴリーで一番になるドミナント戦略。野菜中心、無添加、ヘルシーフードという分野でナンバーワンを目指すと決めた。キャノーラオイルを無くし、グルテンフリー醤油、昆布出汁を使用する、など顧客への食の対応を重ね、気づけば31種類のアレルゲンに対応するようになりました。 ある日、乳製品アレルギーの女の子がフレンチトーストを食べたそうにしていました。「じゃあ作ってあげようか」と乳製品なしで出したら、女の子が笑顔で喜んでくれた。こういう瞬間にこの仕事の価値を感じます。
カイルア方面へデリバリーも開始。
「体が動くうちに難易度が高い小売り、飲食店経営に挑戦してみたい」これが本音です。給料をたくさんもらっても命を削って働いていた会社員時間が長かった。だからこそ、今はリラックスした時間が流れるハワイで、自分が本当に挑戦したいことと向き合っているんです。 これから何かを始めたい人は、失敗を恐れず、サイコロを振ってほしい。チャレンジしないまま終わってしまうほうが、人生もったいないですからね。
お客さんと1日中話しているのが、今の一番の楽しみです。世界中を仕事で飛び回ってきたから、どんな職業のかたとも話せる引き出しがある。教授、お医者さん、モデルさん、主婦層、ご家族連れ、―40〜50代を中心に85%が女性のお客様で、ニューヨーク、サンフランシスコ、ヨーロッパからの旅行者や移住者が多く、ヘルシーな食事に拘るかたが多い。懐疑的なかたほど、気に入ってもらい常連になるのですよ(笑)。 まだうちを知らないかたに一度訪れてもらいたい、それが私の使命です。これまで動かしてきたどんな大きな数字も、お客さんの笑顔には勝てないことがここに来て、はじめてわかった気がしています。


