2023年9月、東京で開催した”第8回ハワイに住む主催 ハワイ不動産・ビジネス・移住・教育セミナー”にもご登壇いただいた、ハワイのGO法律事務所の小林剛弁護士。 今日は剛先生に、ハワイのM&Aや事業買収のリアルな話を、成功事例・失敗事例も含めて、ハワイに住むネット編集部が突っ込んで聞いてみました。
- ハワイにビジネス進出したい!
- ハワイで会社を買収したい!
- ハワイに移住するためのビザが欲しい!
そんな人にとって役立つ情報になること間違いなしの、剛先生へのインタビューです。
個人でのM&Aから100ミリオン越えの法人案件まで。ハワイでのM&A事情
ハワイに住むネット編集部(以下、編集部)
M&Aと聞くと、大企業同士の合併など、ニュースの中の世界のような気がしますが・・・実際には、ハワイでは買収案件の規模ってどんな感じなんでしょうか?
小林剛先生(以下、剛先生)
大きい案件だとホテルやゴルフ場の買収など100ミリオンドル越えの案件を扱うこともあります。最近では個人でのM&Aから日本からアメリカに進出したいという法人まで、様々なケースでのM&Aが増えていますね。
編集部:
どんな背景や理由によるM&Aが多いのですか?
剛先生:
私がお手伝いしている中でいうと、50%は法人案件で、日本で既になんらかの事業をやっていて成功された方が、その事業をハワイでも展開したいというパターンや、ハワイにある収益事業を狙ってM&Aを検討するというケースも増えています。あとの50%は、ご自身やご家族がハワイに移住をしたい、またお子さんをハワイで教育したいなど、ビザ取得を目的として、個人の方が自己資金でハワイの企業や事業を買収するパターンが多いですね。
編集部:
一言でM&Aと言っても、個人から法人まで幅広く行われているんですね。買収案件としてはどんな業種が多いんでしょうか?
剛先生:
不動産業、飲食業、卸業、ツアー会社など観光業、リテール業が多いですね。
こういったM&A案件は、「これはという筋のいい案件ほど、表に出ていない」ものなのだそう。剛先生のところにも、「いい相手がいれば、事業を売却したいんだけど・・・」といった信頼ベースでのご相談がそっと入ってくるとのこと。
色々なパターンがあるハワイのM&A 「企業買収」と「事業買収」
編集部:
M&Aと言うと会社全体を買うのですか?
剛先生:
M&Aには大きく2つの種類があって、株も含めて「会社ごと買収」するパターンと、その会社がやっている「ある事業のみを買収」するパターンです。
「会社ごと買収」する場合には、例えば様々な契約書等名義を書き換える必要がなく、そのまま株主が変わっただけ、という形になるので、車など会社資産がそのまま使い続けられるメリットがある代わりに、負債もついてくるリスクがあります。例えば学校法人のように会社そのものにライセンスがついているケースなど、事業の特性上、会社ごと買収する必要がある案件もありますね。
「事業のみを買収」する場合には、ハワイに新会社を設立しそこに買収した事業のアセットを移します。必要な部分だけを買うので、要らない負債がついてこないメリットがあります。私が手掛けている多くのケースがこの「事業の買収」になりますね。
編集部:
新会社を設立してゼロから始めることと、M&Aをして会社を取得すること、なにが一番の違いになるのでしょうか?
剛先生:
一言で言えば、既存のビジネスをM&Aすることで、「時間もコストもセーブできる」ことです。
例えば、ビザの取りやすさという点で考えてみましょう。新会社を設立してビザを取ろうとすれば、移民局の審査は、今後の事業計画の実現可能性や成長性など、不確定な要素への突っ込みが厳しくなります。 しかし、既存事業の買収であれば、すでに従業員も雇用していて、売り上げも立っており、事業に必要な免許なども取得済み。ビザはこちらの方がずっと通りやすくなります。
当然ですが、法人であっても個人であっても、ビザ取得や免許取得などの必要プロセスはなるべく早いに越した事はありません。これらのプロセスに時間がかかることで手元資金が食いつぶされて、ハワイ進出やハワイ移住の計画そのものが狂ってしまうこともあり得るのです。
編集部:
ちなみにM&Aの場合の会社や事業の値付けと言うのはどうやって決めるのでしょうか?
剛先生:
基本的には、買収金額に対して何年で回収できるのかをベースに考えます。利益が出ている事業を買収する場合、事業が生んでいる利益×3年〜5年分というのがベーシックな値付けですが、それも税引き前・利益税引き後の利益、どちらを基準にするのかなど、案件ごとに変わってきます。また利益が出ていない赤字の事業買収する場合には、純資産ベースで計算することが多いです。
なにが成否を分けるのか?M&Aによるハワイ事業進出
編集部:
ハワイ進出したものの、失敗して撤退するといったケースも見聞きします。何が成否を分けるのでしょうか?
剛先生:
これは特に個人の自己資金でM&Aをされる方に当てはまるのですが、「ビザを取ることそのものが目的になってないか?」については、慎重に考えていただきたいと思います。M&Aで取得するビザは、E2ビザ(投資ビザ)が主なビザになり、取得後も、基本的には5年単位で更新をしてい くことが可能です。更新の際に、事業が赤字続きだったり、アメリカ人の雇用が増えていなかったりすれば、ビザの更新は難しくなります。 事業としてちゃんと存続し、納税や雇用の創出でアメリカに貢献していてこそ、ハワイに居続けることができると言う事実を、どこまで認識しているのか?で成功確率は変わると思います。
そのためには買収前の細かいデューディリジェンスが大事です。加えて、のちのちハワイで成功されている方を思い返すと、やはり何度もハワイに足を運んで、ハワイの市場やリスクを、現地の人も含めいろいろな人にリサーチされています。ご自身の知り合い・友人など、特定のグループの人とだけ話していても、実態は見えません。 弁護士はビジネスコンサルタントではないので、事業計画を立てたり予測をしたりは業務範囲には入りませんが、少なくとも過去に多くの成功と失敗のパターンを見ていますので、その観点から、アドバイスを差し上げています。
また、法人案件、特に収益事業のM&Aに関しては、さらに精度の高いデュージリジェンスが必須となります。主に財政面でよりシビアに行う企業が増えており、こうした事前の綿密なチェックを重視するかどうかがM&Aの成否を分けると言っても過言ではありません。
一方で、コロナ禍以降は、買収に関わるステークホルダーが厳しく買収する企業を見極めたいというケースが増えてきました。例えば、事業買収では多くの場合、店舗やオフィスなどのリースもその中に含まれます。事業を買収するのがアメリカで実績のない日本企業の場合は、店舗やオフィスのオーナーがリース引き継ぎの契約に難色を示し、交渉が難航することもあります。というのも、コロナ禍において、テナント収入がなくなり、小売業者同様に大打撃を受けた大家は少なくありませんでした。こうした背景から大家の側もきちんと家賃収入が見込めるかどうか、テナント選びに慎重になっているのです。
その場合は事業計画や資産証明を提出したり、敷金を積み増しするなど、ケースバイケースで対応していくことになります。オーナーにも様々な事情があるので、双方にとって有益かつ妥当な条件提示を行うには、そうしたハワイ特有の商慣習を把握しておくことが重要です。
また、日本とハワイの違いという点では、買収後に在籍していた社員から労務関係のトラブルで訴えられたというケースもありました。日本流のマネジメントが、ハワイでは通用しないケースがあります。これらは、ハワイと日本の労務管理の違いを理解していなかったために起こった事例です。こういったことがないように、ハワイの法律遵守のポイントはどこにあるのかを前もって理解し、トラブルを回避する点でも、我々がお役に立てると思います。
M&Aでハワイ移住を実現! GO法律事務所がバックアップ
編集部: M&Aを成功させるには、綿密なデューディリジェンスをはじめ、ハワイのビジネスルールに即した判断や交渉が大事、というのがよくわかりました。M&Aが完了しビザが取れたらその後はどんな形で、サポートしていただけるのでしょうか?
剛先生:
GO法律事務所は、ハワイとニューヨーク、ロサンゼルスの3拠点を持ち、現在私を含めて、10名の日本語英語バイリンガルの弁護士に加え、7名のスタッフやパラリーガルも全員日英バイリンガルです。私はもともと会社法や移民法に強いですが、他の弁護士も民事訴訟や労務、トラストなどそれぞれ専門領域を持っています。クライアントのニーズに合わせ、最適な弁護士が対応します。
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アメリカにある法律事務所に日本人弁護士が所属していることはあっても、日本人弁護士のみ、スタッフまで含め日本語で、日本のクライアントのニーズに包括的に答えられる事務所は、アメリカにはないそうです。せっかく依頼をするならば、ストレスなく頼める弁護士事務所を選びたいもの。
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