アロハシャツ研究家・コレクター。1953年、ホノルル生まれ。プナホウ高校卒業後、父の会社でアロハシャツの製造販売に従事。74年、自身のブランド『HRH』を立ち上げる。87年アロハシャツメーカー『Kahala』を買収。アートディレクターとしても活躍する。『Local Motion』『Patagonia』『Quiksilver』などのシャツ制作にも携わり、現在は『Western Aloha』のアートディレクターを務める。名著『アロハシャツ』は有名で、ビームスとコラボするなど日本でも人気となっている。
「ハレ・ホープ」を貫くのはポリネシア文化へのリスペクト
木々が茂った山道を抜けると、パッと土地が開ける。その一角に今回の「家」、アロハシャツ研究家として名高いデール・ホープさんのご自宅がある。ワイキキから車でたった15分の距離とは思えない静けさと緑に囲まれた場所だ。
少し早めに到着すると、2階のテラスに案内された。心地よい風が通る屋根付きテラスの奥にリビングが広がる構造。テラスからの見晴らしは下の写真をご覧いただきたい。
インテリアには、ハワイアンキルトのモチーフとして知られるレッドジンジャーやモンステラの葉がそこかしこに飾られていた。「その葉はいま庭からとってきたばかりなんだよ」とデールさんが登場。緑と花をうまく取り入れ、ナチュラルなウッドを多用した部屋には、ヴィンテージのアロハシャツやサーフボード、サインボードなどが無造作に飾られている。コレクターが見れば垂涎ものだろう。
自然と共存する生活様式がこの家のテーマ
10代の頃からこの場所に家を建てるのが夢だったという。「当時よくハイキングしていた場所から、この土地が見下ろせたんだ。タウンからほど近いのに、自然に囲まれて、日系人が作った日本庭園なんかもあってね。海が見渡せるから波の状態もチェックできる。ホノルルで最高の場所だと思ったよ」
土地所有者名簿を調べて、いつ土地が売りに出るか今か今かと待ったそうだ。念願の土地を手に入れて自宅を建築しようという時、理想に描いたのはハワイ文化の源流であるポリネシアンの生活だった。
「中でも理想はタヒチの建築と生活スタイル。部屋を区切る壁もできるだけ作らなかった。主な木材はアメリカ本土から運び、要所要所にはハワイのコアの木を。竹を使ったソファやチェアはインドネシアに特注したものもあるんだ。でもこのコアのキッチンカウンターにしろ、テーブルにしろ、友人が作ってくれたものも多いんだよ。ソファカバーやキッチンのタイルまで友人が作ってくれた」
長年アロハシャツに携わってきたデールさんだけに、デザイナーやクリエイターの友人が多い。この家は、そんなデールさんの交友関係の結晶とも言える。
ポリネシアンたちの自然と共存する生活様式もこの家のテーマだ。「生活用水は雨水をタンクに貯めて使う。ソーラー発電も取り入れ、エアコンはこの風で十分。アロハシャツにも自然をモチーフにしたデザインが多いけれど、僕も自然と一緒の暮らしを理想としている。庭に茂る植物たちが僕のデザインに素晴らしいインスピレーションを与えてくれるんだ」
今もデールさんには、数々の人気ブランドからオファーが絶えない。取材の際には、自身のコレクションについて一着一着熱心に語ってくれ、帰り際には「お土産にアボカドを取ってくるよ」と庭に消えてしまった。その後ろ姿は、この土地に憧れていたという10代の頃のデール少年そのものだった。
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