コロナ禍でもハワイのビジネスは活況を呈している。大型買収をはじめとしたM&A、そしてシェアオフィスの興隆など転換期を迎えている。今回は、ワイキキの中心「ワイキキギャラリアタワー」を買収して話題のブラックサンド・キャピタル CEO、B.J.コバヤシ氏にインタビューする。
ブラックサンド・キャピタル CEO B.J.コバヤシ氏 インタビュー
ワイキキ中心で以前は免税店「TギャラリアbyDFS」を抱えていたワイキキギャラリアタワーが「地元の投資会社に買収された」とニュースになった。その主こそがハワイ出身者で運営される地元の投資会社「ブラックサンド・キャピタル」。あまりインタビューに登場しない同社CEOのB.J.コバヤシ氏にその狙いを伺った。
ブラックサンド・キャピタル CEO、コバヤシ・グループ共同設立者
ホノルル出身。プナホウ・スクール卒業、ジョージタウン大学で国際ビジネスを専攻。大学卒業後、同大学のロースクールにて法務博士号を取得。25年のキャリアで通算約50億ドルの不動産投資・開発を手がけてきた。2011年には故ダニエル・イノウエ上院議員によってアジア太平洋経済協力(APEC)委員会メンバーに任命され、予算財政小委員会の共同議長を務めた。
ゴールは「メイク・ハワイ・ベター」
ハワイをより良くすることが ブラックサンドの使命だと思っています
ワイキキ中心部にある「Tギャラリア b y DFS」は、ラグジュアリーブランドを多く扱う免税店として、海外からの旅行者、特に日本からの旅行者にとても人気がありました。
コロナウイルスによるパンデミックで閉店を余儀なくされましたが、そのテナントオーナーであるワイキキギャラリアタワーを売却したいというオファーがあったのは今年の初めでした。
カラカウア通りはワイキキの海沿いをつらぬくメインストリート。ルイヴィトンやティファニー、エルメス、カルティエといったラグジュアリーブランドが立ち並びます。海と商業施設が両立した、まさにアーバンリゾートと呼べるワイキキは、エンターテインメントからショッピングまでを全て徒歩圏内で味わえる世界的にも貴重な場所。ニューヨークの五番街、ビバリーヒルズのロデオドライブ、サンフランシスコのユニオンスクエアと並ぶ価値があり、その価値はこれからもっと高くなると考えています。何より年間を通じて安定したこの気候は、どこにも勝る価値がありますよね。
弊社は、以前からワイキキエリアに特に力を入れてきました。カラカウア通り沿いのフロントスペース(路面物件)で、フィー・シンプル(所有権付き物件)であれば、躊躇なく「買い」に動きます。
今回のワイキキギャラリアタワーを買収する以前に、すでに弊社は2つの物件をカラカウア通り沿いに所有していました。ワイキキ東側の以前ニューオータニホテルだった物件を買収し、「カイマナビーチホテル」として新装。サーフカルチャーを取り入れたモダンなホテルに生まれ変わりました。ホテル内にオープンしたレストラン「ハウ・ツリー(HauTree)」もおかげさまで観光客にも地元の皆様にも好評をいただき、いつも賑わっています。ホノルル動物園近くにある「アストン・ワイキキ・ビーチ・ホテル」もワイキキビーチが目の前という好立地で、人気のレストランやカフェが立ち並ぶモンサラット通りやカパフル通りにも近い、とても利便性の高いホテルです。ホテルはその土地の文化を支える存在ですので、とくに投資には力を入れています。
弊社では投資の45%をワイキキに充てていますが、今後数年でさらに増やしていく予定です。それだけワイキキエリアには期待しているのです。弊社の投資で何がもっとも重要かというと、ワイキキという大切な場所の大きな物件が「地元の所有に帰る」ということなのです。そこに大きな意義があります。
ワイキキギャラリアタワーも、以前はハワイ州外のオーナーが所有していました。弊社のように地元に根付く会社が所有し開発していくことで、建設業にとってもチャンスとなり、地元にとっては大きな雇用創出の機会となるはずです。
今後、DFS跡地に関しては、土地の価値を最大限に活かせるよう、ハイブランドの店舗を多く招へいするつもりです。また、これまであまり有効活用されてこなかった東側のロイヤルハワイアン通り側にも、リテールショップやカフェ、レストランなどを展開する予定です。ハワイの地元ブランドも大いに取り入れていきます。ぜひ楽しみにしていてください。
父から受け継いだ仕事の信条
つねに謙虚であれ、損失を出すな
弊社はハワイの不動産に特化したプライベート・エクイティ会社です。ブラックサンドという社名には「黒字=豊かな利潤」「砂=ハワイの土地」という意味が込められています。ハワイの土地をもっと豊かに活用したいという思いもあります。
グループ会社には私の父が創設した不動産開発会社コバヤシグループがあり、これまで父とタッグを組んで「パークレーン・アラモアナ」や「ワン・アラモアナ」といった高級コンドミニアムを共同開発してきました。これらは日本の投資家の皆様にも馴染みがあるでしょう。
父の代から受け継いでいる我が社のビジネスのモットーは、“Don’t lose money(損失を出すな)”。父はいつも私に「つねに謙虚であれ」と教えてきました。もちろんそれも大切なことですが、弊社のようにハワイの投資家の皆様から資金を集めている会社の場合には、投資家に損失を与えないことがとても大切だと考えています。短期的な利益を追求せず、常に長期スパンで利益を考えていくことも大切。実際、弊社の不動産投資の多くは長期所有です。
ハワイに住みハワイを愛する人々の資金をハワイに循環させることでハワイをより良く不動産投資というのは、文化をつくる仕事。とてもクリエイティブであり、テクニカルな仕事です。ロースクールを修了しましたが、弁護士よりそれは魅力的な仕事だと思っています。
今後注力していくのは3つの不動産分野
弊社が今後注力していく事業分野は3つあります。
一つは、地元住民に向けたアフォーダブル・ハウジング(所得に応じてマーケットプライス以下で購入できる住宅)。オアフ島の戸建ての中間価格が100万ドル(約1億1千万円)を超える中、もっと地元住民が手の届く物件を充実させたい。実は投資の面でもアフォーダブルハウジングは、高級コンドミニアムなどへの投資よりも安定的な収益を生むものなのです。
2つ目は、ホテルへの投資です。他の観光地と比べるとハワイには古いホテルが多すぎる。今後競争に勝つためには、新しいホテルの開発が必須です。
そして3つ目が、小売店への投資です。免税店を抱えていたワイキキギャラリアタワーへの投資もその一環。これも時代に合わせて常に刷新していかなくてはならない分野です。
大風呂敷を広げているように聞こえるかもしれませんが、父からはもう一つ、言われた言葉があります。「言ったことは必ず実行しろ」。有言実行です。有言実行することで周囲の人間や投資家は信用して付いてきてくれます。これは投資会社を運営する上でもとても大事なこと。父の「謙虚であれ」という言葉と共に、歳を重ねてようやく身に染みてきました。日本人のビジネス感覚に近いかもしれませんね。私は半分日本人ですし、日本人の優しさと日本食が大好きですから(笑)。
弊社のゴールは至ってシンプル。それは「MakeHawaii Better(メイク・ハワイ・ベター)」。ハワイをより良くすることです。ハワイの発展には日本との強い絆、日本人の皆様の応援が欠かせないと思っています。ブラックサンド・キャピタルが今後もハワイの発展のために「有言実行」できるか。どうぞ注目していてください。
住所:2270 Kalakaua Ave., Suite
電話:808-738-8400
E-mail : info@blacksandcapital.com
Web : www.blacksandcapital.com
※この記事は「ハワイに住む」マガジンVol.47(2021/11/15発行)の記事を元に作成しています。photo by Akira Kumagai text by Eisuke Iwase
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