一棟(イチムネ)多代が解説「グローバル・ラグジュアリーマーケット レポート」2022

更新日 2022.06.01

【プロフィール】
一棟 多代さん(ハワイ5-O プロパティーズ)

広島県福山市生まれ、奈良県生駒市育ち。1987年に渡米、南カリフォルニアでハイスクール、コミュニティカレッジを卒業後、ロスアンゼルスで日本航空に入社。その後フライトアテンダントとして米国系航空会社に転職。ハワイ在住24年目。邸宅の物件管理を手伝ったことをきっかけに、不動産ライセンスを取得。2018年にはブローカーライセンスを取得。現在、ハワイ5−0 プロパティーズの不動産取引主任Broker-in-Charge)。

米国の住宅ローン金利は金融史上最低を記録したため、コロナ禍にもかかわらず、この2年間の住宅販売は好調でした。この2年間、特に2021年は実需が高まり、在庫数(Inventory:販売物件総数) 不足から購入競争へ発展し、住宅価格の高騰を招きました。

マイホームを求めるミレニアル世代の若年層、コロナ禍の影響により郊外の広いスペースを求める買換え層、そしてアパートなどの集合住宅への投資が中心だった機関投資家たちは、千載一遇のチャンスとばかり、郊外の戸建てを競って買い求めました。

その中でも特に注目を集めているのが、ラグジュアリー物件です。物件価格の上昇に伴い「ラグジュアリー」と呼ばれる物件の価格帯も上昇しています。このレポートでは、全米120 都市の戸建てとコンドミニアムのトップ10%を調査しています。



2021年の戸建ての中間価格は155万ドルになり、2020年の128万ドルから21.09%上昇しました。コンドミニアムも2021年は982,000ドルになり、前年の853,500ドルから15.06%上昇しました。

2021年は世界的に不動産市場が好調でした。特に純資産が500万ドル以上の世界の富裕層 (World’s affluent population)の人口は、2020年から19.8%も増加し、純資産は20.4%増加しました。ちなみに、2020年の純資産は前年比2.1%増、富裕層人口は同2.2%増でした。

米国最大手の不動産フランチャイズであるコールドウェルバンカー・リアルエステイツ (Coldwell Banker Real Estates)とラグジュアリーホームマーケティング協会(Institute for Luxury Home Marketing)が共同発行した『2022年グローバル・ラグジュアリーマーケット・インサイトレポート(The Report 2022 Global Luxury Market Insights)』では、「純資産が500万ドル以上の富裕層は、世界で360万人以上もいる」と発表しました。米国だけでも、同期間で資産と人口の両方が24.8%も増加しています。このレポートは、全米120都市の市場のトップ10%を分析しています。

コールドウェルバンカー・ラグジュアリーのVPであるマイケル・アルトニュー(Michael Altnew)氏は、「株式市場における株価の上昇、住宅価格の高騰によるエクイティーの増加、 さらに貯蓄の増加やビットコインなどの暗号通貨のブームにより、世界中の富が増加している」と述べ、「コロナ禍による劇的な生活の変化が、富の蓄積と相まって、家族、仕事、健康 などについて再考する機会になった。それが、新しい都市で、さらに良い、大きな邸宅の購入 に繋がっている。この動きにより、「ラグジュアリー」という概念は、従来の一部の地域に限 定されたものではなく、米国内のさまざまなマーケットに拡大し、セカンドホーム市場を大きく成長させ、注目すべきマーケットになった」と指摘しています。

オミクロン株の感染者数の大幅な減少=新型コロナウイルスの感染者数が大幅に減少しており、海外からの渡航規制が大幅に緩和されるに伴い、今後は海外の買い手がラグジュアリー マーケットに参入してくると予測しています。

レポートによると、これまでの大都市中心の概念ではなく、地方の都市、いわゆるセカンダリーマーケットのラグジュアリーのニーズが増えているようです。例えば、山岳地帯にあるコロラド州のデンバー、アイダホ州のボイジー、カリフォルニア州の州都サクラメント、ノースカロライナ州のロレイ、ユタ州のソルトレークなどは、州外からのラグジュアリーバイヤーが増えています。また、コロナ禍では人々は大都市から離れる傾向にありましたが、現在では、米国を代表するゲートウェイ都市の人気は2020年の23%から2021年は32%まで、着実に回復しました。

レポートでは、「リモートワークの普及による自宅での仕事、世界的な気候変動への対応、ラグジュアリー物件が所在する地域の利便性などにより、これまでの均一的な思考から、それぞれのライフスタイルや生活ニーズや要求に合わせた思考に変化した。一昔前の「ラグジュアリー」という概念は、もはやステイタスシンボルではなくなっている」と指摘しています。

純資産が500万ドル以上の富裕層のセカンドホーム需要は急激に増加しており、これらの富裕層の70%は、すでに2つあるいは3つのラグジュアリー物件を所有しているとのことです。

ラグジュアリーホームの価格は、2021年に急激に上昇しました。もちろん、在庫数が少ないため、需要と供給のバランスが崩れていることもあります。しかしそれ以上に大きいのは、コロナ禍での需要と米国経済の立ち直りにより、株価や債権などが上昇しエクイティーが蓄積されたことです。従来から理解されている「不動産は長期の投資に最適」という理念のもとで、 資産を増やしてきたラグジュアリーバイヤー層が爆発的に増え、それがそのままセカンドホームの購入に回ったのです。

米国では、純資産が500万ドル以上の資産家の数は、2021年は前年比24.8%増、2019年比では33%増になりました。資産額も、2021年は前年比24.8%増、2019年比では32.9%増でした。この増加した富裕層が、コロナ禍によるライフスタイルの変化などで、今まで以上に広く良い環境のセカンドホームを求めています。

パンデミックの影響により海外の投資家が激減する中、市場を支えてきたのが資産家層です。パンデミック以前は、海外の投資家の割合は取引数の6~8%を占めていました。この減少分を補ったのは、株式市場や暗号通貨(cryptocurrency:ビットコインなど)で利益を得た資産家です。彼らは物件を現金購入することで、価格競争において他の買い手を圧倒しました。

100万ドル~500万ドルの価格の物件を所有する資産家の数は、2021年に2019年比で 180.1%も増加しました。純資産が500万ドル以上の資産家の71%が、この価格の不動産を所有していることになります。

このレポートでは、米国だけでなく世界の不動産資産がどれだけ増えたか、資産家が世界のどこに点在するかもまとめています。

世界の不動産資産は、この1年で1兆7,385億6,000万ドルも増加、2020年比では20.4%増になり、合計で10兆2,416億7,000万ドルになりました。

世界の富裕層(HNW:High-Net-Worth)はどこに点在するかを見ると、米国を除く世界の都市トップ10にアジアの都市が7つも入っています。

1位は日本の首都・東京で、2016年から1位を保っています。資産家の数は96,152人、総額は約1兆6,947億ドルです。2位は香港で67,269人、1兆2,689億ドル。3位はフランスの首都・ パリで47,059人、8,595億ドル。4位は日本の商業の中心地といわれる大阪で、37,043人、 6,741億ドル。5位はイギリスの首都・ロンドンで、36,956人、6,726億ドル。6位には名古屋が23,218人、4,202億ドルで入り、日本の3都市がランクインしています。7位はシンガポールで23,025人、5,688億ドル。8位は韓国のソウルで18,046人、3,692億ドル。9位は台湾の台北で17,419人、3,549億ドル。10位はカナダのトロントで17,211人、4,565億ドルです。

「21世紀はアジアの世紀」といわれてきたように、アジアに富が集中しています。今後、世界的にパンデミックが落ち着いていけば、今まで以上に米国への投資が期待できます。

いかがでしたでしょうか? 定期的にこのようなレポートを解説してまいります。ハワイの不動産について、お気軽にご相談、ご連絡いただければと思います。

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