世界で唯一、日本発祥のクレジットカードブランドがJCB。 そのホノルル支店長を務める木下さんは、銀行での勤務経験を持ち、自らを「社内では変わり種」と称する。ハワイで積極的にビジネス展開する木下さんに、仕事をする上での信条、ハワイで仕事をする上での苦労談を伺った。
JCB International Credit Card Co., Ltd.(USA)
ホノルル支店長 木下 慎一郎さん
木下 慎一郎(きのした・しんいちろう)さん
1973年徳島県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後の97年、阿波銀行入行。2004年、取引先であった飲食ベンチャーに転職。2006年、株式会社ジェーシービー入社。ファイナンス企画部、業務推進部、ブランド事業統括部などを経て、2020年ハワイ赴任。現職に就任した。
意外にもハワイで活きた銀行時代の経験。 「お客様のために」をどこまでも追求します。
ハワイに赴任したのは、新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)直前でした。私がハワイに到着するのと時を同じくするように、日本=ハワイの往復便が一斉に運休になりました。世間が旅行できなくなる一方で、弊社のビジネスは逆にそこから長い苦難の旅に出発することになります(笑)。でも、もう発想を転換することにしました。これまでお客様がたくさんハワイにいらしていた頃は、日々の業務が忙しくて達成できないことも多かった。でも、今は時間だけは多くある。この時間を有効活用しようじゃないかと。ちょうど、私の右腕となるべく、もう一人の駐在員、大谷祐史もハワイに赴任してきた。今こそ、チャンスに変えよう。支店の従業員みんなで連日、話し合う日々でした。
「やらなくちゃいけないけど、手が回らないままでいた」。議論を重ねる中で、そんな案件がどんどん見つかっていきました。その中から、まず達成すべき3項目を選びました。
①ハナウマ湾、ホノルル動物園などホノルル市の施設でJCBカードを使えるようにする。
②マーケティング戦略を見直し、ターゲットの明確化と打ち手の細分化をする。
③古くなっていたワイキキの「JCBプラザラウンジ・ホノルル」を全面改装する。
どれもこれまで手付かずだった課題でした。
ビジネスをする上での私の信条があります。それは「やらないで後悔したくない」ということ。やるべきことは何が何でもチャレンジします。でも、その「やるべきこと」はお客様あってのことです。「お客様に貢献してナンボ」という発想は、銀行勤務時代に培われたもの。クレジットカード会社も一種の金融業ですが、金融業は社会に貢献するもの、お客様に寄り添って一緒に夢を実現するものだと思っています。常にお客様の側に立って「JCBにできることは何か」を考える。その姿勢が、このハワイでも役立ちました。
とは言っても、長年の課題であった①の解決には時間がかかりました。市の上層部へのアプローチと現場レベルでの交渉、両面でじわじわと進め、1年以上ネバりにネバって、ようやく市の施設でJCBカード決済ができるようになりました。これは弊社のカード利用客にとって大きなメリットです。達成できた時は本当に嬉しかったですね。
②はターゲット設定とアプローチ法を全面的に見直し、ターゲットを明確化したことで、打ち手もクリアになりました。会員向け優待特典を再開し、他社との戦略的コラボも多く展開。ホテルとタイアップして特設サイトを運営し、富裕層顧客へのサービスを拡充したり、シェアバイク事業の「BIKI」とコラボして会員向けのお得な料金プランを設定したり。こうした施策の中で忘れないようにしたのがハワイへの貢献。BIKIの収益の一部はハワイの歴史的建造物の保存活動などに寄付していますし、マウイ島火災の際にはいち早く本社から寄付金を送りました。もともと弊社は年に1度のボランティア活動を社員に課すなど地域貢献の精神が土壌としてあります。お客様への貢献と地域への貢献を両立させることが、我々のビジネスの柱なのです。
ここ数年の懸案だった③も、現在全面改装工事を終えて、無事にオープン。振り返れば、目標は全て達成できました。ただ今後も油断することなく、多くの施策に取り組んでいきます。ハワイの観光一つとっても、その変化は年々早くなっています。ホノルル高架鉄道も開通しました。そんな中、こちらが進化しないと、とても追いつきません。でもどんなに進化しても、「お客様のために」というサービスの根幹は変わらない。私自身も、ブレません。「やっておけば良かった」という後悔は、これからもしないつもりです。
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