「信用がなによりも大切です」 日本の不動産業界を切り拓いた女性パイオニア北澤艶子さんに一棟多代さんがインタビュー

更新日 2024.09.18

ハワイでラグジュアリー不動産の売買取引に数多く携わり、ハワイ5−0プロパティーズの不動産取引主任を務めている一棟多代さん。 今回は多代さんが尊敬する不動産業界の大先輩であり、日本の不動産業界の女性のパイオニア的存在である北澤艶子さんに、日米の不動産事情の違いなどについて伺いました。

(左)北澤艶子さん
(右)一棟多代さん

日本とハワイ、それぞれの地で不動産のプロフェッショナルとして活躍するお二人ですが、旧知の間柄ということもあり、終始なごやかなムードで進んだインタビューでした。

【プロフィール】 一棟 多代さん(ハワイ5-O プロパティーズ所属・上写真 右側)ハワイ5−0 プロパティーズの不動産取引主任(Broker-in-Charge)。 広島県福山市生まれ、奈良県生駒市育ち。1987年に渡米、南カリフォルニアでハイスクール、コミュニティカレッジを卒業後、ロスアンゼルスで日本航空に入社。その後フライトアテンダントとして米国系航空会社に転職。ハワイ在住25年目。邸宅の物件管理を手伝ったことをきっかけに、2009年に不動産ライセンスを取得。2018年にはブローカーライセンスを取得。


【プロフィール】北澤艶子さん(写真左)
北澤商事株式会社 代表取締役会長。1958年、免許制度開始以前に不動産管理業で創業。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会長に女性として初就任。国土交通大臣表彰受賞。2016年 一般社団法人不動産女性塾を立ち上げるなど、後進、また女性の活躍支援にも熱心に取り組まれている。

 

 

多代さん: 
本日は、艶子さんにこうしてハワイでお目にかかれてとても嬉しいです。

2024年5月には、艶子さんが塾長をなさっている「不動産女性塾」の沖縄視察旅行でご一緒させていただいて有難うございました。また先月は、盛大な卒寿のお祝いが明治記念館で行われたことを住宅新報の記事で拝読いたしました。

一年ぶりのハワイはいかがでしょうか? 



艶子さん:
コロナが明けてからは、以前のように夏と冬に一ヶ月ほどゆっくり滞在していますが、今年は昨年よりもさらに観光客が増えて、街にも活気が戻ってきましたね。

主人に”ハワイのどんなところが好きなの?”とたずねると、”ハワイは風がいい”と。わたしも暑くもなく、寒くもなく、いつもさわやかな風が吹くこのハワイが大好きですね。主人や子どもたち、孫たちと家族みんなでたびたび訪れて、一緒に過ごす大切な場所となっています。

実は、わたしたち家族はハワイには深い縁がありまして、主人の母はハワイ生まれ・ハワイ育ち、そして主人の両親が出会って結婚したのもこのハワイなのです。その影響で主人も若い頃からハワイアンバンドをやっていたりと、ハワイが大好きな一家となりました。


多代さん:
艶子さんもご主人のウクレレ演奏でハワイアンソングを歌われたり、以前はハワイのある会で、艶子さんがシャンソンの名曲「愛の讃歌」を歌ってくださったこともありましたね。


艶子さん:
あの時は、多代さん涙を流して感激してくれましたよね(笑)。

多代さん:
とても素晴らしくて感極まってしまいました。あの時の感動は今でも心に残っています。ファミリーのみなさんで仲良く、ハワイご滞在中も演奏会など身近に音楽を楽しまれているのが素敵です。

さて、艶子さんは以前から生涯現役を公言されておられますよね。

 

艶子さん:
そうですね、わたしはよく「不動産業ほどいい職業はない」と言うんですね。衣食住、その中でも「住」はその人の人生を作る一番大切なものです。その「住まい」に関わり、人のお役に立てる天職を60年以上もやって来られたのは本当に幸せだと思いますね。 



多代さん: 
艶子さんは、日本の不動産業界の変遷を長年にわたってご覧になってこられたんですね。


艶子さん:
私が創業した1956年はまだ終戦から10年ちょっと、住宅事情も厳しい時代でした。持っていた農地を不動産に転用しようとする近所の皆さんの相談に乗っているうちに”じゃあ家を建てるから、艶子さん管理をやってよ!”と言われて起業したんです。まだ”不動産管理業”という言葉も免許もない時代でした。そのころから大事にしてきたのは”信用第一”ということです。

オーナーさんの利益が少しでも増えるように、そしてお手を煩わせないように「賃貸募集中」と書いた看板や「管理会社はこちら」と電話番号を掲載したのです。いまでは普通のことですが、弊社が初めてだったと思います。

こういったさまざまな工夫を通じて”艶子さんに任せれば安心だよ”というお客様の評判の輪が広がっていったのです。いまは北澤商事として、東京都足立区を中心に約6000戸の管理をお任せいただいております。


多代さん:
まさに、不動産管理のパイオニアとして仕事をなさってこられた歴史を感じます。
艶子さんは、アメリカやハワイの不動産業界についてはどのように見ておられますか?

艶子さん:
やはり日本に比べて、アメリカの不動産業は進んでいると思いますね。まだ男性が強い日本の不動産業界に比べ、アメリカでは多代さんのように活躍している女性の不動産エージェントが数多くおられます。また「ホームステージング」(売却用に家を魅力的に演出すること)が日本に入ってきたのも遅かったですね。日本もアメリカに学ぶところが多いと思います。


ハワイの魅力はやはり世界一の観光地であることですね。わたしが最初にハワイのコンドミニアムを買ったのはもう37年も前のことです。その後も買い替えをしながらずっと所有していますが、不動産価値は上昇し続けています。資産としても、家族と過ごすバケーションの場所としても、ほんとうに安心して所有できる優良な不動産マーケットだと思っています。

 

多代さん: 
艶子さんが今一番楽しいと思うこと、また力を入れていることは何でしょうか?

艶子さん:
楽しいのはやっぱり「不動産」ですね(笑)。ハワイにいても、お客様から携帯に連絡が入ってくるとやっぱりに気になってしまいます。

そしてそのほかに最近、力を入れていることが2つあります。
一つは2016年に立ち上げた「不動産女性塾」。不動産業というのは、女性ならではの感性や細やかさが活かせる女性に向いている職業です。ぜひ、もっと多くの女性にこの業界に参入していただきたいと思いますね。

もう一つは、自宅の一部を地元コミュニティ向けに開放してつくった「ブックカフェ・ハレキタザワ」です。こちらは図書館や給茶機、集会スペースなどを併設したコミュニティセンターとして、イベントや教室なども開催されており、地元のみなさんに好評です。

いずれの活動も「楽しみながら、人や社会のお役に立ちたい」という思いから続けています。
 


多代さん:

創業期にご近所の方たちが艶子さんに不動産のことを相談されていたころから変わらぬお人柄だからこそ、みなさんが集まってこられるのですね。

ところで、艶子さんのお孫さんが社長に就任されるとお伺いしました。お孫さんとは日ごろからどのようなコミュニケーションを取っておられますか?

艶子さん:
創業70年を迎える2026年を機に、社長を交代することを発表いたしました。孫に対してだけではなく、社員は全員、自分の子供のような思いで、育ててきました。その中で常に語ってきたことが「信用は無限の財産」という言葉です。これは時代が変わっても、揺るがない価値だと思っています。

多代さん:

最後に、艶子さんから次世代の人たちに伝えたいメッセージをお願いします。

艶子さん:
これまでお話したように、住まい、不動産に関わる仕事というのは、女性ならではの感性や細やかさを活かせる素晴らしい仕事です。ぜひ、次世代の女性の方に不動産業に参入していただいて、活躍していただきたいですね。それが不動産業界全体のイメージアップにも繋がります。

多代さん:
艶子さんのようなパイオニアの先輩の後に続くわたしたちも頑張ってまいります!

一棟多代さんからの後日談

艶子さんとのご縁は、不動産女性塾の立ち上げと同時期に発足した(一社)日米女性ビジネスネットワーク協会がきっかけでした。数々のイベントや講演会で交流させていただくようになりましたが、ハワイでもフランクにお会いできて嬉しいかぎりです 。艶子さんのように、懐が深くて、仕事に対する情熱を生涯持ち続けることは、なかなかできることではありません。いつまでも、チャーミングでパワフルな艶子さんで いらしてください。この度は、ご家族でハワイご滞在中にもかかわらず、インタビューを快諾してくださり感謝いたします。貴重なひとときを有難うございました。

 

 

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