全米で大きなニュースとなった全米の不動産業者協会(NAR)に対して行われた集団訴訟。その和解合意の結果で導入された 不動産購入や売却時の契約の新ルールは日本人の不動産オーナーやこれから売買を行う人にどのような影響があるのだろうか? ホノルル不動産協会CEOのスザンヌ・ヤングさんに「ハワイに住む」編集部がインタビューした。
不動産仲介手数料「新ルール」の注意点とは?
日本人マーケットに影響はありますか?
ホノルル不動産業者協会(HBR)最高経営責任者(CEO)。1989年にHBRでキャリアをスタート、2015年CEOに就任。HBRの完全子会社HiCentral MLS, Ltd.も管理。プナホウスクールとハワイ大学マノア校の卒業生であり、ホノルルの地域社会に深く根ざした活動家でもある。アフォーダブルハウジングやTOD(Transit Oriented Development)の開発などを支援している。
スザンヌさん:
2024年8月、不動産仲介手数料に関する新しいルールが導入されました。これは、売り手側からの仲介手数料に関する訴訟を解決するため、全米の不動産業者協会(NAR)が和解合意したことによるものです。
主な変更点は2つあります。1つ目は、不動産売買における仲介手数料が自由化されたこと。不動産物件情報サイト(MLS)でも仲介手数料を掲載しません。2つ目は、買い手は物件を見学する前に、自分のエージェントとの書面契約が必須となったことです。この新しいルールが、売り手や買い手にどのような影響を与えるか、解説します。
売り手と買い手が注意すべきポイントは?
まず、売り手に関する注意点です。これまでは、売り手が両エージェントの手数料を負担するのが一般的でした。新しいルールでは売り手が同意すれば、エージェントはMLS以外の媒体で仲介手数料について告知することができ、売り手は引き続き買い手の手数料を負担することも可能です。売り手は買い手側の手数料負担の意思など、事前に自身のエージェントと相談することをお勧めします。
次に、買い手が注意すべき点です。エージェントと契約することを選んだ買い手は物件を内見したりバーチャルツアーで見学する場合は、事前にエージェントと条件を交渉して書面契約をしなければなりません。契約書にサインをする際には、エージェントが提供するサービスとその手数料をしっかり理解することが重要です。エージェントと契約をしていない場合に限り、書面契約なしでオープンハウスに参加することが可能です。
書面契約では、以下の4つの内容を明記する必要あり
書面契約では以下の4つの内容を明記する必要があります。
- 1:不動産エージェントが受け取る手数料の金額や算出方法の明確な開示
- 2:客観的な報酬(例:0ドル、固定料金、パーセンテージ、時間単位の料金)
- 3:エージェントが契約で合意した額を超える手数料を他から受け取ることを禁止する条項
- 4:仲介手数料やコミッションは法律で定められておらず、交渉可能であることの明確な記載
これらの新ルールが日本人マーケットへ与える影響は?
これらの新ルールは、不動産売買の透明性を高め、売り手と買い手の双方に利益をもたらすことを目的としています。日本人マーケットにとっては複雑な手続きで負担が増えるかもしれませんが、売り手にとっては物件の売却をよりスムーズに進めることができますし、買い手にとってはエージェントから得られるサービスとその手数料が明確になり、後から予期せぬ請求が来る心配がありません。私たちは協会の厳格な倫理規範(Realtor®CodeofEthics)のもと、お客様とオープンかつ誠実に対話することを重視しています。また、オアフ島にはHiCentralMLSという独自の物件情報サイトがあり、正確で信頼性の高い情報を提供しています。オアフ島をはじめハワイ州で6千500件以上の不動産売買に貢献し、HiCentralMLSはエージェントや鑑定士など専門家の間で活用されています。 新しいルールが導入されても、不動産売買の基本的な性質は変わりません。人生で最も重要かつ複雑な金融取引において、今後も私たち専門家のサポートが価値あるものと確信しています。