対談:風戸裕樹さん(プロパティアクセス株式会社 代表取締役CEO)× 一棟 多代さん(ハワイ5-Oプロパティーズ社)
長引く円安と将来への不安感から、海外不動産へ資産を分散させる動きが加速しています。中でも、常に高い人気を誇るのが「ハワイ不動産」です。その一方で経済成長著しい東南アジア市場も投資家の熱い視線を集めています。
今回は、東南アジア不動産の第一人者であるプロパティアクセス株式会社CEOの風戸裕樹氏と、ハワイ不動産のプロフェッショナルであるハワイ5-Oプロパティーズ社の一棟多代さんの対談が実現。各国の不動産事情や、日本を飛び出し海外で不動産業を選んだプロフェッショナル同士としての苦労まで、それぞれの視点から語っていただきました。
一棟 多代さん(ハワイ5-O プロパティーズ所属・写真左)
ハワイ5-0 プロパティーズの不動産取引主任(Broker-in-Charge)。奈良県出身。1987年に渡米、南カリフォルニアでハイスクール、コミュニティカレッジを卒業後、ロサンゼルスで日本航空に入社。その後フライトアテンダントとして米国系航空会社に転職。ハワイ在住27年目。邸宅の物件管理を手伝ったことをきっかけに、2009年に不動産ライセンスを取得。2018年にはブローカーライセンスを取得。2019年より所属会社の主任(Broker-in-Charge)に就任。
風戸裕樹 氏(プロパティアクセス株式会社 代表取締役CEO・共同創業者・写真右)
2004年早稲田大学商学部卒業。不動産仲介、不動産投資ファンド勤務を経て、2010年不動産仲介透明化フォーラム(FCT)設立。業界の先駆的存在として、賃貸仲介手数料無料のサービスを始める。また、売却エージェントサービス「売却のミカタ」を開始し、全国にFC展開。 2014年FCT社はソニー不動産のグループ企業となり、ソニー不動産執行役員として事業拡大に貢献。その後、シンガポールに移住してProperty Access株式会社を創業。シンガポール、フィリピン、米国、日本に支社展開。日本最大の国際不動産フェア「世界の家・投資フェア」を主宰。 国際的な不動産コンファレンスで日本代表として講演し、「オールアバウト」「ダイヤモンド不動産」ほか、不動産専門家としての寄稿も多数。
風戸さんと多代さんとの出会い
多代さん:
風戸さんと最初にお会いしたのは、2014年でしたね。私が所属しているハワイ不動産評議会(HIREC)の視察訪問で、当時、風戸さんが在籍されていたソニー不動産のオフィスに伺ったのがきっかけでした。
風戸さん:
もう10年以上経ちますね。
多代さん:
当時の風戸さんは、日本の不動産業界にアメリカ流の「エージェント制」という新しい風を吹き込んだ立役者として注目されていました。その発想力と行動力が業界に大変な衝撃を与えたことを覚えています。その後、ソニー不動産から独立され、シンガポールに移住してプロパティアクセス社を起業されたわけですが、そのきっかけは何だったのでしょうか。
風戸さん:
実は最初から東南アジアを目指していたわけではないんです。イギリスの大学院に進学する準備をしていて、その過程で、ソニー時代の上司に推薦状をお願いしたところ、「シンガポールに面白い人がいるから会ってみるといい」と紹介を受けました。そこで出会った方々にシンガポールでの起業を勧められたのがきっかけです。この場所なら.様々な国の市場を見ることができる、という手応えがあり、イギリス行きを辞めて、シンガポールでプロパティアクセス社を設立する道を選びました。
多代さん:
大きなご決断をされましたね。
ホーチミン訪問の際にお世話になったハンさんと共同執筆された「幸せを引き寄せるベトナム不動産投資」も拝読いたしました。日本経済が世界に取り残されつつあるという危機感を背景に、日本で働く人が富裕層になるための現実的な手段として海外不動産投資を提唱されています。現地で数多くの高層プロジェクトを見学すると、そのポテンシャルに胸が高鳴りますね。
ホーチミンの後に訪れたマニラのBGC地区では、ハワイで「ウルトラ級ラグジュアリー」と呼ばれるコンドミニアムに匹敵するレジデンスが、価格や共益費において何倍も低く、その伸びしろにも大きな期待が持てますね。
東南アジア・ハワイで共通する「信頼できる人材の大切さ」
多代さん:
シンガポールでの事業の立ち上げはいかがでしたか?商習慣の違いなどご苦労があったのでは?
風戸さん:
起業した理由の一つが「この市場に正面から取り組んでる競合がいない」と考えたことでした。それゆえに経験者がおらず、人材採用には大変苦労しました。採用のミスマッチが続けば、時間も資金も浪費してしまいます。チームが出来てビジネスが軌道に乗るまでの最初の2年間は、本当に厳しい時期でした。
多代さん:
人材は、場所を問わず私たちの事業にとって大切なテーマですね。特に海外と日本では、仕事に対する考えや進め方の違いが大きいですよね。ハワイもアメリカでありながら、アメリカ本土とはまた違う独特のビジネススタイルがあります。東南アジアではいかがですか?
風戸さん:
東南アジアは、国ごとに言語や文化が違うため、さらに複雑かもしれません。お互いが第二外国語である英語でコミュニケーションを取るため、「言ったつもり」「聞いたつもり」のミスコミュニケーションは多発しますね。同じ英語でも、マレーシアで使われる英語と、フィリピンで使われる英語が違うなど独特ですね。東南アジアの多様性というのはヨーロッパ以上なのではないかと思います。
多代さん:
文化や言葉が違う中での多国籍ビジネスは大変ですね。ハワイでも、同じです。お客様への対応のスピードや、細やかなフォローアップといった点で、違いを感じることが多々あります。日本であれば「当たり前」のことが、こちらではそうではないので、違いを説明することも我々の役割ですね。
風戸さん:
まさしくその通りです。もどかしく思うことも多くありますが、そんな中でいかにお客様に納得していただける体制を築くかが、私たちの挑戦です。
多代さん:
本当にそうですね。信頼できるパートナーを見つけ、関係を築きながら仕事を進めていく。これはハワイでも東南アジアでも変わらない、成功のための普遍的な法則なのだと感じます。
私はその「信頼できるチーム」の重要性が最も問われるのが、不動産を「買った後」の管理フェーズだと思っています。正直に申し上げて、不動産を買うこと自体はそれほど難しいことではありません。しかし、本当に大切なのは購入後の「不動産管理」を信頼できるチームに託せるかです。特に、突発的な故障など、日本では想像しにくい事態が起こることも少なくありません。適切なメンテナンスで物件を守り、その価値を高められるかどうかが鍵になります。
「東南アジア不動産」「ハワイ不動産」それぞれの魅力
多代さん:
風戸さんは東南アジアのダイナミックな市場を専門とされています。いまの東南アジア市場をどのようにご覧になっていますか。
風戸さん:
各国それぞれに、国としての成熟度や政治的なリスクなど違いがありますが、ベトナムとカンボジア、この二つの国には注目しています。まず国民性が勤勉で、なおかつよい意味で共産党的な統制が取れていることから、今後の大きな成長に期待しています。
ただ、東南アジアの国々は、例えば外国人による不動産売買の税率がそもそも明記されていないなど、法制度が未整備な部分が大きいんですね。なので、ある日突然、税制が変わるといった予想外のことも起こり得ます。
多代さん:
ハワイは不動産取引の透明性の高い場所ですが、それでもやはり法改正はあります。どこの国であっても海外不動産に投資される方には、ある程度、覚悟しておいていただきたい共通項と言えるかもしれません。
先月訪れたホーチミンとマニラは、コンドミニアムの物件価格や物価がアメリカほど高騰しておらず、利便性の良さも含めて大きな魅力を感じました。ホーチミンではどのお店に行ってもお料理が美味しかったですし、高層ビルの立ち並ぶ様子は画期的でした。マニラのBGC地区は、近代的でラグジュアリーな都市開発エリアでアメリカの街並と変わらない印象でした。何処でも英語が通じる安心感もありましたね。どちらも人口の上昇率の高い国なので、若い人たちのエネルギーを感じます。
東南アジアの不動産市場という視点から見て、風戸さんは「ハワイ不動産」にはどのような魅力があると感じられますか?
風戸さん:
僕が人生で初めて海外旅行に行ったのがハワイなんです。その後もグアムやオーストラリアのケアンズ、そして東南アジアの主要なリゾート地はほとんど訪れましたが、ハワイだけは感覚が全く違うんです。プーケットやバリ島などは「南国」だなと感じます。でも ハワイは「天国」と感じるんです。この差はとても大きいですね。
多代さん:
ハワイは天国!
風戸さん:
その理由としてまず挙げられるのは「気候の良さ」です。温暖なのに湿度が低くカラッとしていて、不快な暑さを感じません。そして、どこを見ても美しい景色、洗練された街並み、安全に歩ける、そういった要素がこれだけ揃っている場所はない。これは20年前に初めて訪れた時から変わらない印象で、何物にも代えがたいハワイの魅力だと思います。
多代さん:
気候や風の心地よさを、ハワイの魅力として挙げる方は多いですね。近年は気候変動で少し暑くなったと感じることもありますが、それでもやはりハワイの良さ、特別な空気感は健在ですね。
風戸さん:
もう一つ、ハワイの特徴として際立つのが「生活のしやすさ」と「安心感」です。 例えば、旅行で3〜4日過ごすなら、プーケットやランカウイ島など、日本人があまり訪れないリゾートでの特別な体験も魅力的でしょう。しかし、「デュアルライフ(二拠点生活)」や「年間の半分を過ごす」といった長期滞在を考えると、多くの日本人にとって、生活環境や利便性も重視する傾向があります。僕の妻も、シンガポールの住まいを選ぶ際「日系の百貨店に歩いていける場所」というのが絶対条件でした。海外生活では、慣れ親しんだ食や文化に気軽にアクセスできることが大きな安心感につながります。
その点、ハワイは日系人のコミュニティが大きく、日本の食材や商品が容易に手に入り、日本語が通じる場面も多い。海外でありながら、日本人が心理的な負担を感じず長期滞在できる稀有な場所であり、この安心感はハワイならではの大きな魅力です。
多代さん:
おっしゃる通りです。お客様を見ていると、ハワイ不動産を長く所有される方の根底には、単なる投資対象としてではない、深い「ハワイ愛」があると感じます。親御さんの代からハワイに親しみ、子供の頃の楽しい思い出があるからこそ、「自分もハワイに拠点を持ちたい」と考える方も多いと思います。一方で利回りやキャピタルゲインといった数字だけを基準に判断される方は、数年で売却してしまうケースも少なくありません。
風戸さん:
それはよく分かります。不動産投資という目的だけならば、不動産REITに投資すればいい。でもハワイには「やはり自分も住みたい」という想い入れを持って買われる方が多いのが、他の国との大きな違いではないでしょうか?
多代さん:
若い頃はニューヨークやロサンゼルスのような刺激的な大都市に憧れる方も、年齢を重ねるにつれて、都会の喧騒から離れたハワイの穏やかな魅力に気づき、再評価されるようなお客様の姿を何度か見てきました。
風戸さん:
訪れるたびに新しい発見があり、飽きることがないのもハワイの不思議な魅力ですね。
多代さん:
今日はありがとうございました。風戸さんのグローバルな視点からハワイを語っていただくことで、東南アジアとハワイそれぞれの魅力を認識することができました。ぜひ近いうちに、またハワイにお越しいただき、今のハワイの不動産市場も肌で感じていただきたいです。
風戸さん:
ぜひ、楽しみにしています。本日はありがとうございました。
多代さんからの後日談
多代さん:
このたびは、東京の素晴らしいオフィスで対談の機会をいただき、誠にありがとうございました。
また、6月には風戸さんのご厚意により、(一社)日米女性ビジネスネットワーク協会(WBN)の海外視察として「ホーチミンとマニラの不動産ツアー」を実現することができました。現地では、風戸さんをはじめ、シニアアセットマネージャーの神谷さん、多くのスタッフの皆さま、そして各開発業者の販売チームの方々に多大なるご協力をいただき、心より感謝します。風戸さんのリーダーシップのもとに生まれる、チームワークの素晴らしさと高い求心力を改めて実感いたしました。今後のさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。
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