日本ーハワイでのデュアルライフが人気 しかし税務面では「二つの183日ルール」に要注意! (山田&パートナーズ社)

更新日 2025.11.04

日本の収入でハワイワーケーション、税金はどうなるの?

コロナをきっかけに一般にも浸透した在宅勤務やリモートワーク。日本でも多拠点生活を送る人が増えている。その中で、リモートワークやワーケーションの場所として人気なのがハワイ。

1日単位や1か月単位で気軽に借りられるバケーションレンタルのチョイスが数多くあり、日本との実質5時間という程よい時差を利用して、朝からビーチを楽しみ、午後から日本のビジネスアワーに合わせて仕事をするといった滞在ができることがその理由だ。

しかし、「ハワイには何日まで滞在してもOKなの?」
「ハワイに滞在期間の税金の処理はどうなるの?」
など、疑問を感じつつ、ワーケーションを実践している方もいらっしゃるのではないだろうか。

山田&パートナーズの遠藤先生は「ハワイ滞在中の働き方や滞在日数によっては、日本だけでなくアメリカでも課税の対象になるケースがあります。特に押さえておきたいのが”2つの183日ルール”です。」という。

今回は、ハワイでのワーケーションを計画している方に向けて、遠藤先生がわかりやすくポイントを解説する。

遠藤先生: 

今回は、日本の会社で勤務している人が、ハワイでワーケーションするケースを対象として解説します。

前提としてアメリカ・ハワイでクライアントを獲得して収入を得るケースでは「日本の収入は日本で納税・アメリカの収入はアメリカで納税」となり、アメリカでの税務申告は避けられません。

また規定の日数以上の滞在で”アメリカ居住者”とみなされ課税対象となってしまうこともあります。これらのポイントを押さえて、”うっかりアメリカの課税対象とならない”よう、プランしてください。

税務のキーポイント:短期滞在者免税の183日ルール

遠藤先生は、ハワイでのワーケーションをプランする際、税務の観点からは日米租税条約における「短期滞在者免税の対象となるかどうか」が重要と指摘する。

短期滞在者免税とは、日米租税条約に基づく制度で、一定の要件を満たせば、アメリカ滞在中の日本からの給与所得についてアメリカでの課税が免除される仕組み。

日米租税条約における「短期滞在者免税」の3つの要件

短期滞在者免税を適用するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要がある。

  • 183日ルール
    アメリカ入国以降の12か月間、又はアメリカ出国日以前の12か月間のアメリカ滞在日数合計が183日を超えないこと
  • 給与ルール
    日本法人から給与が支払われていること
  • 負担ルール
    日本法人から支給される給与がアメリカ法人で負担していないこと

ハワイでワーケーションするようなケースでは、支払ルールや負担ルールは一般に満たしていると思われるが、183日のカウントが暦年単位ではないことや複数回で滞在する場合は合計で計算が求められることが要注意といえそうだ。

ただしここに複雑なトラップがあるという。

遠藤先生:

実はこの短期滞在者免税の「183日ルール」とは別に、アメリカ側にはもう一つ別の「183日ルール」が存在するのです。
この2つの「183日ルールの違い」をしっかり認識しておかないとあとで思いがけない納税が発生してしまうこともありえます。

もう一つの183日ルール=アメリカ居住者判定(SPT)

遠藤先生がいう”もう一つの183日ルール”とは アメリカ側で、税法上の居住者かどうかを判断するためのルール=実質滞在テスト(Substantial Presence Test)のこと。

  • 暦年で31日以上アメリカに滞在
  • 過去3年間で「みなし滞在日数」が183日以上(当年:全日数、前年:1/3の日数、前々年:1/6の日数と3年間の滞在日数の加重平均でカウント)

なぜこの違いが危険なのか

遠藤先生:

前述した短期滞在者免税の183日が”入国日からのカウント”であるのに対し、居住者判定は”暦年でカウント”されます。まずこの日数カウントの違いをしっかり理解すること。

毎年頻繁にハワイ・ワーケーションを実施される方では、SPTを183日未満にするには、各年の滞在日数は120日以内に抑える必要があります。

SPTで183日以上になってしまうと、短期滞在者免税を使うには、特例を使って米国側を非居住者とする変更するための米国側で申告が必要になります。

フリーランス・個人事業主の場合

給与所得者以外に、フリーランスや個人事業主として日本で収入を得ている人がハワイに滞在する場合にはどうだろうか? 

短期滞在者免税の183日ルールは給与所得のみの適用となっています。フリーランスや個人事業主は短期滞在者免税は利用できないため注意が必要である。

この場合、居住者判定(SPT)の183日ルールは重要です。SPTで183日未満となれば、米国側では所得のうち滞在日数に応じた部分を非居住者として申告し、米国で生じた税額は日本所得税側で外国税額控除を用いて二重課税の軽減を図る方式が取られる。

  • SPTで183日以上となれば、短期滞在者免税を利用したい場合には、米国非居住者に変更するために米国所得税申告が必要になる。
  • フリーランスや個人事業主は、短期滞在者免税制度は利用できないため要注意
  • 米国非居住者として米国所得税申告で納税が生じた場合、日本所得税側で外国税額控除を用いて二重課税が軽減できる。

米国でのワーケーション、計画的な滞在日数管理が必要

遠藤先生:
米国でのワーケーションには上で説明したようなルールを踏まえて、計画を立てていただくのが重要です。

ただし、本稿では米国連邦税と日米租税条約の取り扱いに絞っての説明となっています。米国では州税や州売上税など、州により制度が大きく異なっており、州税は日米租税条約の適用外となっている点も注意が必要です。州税の検討は別途必要ですので、ご留意ください。


ハワイでの素晴らしいワーケーション体験を台無しにしないためにも、こういった税務面への目配りもお忘れ無く。

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山田&パートナーズ社は日米をまたぐ税務コンサルティングを得意としており、米国には、ホノルル・ロサンゼルス、日本には20拠点を構えている。

日本の税理士資格を持つ遠藤先生のようなプロフェッショナルが米国に駐在し、日本国内拠点とともに、日米双方の税務サービスを同時に提供している。米国進出や米国移住を考える方は、税務会計のみならず弁護士などとの連携も可能な山田&パートナーズ社へのお問い合わせはこちら。

 

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