日本ではなじみが薄いエスクローとは、ひと言で説明すると、不動産購入代金の受け渡しや、法律に乗っ取った手続き管理・書類作成などを中立の立場で取り仕切るサービスのことです。外国人バイヤーにとって、売り手との直接取引は不安が大きいもの。エスクローは、取引の透明性を高めるための第三者機関と言えます。
エスクロー業者は、売り手と買い手により任命される中立の第三者として、すべての条件がみたされた場合にのみ登記書と売買金が交換されるよう、取引を監視してくれます。
売り手と買い手の双方が、購入契約書の内容に合意した場合、エスクロー口座が開設され、その後の契約に関する資料や書類のサインなどのやり取りはすべてエスクロー会社が絡んできます。
以下エスクロー会社の行う主要業務について説明します。
エスクロー会社の行う主要業務
予備レポート(事前権利調査報告書)の作成
エスクローが権原保険会社に作成を依頼し、不動産の所在地、名義、所有権の種類(土地付き所有権か借地権)などを調査します。この報告書で売り手に融資の記録があれば、エスクロー保管会社がローン残高を調査し、売却益からローン残高支払い分を確保し、用意します。
買い手の権原保険(Title insurance)加入手続き
ハワイ州では、買主は不動産の購入とともに権原保険に加入することになっています。権原保険会社は不動産を調査し、抵当に入っている物件でないかなどの公共記録を検討した結果、その不動産の権原状態のリスクを引き受けます、という保険。つまり、不動産購入後に購入時の条件に反する状態が判明した場合、保険料金に従って買い手と貸主に金銭的補償をしてくれる保険。
エスクロー指示書を作成
エスクロー保管会社が売買取引を扱う際の売り手・買い手の義務と権利、エスクロー保管会社の義務と免責事項が記載されています。売り手は、取引に関する重要文書をエスクロー保管会社に預け入れ、必要な情報を開示することに同意し署名。一方、買い手は、不動産購入にかかる費用を確保し、エスクロー保管会社に預け入れることに同意し署名します。
権利書の作成と必要書類の用意
エスクロー保管会社は権利書およびその他の必要書類の用意を該当部署に指示します。買い手がローンを組む場合、エスクロー保管会社が融資先の銀行と連絡をとり、ローン関係書類を受け取り、取引完了に向けて準備を進めます。またこの時点で、他の契約書関連書類も受け取り、契約上の全条件が達成されているか確認し、ローンにかかる費用と合わせて取引完了に必要な費用を算出します。
エスクローの完了
買い手は権原保険規約を受け取り、融資銀行には貸主用権原保険規約が渡され、全手続き終了です。
登記完了
購入契約書に、売り手・買い手が合意後、およそ30-45日程度で、売り手は売買金額を受領、買い手はは所有権を得て物件の引き渡しを受けます。双方がサインした登記書類は後日郵送されてきます。不動産会社は仲介手数料を受領し、取引終了です。
このようにエスクロー会社が中立の立場で関与することで、取引におけるどちらかの不利益や、購入後の「そんなはずでは」という事態を避けるために、複数のチェック項目をクリアしていく仕組みがあります。手数料はかかりますが、日本よりも安全な仕組みと言えるでしょう。
次は、物件にまつわる各種の調査、インスペクションについて詳しく解説します。