実録!ハワイのロックダウンVol.7 日本とハワイの渡航制限緩和し、行き来を可能にする「トラベルバブル」は実現なるか

実録!ハワイのロックダウンVol.7 日本とハワイの渡航制限緩和し、行き来を可能にする「トラベルバブル」は実現なるか

更新日 2020.07.15

3月26日より州全体のロックダウンに入っているハワイ。本日、ハワイ州知事が14日間自己隔離なしの観光再開日程を8月31日まで遅らせると発表。ハワイのロックダウンのいまとこれからをお伝えする「実録!ハワイのロックダウンVol.7」。

目次

ハワイ州の観光再開は再々延長。9月1日からの再開見通しへ

3月26日から始まった「ハワイ州外からの渡航者の14日間自己隔離義務」=事実上のハワイ州の封鎖、観光業の封鎖。

ハワイ州のイゲ知事は、「14日自己隔離義務なしでの渡航者受け入れを8月1日より再開する」と発表していたが、昨日、9月1日に再延期すると記者会見で発表した。

受け入れ再開は、14日間自己隔離義務の代替条件として「ハワイ到着前72時間以内に新型コロナウィルス感染テスト受診し、結果が陰性であること」を前提に進められていた。

8月1日からの再開に向けて準備を進めていた観光業界は、ふたたび肩透かしを食らった形だ。

事前のコロナ検査受診プログラムがなかなか決まらない

そもそも代替条件である「新型コロナウィルス感染テストをハワイ到着72時間以内に受診」という案は、概要が6月24日に発表されてからも、なかなか具体的な詳細プロセスが発表されなかった。

アメリカの大手ドラッグストアチェーンCVSの全米1400店舗を検査機関として利用するという概要が発表されていたが「自宅そばにCVSがない人はどうするのか?」や「実際にCVSが確実に検査結果を72時間以内に戻せるのか?」などの疑問が、オンラインニュースのコメント欄でも散見された。

またアメリカ以外の国からの訪問者に対しては「陰性証明をどのように英語で翻訳するのか」などの疑問があるがここもまだ発表されていない。

ハワイ州側も、発表に踏み切りたいのはやまやまだろうが、解決すべきハードルが残っているということだろう。
 

一方で8月1日からの再開を期待して事前テストの詳細発表を待っていたホテルなどの観光関係者からは、「ゲストへの告知が出来ない」、「予約を本当に受け付けてよいのか」などの声が上がっていた。そこに来て今回の再延長。8月1日から向け、人員の再雇用や資材の手配等を行っていたはずの観光業は、「コミュニティの安全が第一」であることは理解しつつも、州の方針変更に振り回された形となった。

一日も早い事前検査の手順や詳細の発表が待たれる。

観光再開延長の背景

今回の観光再開を再延期した背景として、イゲ知事は二つの理由を挙げた。

理由1)経済再開後のハワイ州内における新規感染者数の増加

完全なロックダウンから段階的な経済再開を経た現在、オアフ島の一日の新規感染者が20名~多い日で35名を超えるなど増加傾向にあることを懸念。

7月13日時点のハワイ・オアフ島の感染状況

理由2)こちらの方が深刻だが、アメリカ本土での新規感染者数の急増

アメリカ本土では、7月に入り、フロリダ州、テキサス州、カリフォルニア州、アリゾナ州などで新規感染者が急激に増えた。中には再び経済活動制限をかける州も出ている。
特にハワイに近く、ハワイ来訪者の多いカリフォルニア州の感染が、ハワイ州にとって受け入れ再開に関する最大の懸念となっている。

一方で、ハワイ州のグリーン副知事は、9月1日渡航者受け入れまでに下記対策を実施することで、コロナウイルスに対して盤石な体制を整えると述べた。

対策1)現在コンタクトトレース(接触確認)を行っている人材200名に、さらに300名を補充し、計500名の体制にすること
 

対策2)「72時間前新型コロナウィルス感染テスト」体制の拡充
当初、大手ドラッグストアチェーンCVSだけで検討されていた「72時間前新型コロナウィルス感染テスト」を、別のドラッグストアチェーンであるウォルグリーンやさらにはコストコホールセールなどでも受けられるように調整すること

また、上記の事前検査のプロセスについては主に、アメリカ本土在住の人に向けたものである。その次の段階として、日本を含むアメリカ以外からの渡航者に対しても、検査をいつどのように受け、どのように検査結果を提出するのかなどが提示されることになるだろう。
 

ハワイと低感染エリア同士をつなぐ「トラベルバブル」待望論

そんな中、世界的に取り組みの始まっている「"トラベルバブル"をハワイと他の低感染国との間に作ろう」という声が強まっている。
ハワイ州は感染拡大傾向といっても、全米的に見れば依然として最低の感染率となっている。
"トラベルバブル"とは「域内旅行」とも言われ、低感染エリア同士の地域間を”安全な泡の中”と想定し、そのバブル内の人だけは自由に行き来を可能にする特別合意のことである。オーストラリアとニュージーランドの間で「トラベル・バブル」の合意が結ばれたことで知られるようになり、他にもバルト三国(リトアニア・エストニア・ラトビア)などでも進められている。

 

ハワイ州では「日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランド」との"トラベルバブル"を検討中であるとニュースでも報道されている。
その中でも、「日本人旅行者はハワイ観光業全体のキーファクター」となる。

なぜか。全ハワイ訪問者数の中で日本人旅行者は16.6%という比率だが、実はその「消費額の高さ」という点で最大マーケットであるアメリカ本土からの旅行者を大きく引き離しているのだ。

Hawaii Tourism Authority発表の2018年のデータ
(ハワイに編集部でパイチャート化)

日本人旅行客は1日当たりの平均旅行消費額は約$240/日と、アメリカ本土からの旅行者の平均約$190/日と比較しても25%以上多く消費する。つまり、日本人旅行者は、人数以上に経済的にインパクトが大きいのだ。 

 



この日本ーハワイ間のトラベルバブルを推進しているグループのおひとり、セントラル パシフィック バンクのポール与那嶺さんにお話しを伺った。

【プロフィール】
ポール与那嶺 (セントラル パシフィック バンク代表取締役会長)
1957年東京生まれ 。高校まで日本で過ごしサンフランシスコ大学経済学部を卒業。会計士として会計事務所ピート・マーウィック(現KPMG)に入社。KPMGコンサルティング社長、日立コンサルティング社長を経て、2015年日本IBM社長、2018年セントラル パシフィック バンク ファイナンシャル コーポレーション会長兼CEOおよび同社子会社であるセントラル パシフィック バンク代表取締役会長に就任。2004年にはホノルル市長の特別顧問として官民パートナーシップの推進に携わった。米日カウンシル時期理事長。
ポール与那嶺さん:
 このハワイ―日本間のトラベルバブルのアイディアは、オーストラリアとニュージーランド間のトラベルバブル合意のニュースをヒントに生まれました。もともとは私もメンバーであるHawaii Executive Collaborativeという団体が中心となり始まった提言です。この団体は、ハワイ経済界のエグゼクティブが集まり、ハワイの未来に向けた提言や活動を行っています。その一環として、我々からハワイ州議員の皆さんやイゲ知事にも働きかけをし、現在ハワイ―日本間のさまざまな関係者により協議が行われています。

 もちろんアメリカの連邦政府としての決定もありますので「ハワイ州」と「日本国」との交渉は一筋縄では行きません。しかし、ハワイのロックダウンが長期化するにつれ、日本人のゲストの大切さ、トラベルバブルへの要望はさらに高まっていると思います。ハワイと日本がともに低感染エリアとして感染食い止めに成功した理由は、マスクを着用することやルールをきちんと遵守すること、公共意識の高さなどの共通点が多かったことが挙げられます。ハワイにとって日本人は「ぜひとも最初に戻ってきていただきたいゲスト」なのです。

 また、日本とハワイの間には経済的・人的なつながりが深く、家族がハワイと日本の間で行き来をしている方や、ビジネスや不動産を日本とハワイに両方に持っている、といった方も多い。ビジネスや生活基盤としてのエッセンシャルなニーズに応えるという点でも、日本とハワイ間のトラベルバブルを作ることは、インパクトが大きいのです。

  まずは「日本とハワイ」というつながりの深い場所同士で、トラベルバブルの導入実証実験を行い、ここでうまくいけば、さらにトラベルバブルの地域を広げていく。そういうパートナーとして、日本とハワイ以上に最適なパートナーはいないと思います。

トラベルバブル実現のために

「ハワイに住む」では、ハワイにある日本語メディア6誌の共同プロジェクトとして、このトラベルバブル実現のための署名活動を開始した。
ハワイ州からの日本政府に対する働きかけだけでなく、日本にいる「ハワイに来たい」と思ってくださる方からの声を、日本政府に届けることも重要だと考えたためだ。

具体的には、ハワイに到着時並びに日本に帰国時における14日間の自己隔離期間がなくならないと、海外旅行に出かけることは現実的ではない。

ハワイ・日本双方でのPCR検査能力強化などインフラ的な拡充やルール作りと同時進行ではあるが、まずは「双方での行き来に関し、14日間自己隔離を撤廃する方向」について合意が取れることが第一歩となる。

そこで、この署名活動にご賛同いただける方は、下記の署名サイトからご署名をお願いしたい。


ハワイ・日本間の自由な行き来「トラベルバブル」を実現させよう!【ハワイ日本語メディア6誌共同署名キャンペーン】

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