ハワイ・オアフ島の住まいの住宅市場動向は新型コロナウイルス対策のためのロックダウンの影響をどのくらい受けているのだろうか。「ハワイに住む編集部」では、ホノルルで事実上のロックダウンが始まった3月23日以降、独自の市場定点観測調査を始めた。
ここではホノルル不動産協会より発表された、今年3月中の「オアフ島不動産売買レポート」を紐解きながら、独自の市場定点観測調査を元に今後予測されるロックダウンの市場動向への影響を探っていきたい。
「ハワイに住む」マガジンで予想されていた2020年の不動産マーケットの傾向
新型コロナウイルスの全世界的なパンデミックが始まる以前の2020年1月に発行した「ハワイに住む」マガジンでは、ホノルル不動産協会のへニー・エル・ブレイディさんにお話を伺い、2020年の不動産マーケットの傾向を下記のように予測していた。
- 住宅不足は解消傾向、ただし現地居住者に必要な手頃な価格の物件は依然として不足
- カカアコ、アラモアナ、オアフ島西のエバ地区、オアフ島中央部の住宅開発計画が引き続き進む
- 職場の近くに住み、生活の便利さと快適さを兼ね備えたアーバンライフを過ごすことを目的とした「Work Live Play」志向の高まりで、ダウンタウン、カカアコ、アラモアナエリアの高い人気は続く
2019年を住宅ローンの低金利などを受けてオアフ島の不動産マーケットが活発に動いたと振り返り、2020年もこの傾向が続くと期待していたのだ。
ホノルル不動産協会の3月マーケットレポート、
ロックダウンの影響が出始めた
しかし3月23日に施行されたホノルル市ロックダウン(ハワイ州全体のロックダウンは3/26)により、その予測はかなり違うものへとなりそうである。
不動産関連は、ハワイ州の外出禁止令で”エッセンシャルサービス”つまり重要業務従事者に指定されているので、不動産業、エスクローなどを行う不動産取引の仲介業も動いている。しかしソーシャルディスタンスを保つ観点から3月24日以降「オープンハウス」は中止となり、バーチャルオープンハウスに切り替わっている。(オープンハウスとは、日曜の2-5時に売り出し物件を一般開放するシステム)
そんな状況下で4月頭にホノルル不動産協会より発表された3月期のレポートは下記の通り。
- 戸建住宅のセールスが上昇
前年同月比で9.8%増。中間価格は810,000ドル(緩やかに上昇) - コンドミニアム物件のセールスが下落
前年同月比で12.2%減。中間価格は435,000ドル(緩やかに上昇) - リスティング物件(売出し物件)の在庫が低下。
戸建住宅が16.7%減少、コンドミニアム物件が14.3%減少。ロックダウン以降、かなりの数の売出し中物件を、一時的に市場から取り下げた売り手が多かった。
このレポートから言えることは、2020年3月が「今までの好調さ」と「これから始まるダウントレンド」を両方のデータを含む「端境期」と言える月だったということだろう。
ホノルル不動産協会会長トリシア・ネコタ氏は「3月の売買データは好調な市況を反映していますが、3月にクローズされた売買は少なくとも30日以上前にエスクローに入った物件です。」と言及し、世界的なコロナ禍や、ハワイのロックダウンの影響は反映されてないとした。
一方、2桁のダウンを示したリスティング件数については「これらは経済の不確実性に対する初期反応といえます。新型コロナウイルスの影響により市場活動の変化を示唆しています。」と説明。
外出禁止令・ロックダウン中のハワイでは、オープンハウスができない、売りたい価格で売れない、今後の市場が見えない、ということで、売り出しの手控えが一気に起きた形だろう。
「ハワイに住む」編集部が行った定点観測調査
この3月のレポートを受け、4月の不動産動向はどのように変化するのだろうか。
「ハワイに住む」編集部が独自に行なっているロックダウン以降の市場定点観測調査では、以下の2点が見えてきた。
- エスクロー数の現象
ロックダウンが始まって約1週間後の3月31日段階で1331件だったものが、4月6日時点で1223件に減少。その1週間後の4月13日には1209件に、さらにその1週間後の4月20日には1145件まで減少。4月23日現在のエスクロー数は1121件であり、3月末よりも200件もの大幅な減少になっている。
- コンドミニアム物件ではリスティング価格より下げた価格で取引
この2週間(2020年4月中旬)で特に顕著なのが、コンドミニアム物件の売買が成立したケースのうち、リスティング価格を下回る価格でソールドになったケースが増えている。
まず1点目のエスクロー数についてだが、一般的にハワイでは、エスクローに入ってからソールドまでおよそ45日間かかるとされているので、現在エスクローに入っている物件はロックダウン以前と以降に入ったものがまだ混在しているが、全体的な数はロックダウン後にかなり減ってる。
次に2点目に関してだが、編集部調べでは、3月30日以降およそ46%のコンドミニアム物件がリスティング価格よりも下げた価格で取引された。また、およそ21.5%がリスティング価格よりも高く、33%がリスティング価格のままで取引されている。
4月に売買が成立した物件も、依然、コロナの影響が本格化する前に始まった取引が含まれているためにモザイク模様とも言える結果になった。
以上は、ホノルル不動産協会がまとめているデータのようにマルチリスティングサービス(MLS)システムから収集されたデータをコンピューターで解析したものではないので、必ずしも正確な数字とは言えないが、ロックダウン以降のハワイ市場の動向の一面を垣間見ることができると言えるだろう。
ネコタ氏の言及通り、ロックダウンの不動産動向に与える影響は始まったばかり。「ハワイに住むネット編集部」では、今後も独自の定点観測調査を続け、より顕著にロックダウンの影響が出ると予想される4月のマーケットレポートがホノルル不動産協会から発表されるのを待ちつつ、ロックダウンの影響、またこのロックダウン解除後の回復など、ハワイの不動産業の全体像をウォッチングしていきたいと考えている。