ハワイでラグジュアリー不動産の売買取引に数多く携わっている一棟多代さん(ハワイ5−0プロパティーズの不動産取引主任)。
今日はその取引後に関わるインテリアデザインについて、ハワイ在住のインテリアデザイナーであるルイス玲子さん(ヴェンタスデザイン代表)に話を伺った。
広島県福山市生まれ、奈良県生駒市育ち。1987年に渡米、南カリフォルニアでハイスクール、コミュニティカレッジを卒業後、ロスアンゼルスで日本航空に入社。その後フライトアテンダントとして米国系航空会社に転職。ハワイ在住24年目。邸宅の物件管理を手伝ったことをきっかけに、不動産ライセンスを取得。2018年にはブローカーライセンスを取得。現在、ハワイ5−0 プロパティーズの不動産取引主任(Broker-in-Charge)。
【プロフィール】ルイス玲子さん(ヴェンタスデザイン代表 写真左側)
ハワイ州で唯一日本語が話せるアメリカ合衆国認定のインテリアデザイナー(アメリカではインテリアデザイナーは試験合格者のみ認定される)。誰にとっても暮らしやすく健康や環境にも配慮したウェルネスデザインを、数多くのラグジュアリー邸宅で手掛けている。
Ventus Design
「自分らしさ」を表現するインテリアを求める人が増えてきた
多代さん:
随分前になりますが、別荘を購入したお客様から「ハワイに住まいを持ったことで、家族が一つになれたらいいな」と言われたことがとても印象に残っています。玲子さんは暮らしの中で「住まい」をどのようなものとして位置付けておられますか?
玲子さん:
人は、一生の時間の90%を自宅やセカンドハウス、オフィス、店内などのインドア環境の中で過ごすといわれています。その中でも自宅やセカンドハウスは、特に長い時間を過ごす場所です。単に風雨をしのぐというだけでなく、そういう空間は心身を休める場所であり、家族や友人との団らんの場所であり、勉強や趣味などで集中することのできる場所でもあります。そういう意味でも「住まい」というのは、人生にとってなくてはならない大切なものです。
日本では衣食住のうち、衣食への興味は昔から高かったのですが、ようやく「住」にも目が向いてきたなと感じています。その人らしさを表現する一環として、インテリアにこだわる人が全般的に増えてきましたね。
多代さん:
デザインや機能にも目を見張るものがありますね。最近では、ホテルやレストランでも間接照明を効果的に取り入れていますし、バスルームにデジタル時計を反映する洗面鏡などはトレンドを感じます。
どのような建築材や色合いで施工したら良いのか判断が難しいので、専門家に依頼することで漠然としたイメージを形にしてもらう…それを担うのが玲子さんのようなデザイナーの役割ですね。
玲子さん:
どういった目的でその家を使うのか?という目的意識が大切なのは勿論のこと、それをいかにセンス良くお客様それぞれの趣向や生活の目的に合わせて仕上げるか、デザイナーの腕の見せどころです。反対に、投資用としてテナント向けに賃貸するような物件では、投資に見合った予算枠で、万人に受け入れられるような内装を優先します。
多代さん:
どちらも、将来的に再販する場合を視野に入れておくことが大切ですね。
玲子さん:
そうですね。その物件に見合ったコストやインテリア、家具選びというものがあります。改装費用をかけすぎてもバランスが取れません。
そういった点でコストをかけるのは特にバスやキッチンなどの水回りで、投資した金額の約80〜85%が再販時のバリューアップにつながるといわれています。例えばウォシュレットは購入する時の好条件になりますし、地元のお客様ではキッチンには時代に見合った家電があることを前提に、どのようなメーカーのものが置かれてるかという点も考慮します。
多代さん:
確かに、水回りの綺麗な物件は売れ行きが早いですね。フローリングも購入の判断材料として決め手になることが多いようです。
ハワイで押さえておきたいインテリアのポイントと
進化するデザイン素材
多代さん:
日本のお客様がハワイで物件を購入して、いざ改装という際に、日本との違いに戸惑われることも多いと伺います。
可能であれば、建材を日本からハワイに運んで、日本の職人さんも連れて行って工事してもらったほうがラクと考える人もいらっしゃいます。
玲子さん:
まず、日本と米国では素材や建築に関する法規制が異なることが大きいですね。日本で流通している建材の中にはアメリカでの認証を取得していないものがあり、アメリカでは使えないものが多いのです。各種の工事にも、それぞれ許認可や賠償責任の関係で工事者がライセンスをもっていることが必要になります。
日本とハワイでは気候やライフスタイルも違うので、デザインにも影響します。常夏のハワイでは男女ともにショートパンツなどのカジュアルな服装が一般的なので、例えば家具の素材ひとつとっても、椅子やソファ素材には、合皮素材は素肌に張り付いたり高温多湿で傷みやすいことからもおすすめしていません。
ただ、自然素材だけが良いかというとそうでもなく、ハワイ向けの高性能で新しい素材を常にチェックしています。
多代さん:
最近ではどのような素材が注目されているのか、具体的に教えてくださいますか?
玲子さん:
例えば、キッチンカウンターなどに使う素材にカンブリアという人工石材があります。これは見た目が大理石のような素材ですが、表面が極めてフラットで雑菌が付きづらいので病院でも重宝されていますね。天然大理石や花崗岩は高級素材として知られていますが、表面に小さな穴が開いているので、清潔を保ちながら手入れをするのが実は難しいのです。
最近では、カンブリアのように天然素材に見劣りしない高級感のある良質な人工素材が評価される傾向にあります。
特にコロナ禍を経験してからは、従来あまり重要ではなかったところにも目が行くようになりました。住宅建材や家具も、掃除がしやすいだけでなく除菌もしやすい素材の導入が、デザイン上でも大切なポイントになっています。
多代さん:
インテリア業界の進化は、このような新しい資材の取り扱いなどから随所に伺えますね。
「どんな人にも優しいデザイン」が新たな資産価値を創る
多代さん:
玲子さんは、ユニバーサルデザインにも力を入れていると伺いました。
玲子さん:
ユニバーサルデザインというと、一般的には身体の不自由な方やシニア向けの手すりやスロープをつける・・・というイメージを持つ方が多いと思います。もちろんそれは大切なことですが、さらに一歩進めて「インクルーシブデザイン」「ウェルネスデザイン」と呼ばれるデザインでどんな人にも優しく使いやすいものを目指しています。
シニア向けの住宅だからといって、自宅が手すりやプラスティックの椅子だらけでは、安全だとしても気持ちが萎えるでしょう? 私自身、同居している母のために家を改装したのですが、母から「病院みたいにしないでね!」と釘を刺されたのです(笑)。尊厳性をもって暮らせる家にしてくださいということです。
安全や使いやすさのために考えることはたくさんあります。生活動線、段差をなくす、コンセントの配置、調光システム、またケガを防ぐように重い物や熱い調理器具は低い場所に集めるなどさまざまな配慮をしながら、最終的には全体の統一感や高級感を損なわないデザインに落とし込みます。
多代さん:
住まいの安全と使い勝手にプラスされた、気持ちが高揚する素敵なデザインですね。
玲子さん:
先進国の多くで今後さらに高齢化が進み、高齢者の割合は2060年には今の倍になるといわれています。シニア住宅、ユニバーサルデザインやインクルーシブデザインの将来的なニーズは、一層高まります。
多代さん:
使いやすさだけでなく、再販という観点からも不動産の資産価値を高めることにもつながりますね。メンテナンスに気を配ることは勿論ですが、改装する場合は建材のコーディネートにユニバーサルデザインなどを配慮する時代になったのですね。玲子さんのデザイナーとしての情熱は、お母様孝行の延長線上にあることも垣間見えるお話でした。
今日はありがとうございました。
多代さんからのメッセージ
多代さん:
ハワイのインテリアデザインにも、新しいトレンドがいくつも生まれています。物件を購入した後や売却する際には、内装のアップグレードが多いに役立ちます。玲子さんは先日、米国におけるシニア向けの医療保険などをテーマにした勉強会を開催され、私も参加させていただきました。インテリアデザインをはじめ、近い将来に向けた知識を深める良い機会をいただき、有難うございました。
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