ハワイ・オアフ島の高速鉄道・HARTに関する最新情報をアップデート（2022年12月）

更新日　2022.12.28

昨年には一部開通する予定だったハワイ・オアフ島の高速鉄道・HARTだが、2022年12月現在も開通していない。現在はどういう状況なのか、部分開通はいつになるのか。ハワイ・オアフ島の高速鉄道・HARTに関する最新情報をレポートする。

アラモアナまでは伸びない！？HARTの復旧計画の発表と承認

現在、ホノルルには「ザ・バス」と呼ばれる路線バスしか公共交通サービスがなく、渋滞に巻き込まれてしまうこともしばしば。「ザ・バス」には大きな荷物やスーツケースは持ち込めないため、観光客や住人は、ダニエル・K・イノウエ空港到着後は、タクシーやシャトルバス、自家用車やウーバーなどで目的地に向かうしかない。また基幹となる高速道路H-1にすべての大量の交通量が集中するインフラの少なさからホノルルは全米屈指の交通渋滞のひどい都市の一つとしてランクインしている。
そういった問題を緩和するために計画されたのが、ハワイ・オアフ島の高速鉄道・HART。空港を通ってホノルル市街地と開発の進むオアフ島西側の住宅地を結び、時間に遅れることなく、大量の利用者を一度に早く輸送できるサービスだ。

ハワイ鉄道 HART

元々はオアフ島西側のカポレイからホノルル中心にあるハワイ大学マノア校までをつなぐ計画だったが、その後アラモアナまでに短縮された。

しかし、大幅な工期の遅れ、CEOの度重なる交代、肥大化する予算など問題が山積み。今年になってHARTは復旧計画（リカバリープラン）を策定し、それを連邦公交通局FTAが承認。それにより残りの7億4400万ドルの連邦資金を受け取ることができるようになった。

ところが、そのリカバリープランには、
1）アラモアナから2駅手前のシビックセンター駅が仮の終点となること
2）パールハイランド駐車場の建設を延期すること
が含まれていた。

特に市民が驚いたのが、1）のシビックセンター駅が復旧計画の仮の終点となること。シビックセンター駅でストップすることで、ニーズの高いカカアコ・ワード・アラモアナ地区というホノルルの都心部へまでは線路が伸びないことになったのだ。

その一方で、HARTはアラモアナまでの区画の完成をあきらめておらず、復旧計画終了後の次のフェーズで進めたいとしている。

一部線路の運行開始は2023年、全線完成予定は2031年

現在完成している東カポレイ駅からアロハスタジアム駅までのプロジェクトの第１区間は、2023年初頭にホノルル市の運輸サービス局 (DTS) に引き渡され、運行が開始される予定だ。

また、アロハスタジアム駅からダニエル・K・イノウエ空港駅を通ってミドルストリート駅までの第２区間の工事は2025年初頭に、「シティセンター」区間と呼ばれる、ディリンガム大通り沿いのミドルストリート駅からダウンタウンを通ってカカアコのシビックセンター駅までの区間は、2031年までに完成する見込みとなっている。

観光客の方がダニエル・K・イノウエ空港からホノルル市街地に電車で来るまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。

東カポレイからアロハスタジアムまでの区間は完成し、試験走行が開始！

さて、2014年に始まった工事だが、2022年12月現在、東カポレイ駅からアロハスタジアム駅までのプロジェクトの第１区間のみが完成しており、8月から本格運用の前の試験走行が始まっている。

この試験走行には、車両の運行はもちろん、駅や乗車システム、乗務員、通常時および緊急時の運行シナリオを想定したシミュレーションなど、運用に関する全てが含まれている。

試験走行では、クアラカイ（東カポレイ）駅からハーラワ（アロハ・スタジアム）駅まで、複数の列車が運行しており、システム全体が運用可能な状態になるまで続けられる。その後、ホノルル市の運輸サービス局 (DTS) に引き渡され、サービスが開始される予定だ。

ホノルル市街地・ディリンガム大通り沿いの工事が開始

これまではホノルル以外の郊外での開発が進んでいたが、年末からは人口密度の高いホノルル市街地での工事が本格化した。市街地での最初の工事がホノルル空港に近いディリンガム大通り沿いのインフラを移転させること。インフラには、雨水排水、衛生下水道、給水本管、ガス/燃料、電気および通信インフラが含まれており、2026年までに完了する予定だ。同時に駅などの物理的な建設も始まる予定になっている。