ハワイのアドビス法律事務所は早川太基弁護士と、マロッツ (古屋) 有沙弁護士の二人の若き弁護士がタッグを組んで立ち上げた、新進気鋭の法律事務所だ。モットーとして「人生という旅路・挑戦を支えるパートナー」を標榜している。早川弁護士は訴訟やビジネス関連に強く、マロッツ弁護士は相続法・エステートプランニング・不動産取引関連に強い。今日は早川弁護士に、ハワイ不動産に関するよくある訴訟トラブル、またその回避方法についてインタビューした。
早川先生 ハワイ不動産の売買においても、不動産を賃貸する場合においても、「知らなかった」では済まされない事態や、話がこじれて訴訟トラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
できることなら訴訟を回避し、早期にトラブルが解決できるように、知っておいた方がよいことについてお話します!
多くのトラブル事例を見てきた早川弁護士が解説する。
そもそも「訴訟」に至るまでのプロセスとは
督促状→示談交渉・調停→それでもだめなら仲裁や訴訟へと発展
早川先生:
訴訟大国と言われるアメリカですが、そもそもトラブルが発生した場合、どのように訴訟にまで至るのかについてご説明します。
まずトラブル解決の第一段階として、クレームを起こす側が相手に支払い要求や立ち退きなどの督促状を一般的に提出します。その督促に相手が応じてくれない場合、次の段階として示談交渉や調停で示談の方向を探ります。それでも解決できなかった場合の次の法的手段として、初めて仲裁や訴訟という手段に踏み切るわけです。
訴訟は通常1~2年を要し、その分、弁護士費用も高くなります。結果の保証がなくリスクが高いため、和解での解決を図るのが一般的です。実際に、ハワイでは、約95%の訴訟案件が交渉により解決されています。
ちなみに、訴訟の前でも後でも、交渉は可能ですが段階により、交渉内容が変わる可能性があります。
不動産の売買にまつわる訴訟トラブル
ハワイの不動産売買の手続きは第三者機関であるエスクロー会社を間に挟み、売り手と買い手、それぞれがエージェントを立てて、規定のプロセスで進められるため非常に透明性が高いと言われています。プロセスの中にはインスペクション(物件の現地調査)が含まれていますので、双方そのレポートを見て納得済みで契約締結されたはずですが、それでも時には売買契約成立後に訴訟トラブルに発展するケースがあります。
買い手に物件が引き渡された後に、開示されていなかった重大な瑕疵が見つかり、その瑕疵が意図的に隠されていたと思われる証拠が見つかった場合などがそのケースにあたります。
例えば、不動産引き渡し後にしばらくして、壁の中の空間に広範囲に渡ってカビが広がっているのが見つかった。しかし、売り主が売却前に壁に穴を開けて中を見る必要のある修理を行った形跡があり、「売り主はその修理の際にカビの存在を知ったはずなのに開示しなかった」と主張する根拠があるといった場合です。これはAs is condition(原状で)で売買された物件であっても同様です。
買い主側は、そういった瑕疵を発見した場合、なるべく早く情報収集からクレームを起こすまでのアクションを取ることが重要です。時間が経つほど、訴えられた側にとって証拠の保存などの観点から不利になると考えられているためです。
売り主は物件売却の際に、知っている可能な限りの情報を開示しておくことをおすすめします。それもバラバラと後出しするのではなく、できる限り一度に出しておくことで、隠蔽の意図を疑われる可能性が低くなります。
不動産の賃貸にまつわる訴訟トラブル
賃貸でよくあるのは、賃貸で退去時の部屋の汚れや破損などに際して、”入居時からあった・なかった”といった行き違いのトラブルです。
不動産管理会社であれば知っていることではありますが、賃貸契約時に物件の状態を大家さん(オーナー)と借り主(テナント)がお互いに確認し、記録しておく「プロパティ・コンディション・フォーム」という書類があります。契約時の物件の現状を写真付きで残しておくことで、このトラブルが回避できます。
管理会社を使わずに、オーナーが直接貸し出している場合、このフォームが利用されていないケースも見受けられます。オーナーもテナントもお互いの身を守り、トラブルを避けることができるフォームなのでしっかりと確認しておくべきだと思います。
不動産エージェント(リアルター)にとって役立つ知識
ハワイの不動産エージェントの皆さんに知っておいて頂きたい重要なポイントがいくつかあります。
まず売買の際にクライアントとのやり取りは、電話で話した内容を後追いする形で良いので、必ずメールでも送信して履歴を残しておくことが大事です。「お電話でお伝えした〇〇の件、メールでも送っておきます」というような文言を書き添えて送っておくことで、後々の”言った・言わない”を避けることができ、証拠となります。
それから、可能であれば、不動産マーケット比較分析資料である「CMA(Comparative Market Analysys)」をクライアントに送っておくことも大切です。のちに「売買の際の不動産価格が妥当でなかった」というように訴えられた場合に、CMAを送っていたかどうかが問われるケースもあります。
CMAは法律上の義務ではありませんが、不動産エージェントとしての「業界標準の説明責任」を果たしていたという点で、不動産エージェントを守る証拠なります。法律になっていないことでも、訴えられる可能性があるというのは知っておいていただきたい重要なポイントです。
早川先生からのアドバイス
一般的にハワイ州では弁護士費用は時間ベースでの請求、保証金システムを取っています。トラブルが長引けばそれだけ費用が掛かってきますので、たとえ訴訟で勝てたとしても、受け取る賠償金と比べて割に合わなくなる・・・という可能性もあります。
単に訴訟で勝てる可能性を見てケースを進める弁護士ではなく、解決までに予想される弁護士費用や、実費、回収の難易度などをベースにクライアントの立場に立ってサポートしてくれる弁護士にご相談することをおすすめします。
また、示談の際にも、金銭面だけでなく、さまざまな要素の中から折り合いのつくポイントを見つけ出し、クリエイティブな提案で、早期に解決できるのがよい弁護士だと言えます。
アドビス弁護士事務所では、クライアントのトータルでの負担を抑え、弁護士費用が「Client's best interest(クライアントにとっての最善の利益)」のために使われることを重視しています。早期解決、クリエイティブな解決方法を提案すべく全力を尽くします!
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