インタビューシリーズ「ハワイの食を楽しむ」Vol.1
落合務さん（ラ・ベットラ・ダ・オチアイ　オーナーシェフ）

予約のとれないイタリアンとして知られる東京・銀座「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合シェフが海外１号店となる「ラ・ベットラ」をハワイでオープン。
なぜハワイなのか、そしてハワイの食事情をどう見ているのか、聞いてみた。

レストランは最高のパワースポット。
人々が笑顔になれる場所を創りたい。

　ー落合　務（ラ・ベットラ・ダ・オチアイ　オーナーシェフ

落合さん:　

おかげさまで銀座の「ラ・ベットラ」は人気店となり、これまでも海外出店のお話はたくさんいただきました。でもね、いつも「ハイハイ」と笑って断っていたんですよ。お店を開くからにはお客様にご満足いただけないと。国内だけで手一杯でとても海外なんて手が回らないというのが、正直なところでした。でも今回は実務を担ってくれる現地のパートナーがいて、運営は任せてくれと言う。「とにかく一度現場を見てくれ」と言われて、場所もホテル内で悪くなかった。それならやってみようかと決意しました。東京では料理長がしっかりしてくれて、私が厨房に入ることはもうほとんどないのですが、ハワイに来た時は鍋を振ることもありますよ。やっぱり料理を作るのは好きなんですよね。

　今回の出店で思い出したのですが、実はハワイとは不思議な縁があるんです。私には恩人がいます。そもそも高校をやめる口実くらいにしか考えていなかった料理という仕事にここまでのめり込めたのは、「トップス」や「ざくろ」のオーナーだった桂洋次郎社長のおかげです。「金は出すから修業してこい」とフランスやイタリアに私を送ってくれました。日本に戻り「本場イタリア料理を再現しよう」と意気込みますが、当時はパスタという言葉もあまり一般的ではなかった時代。アルデンテのパスタを出すと「もっとちゃんと茹でろ」と苦情がきた（笑い）。そんな中でも、桂社長は「本場にこだわれ。アルデンテを貫きとおせ」と激励してくださった。それが現在につながっています。

　その桂社長が実は1970年代にハワイでレストランを経営していたんです。このお店は結局数年で撤退してしまうのですが、海外に出店する困難さなどはよく話に聞いていました。その頃は完全に他人事のように聞いていましたけど、思えば今回のハワイ出店は恩人の弔い合戦なのかもしれませんね。　

　

「毎日食べても飽きない料理」が原点。

　ハワイには1995年に初めて来て、その後は家族と毎年のように訪れています。ハワイは私が修業していたイタリアと似ていますね。とくに南のシチリアとかナポリと雰囲気が近い。人の明るさも共通しています。短期の滞在でもほっとリラックスできる。素晴らしい場所ですよね。

　ハワイに滞在する時は、基本的には何もしません。ホテルでぼーっと過ごして、海にもあまり行かないな。家族と一緒なら買い物に付き合ったり。実は食事にもあまりこだわらないんですよ。フードコートや「パンダエキスプレス」みたいなチェーン店にもよく行きます。気を使わず頭も使わず、手軽なお店に行っちゃう。もちろん自分がハワイで飲食ビジネスに関わるなんて思ってもみませんでした。

でもやるからには、お客様に喜んでもらいたい。イタリア料理の良さは、毎日食べても飽きないところ。イタリア人はよく食べ、よく酒を飲み、よく笑っている。私の原点はそこにあります。毎日食べても飽きない料理を作り、お客様に喜んでもらう。ハワイのお店でもそれが私の基本です。レストランは最高のパワースポットだと思っています。人々が幾度も足を運び、色んな人が集う。美味しい料理で笑顔が生まれ、人生を楽しんでもらう。そんな場所がハワイに創れればと思っています。今後の夢？実はね、私の夢は秘密なんです。夢って、叶える前が一番楽しい。ずっとそんな状態でいたいんですよ。毎朝、目覚めた時が一番幸せ。今日も生きてるぜってね。ハワイの目覚めも最高です。そんな毎日がずっと過ごせたら、それで十分じゃないですかね。そう思っています。

ラ・ベットラ・ワイキキ
電話番号:808-921-6190　
住所:2490 Kalakaua Ave（アロヒラニ・リゾート・ワイキキ・ビーチ　1階）
営業時間:　17:00～22:00　
休み:　無休
公式サイト

www.la-bettola.co.jp

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