「いつかは日本へ帰るかもしれない。」 アメリカで暮らしている在住日本人の多くが、一度は考えるテーマだ。日本へ本帰国するのか、アメリカに残るのか。それとも、両国を行き来する生活を続けるのか。医療費や生活費だけでなく、不動産、金融資産、税金、相続、家族との距離まで考える必要がある。
そこで注目されているのが、ハワイを拠点として日本とアメリカを行き来しながら、本帰国へ段階的な準備をすすめるというスタイルだ。
今回は、シミズ・ゲートウェイズ代表取締役社長の富田千賀子さんと、JATAS代表・公認会計士の田中大輝先生による「アメリカ在住日本人が日本帰国の前に知っておきたい”住まいと資産の移し方・残し方”」についての対談をお送りする。
住まいと税務、それぞれの専門家の視点から見えてくる、人生後半をより豊かにするための選択肢とは―。
日本帰国を考えるアメリカ在住日本人が増えている
日本へ帰る前の「中間拠点」としてのハワイ
富田さん:
最近、アメリカで長く暮らしてきた日本人の方から、「日本に帰国しようかと思っている」というご相談が増えてきました。
日本は円安だし、医療費も安いし、ということを理由に挙げられる方が多いですね。特にニューヨークやカリフォルニアなどで米国本土で長くお仕事をされてきた方が、リタイア後、日本に拠点を移すことを検討されるケースが多いですね。
田中先生:
私のところでもご相談が増えています。
富田さん:
私は、いきなりアメリカのすべてを引き払って、最初から完全に本帰国するより、小さくてもよいので、アメリカに拠点を残しておき、日米を行き来するスタイルがよいのではと考えています。
例えば、ニューヨークに住み続ける必要はなくなったけれど、まだアメリカとの関係は残しておきたい。一方で、日本にも頻繁に帰りたい。そうした方にとって、ハワイはちょうどよい場所です。
日本との距離が近く、日本語が通じるサービスも多いため、ニューヨークやカリフォルニアに住んできた方にとっては「同じアメリカでありながら、ぐっと日本に近い生活ができる」というメリットがあります。

田中先生:
税務の面からも、その形はおすすめですね。
本帰国して、アメリカ非居住者になることを選ぶと、不動産のみならず、税金、金融口座、保険などファイナンス関連にもさまざまな影響が出てくるため、準備期間が必要なのです。その点、ハワイならばこれまで築いてきた生活基盤や資産を維持しやすく、アメリカ居住者のうちに使える税務的な対策を取れる利点があります。
そういう観点から、私は「本帰国をするなら準備は数年単位で行うこと」をアドバイスすることが多いです。
富田さん:
日本へ帰った後に「やはりアメリカのほうが良かった」となる方も意外と多いのです。アメリカ人の配偶者と日本に移住したものの、相手が日本の生活になじめなかったという話も聞きます。
すべてを処分して完全に帰国してしまうと、再びアメリカへ戻る際の負担が大きくなります。そのリスクヘッジとして、ハワイにコンドミニアムをキープしていれば、アメリカでの足がかりを残せます。
また、ハワイは日本とアメリカメインランドの中間地点、他のご家族と集合してバケーションを過ごす場所としてもぴったりです。この地理的なメリットがハワイ不動産ならではの価値だと思います。
日本へ戻る前に確認したい税務上の問題
富田さん:
日本への本帰国を考える場合、先生は数年単位で準備を進めることをアドバイスしているとおっしゃいましたが、具体的にはどんなことに留意すべきなのでしょうか?
田中先生:
まず考えるべきなのは、それぞれの国での所得税の違いです。
たとえば所得税は、ニューヨーク州とハワイ州で、それぞれ最高でも14%と11%と、それほど大きな差がありません。なので、税効率の観点から州を移動するという人は少ないんです。
しかし日本では所得税と住民税合算の最高税率が55%となります。日本居住者となるとアメリカのソーシャルセキュリティや、投資の収入にも所得税がかかります。これらの所得を合わせた額が1,800万円を超えるとタックスブラケット(税率区分)が50%を超えてくるので、アメリカにお住まいでいらっしゃる方にとっては同じ収入でも手取りが減ってしまうことも少なくありません。
日本でのご自身の納税義務をきちんと調べることは重要ですね。
富田さん:
リタイア後の収入が1,800万円というのは、アメリカに長く住んでいた方なら当てはまる方も多いではないでしょうか。本帰国というと円安や生活費、医療費の安さというメリットばかりが注目されますが、それだけではないのですね。
田中先生:
おっしゃるとおりです。
また、相続税・贈与税も重要なポイントです。アメリカは遺産税と贈与税の障害控除額が15Mドル(一人当たり)と大きく、よほどの資産家出ない限り対象となりません。しかし日本の相続税は基礎控除が3,600万円(法定相続人が1名の場合)なので、相続税の対象に入る可能性が高くなります。
アメリカで長く暮らしてきた方は、不動産だけでなく、銀行預金、株式、IRA、401K、生命保険など、さまざまな資産の価値が上がっています。 ”自分は富裕層でないから関係ない”と思っていた方も、日本では違います。日本へ本帰国してから相続対策を考えるのでは、選択肢が限られてしまうため、ご家族に残したい方はアメリカにいるうちから考えておきたいものです。
グリーンカード放棄とアメリカ出国税
富田さん:
日本へ完全に帰国にともなってグリーンカードを放棄する際にかかる「アメリカ出国税」が話題になっています。
田中先生:
8年以上グリーンカードを保有した方が放棄する際には、純資産額、過去の所得税額、過去数年間の税務申告状況などによって、出国税の対象になる可能性があります。特に純資産が約200万ドルを超えるかどうかは、重要な判断基準の一つです。
出国税の対象になると、原則としてグリーンカード放棄の前日に全世界の資産を時価で売却したものとみなされ、含み益のうち一定の控除額を超える部分に課税されます。
富田さん:
たとえ、本当に不動産や株を売却をしていなくても「含み益」に対して課されるのですね。
田中先生:
この200万ドルには、預金や株式だけでなく、不動産を含む全世界の資産を加算します。長年所有してきた住宅が値上がりし、気づかないうちに基準を超えていることもあります。
では、200万ドルを下回るように、出国直前に家族に多額の財産を贈与してしまえばよいのでは?と考える方もいらっしゃると思いますが、それはリスクがあります。贈与契約や申告などの手続きが必要だったり、出国直前の贈与そのものが「出国税逃れ」として問題視される可能性もあるからです。
富田さん:
実際にはどのくらいの期間をかけて段階的な準備をするものですか?
田中先生:
資産状況によりますが、少なくとも3年から5年は見てください、とお伝えしていますね。
日米2拠点生活をする人は、税務上の「居住地」に注意
富田さん:
ハワイと日本の両方に家を持ち、行き来する場の注意点はどうでしょうか。
田中先生:
その場合は、税務上、どちらの国の居住者と判断されるかに注意が必要です。
所得税に関する居住者・非居住者の判定は、アメリカでは主に米国籍・グリーンカードの有無や滞在日数が決められています。一方、日本では主に生活実態を重視してされます。
日本の所得税と相続税では「何日以上住めば課税対象となる」と単純に決まるわけではありません。本人が生活の本拠をどこに置いていたか、家族がどこに住んでいるか、住宅をどこに所有しているか、どちらの国との関係が強いかなどを総合的に判断されます。
アメリカに住んでいるつもりでも、日本に家を持ち、長期間滞在していれば、日本の居住者と判断される可能性があります。どこに主に住むのか、不動産を売るのか残すのか、グリーンカードを維持するのか放棄するのかなどで、税制上、気を付けるべきポイント、取るべき戦略が変わるのです。
富田さん:
二拠点生活をするにしても、本帰国をするにしても、住まい、税務、資産などをそれぞれの国の観点から、きちんと調べて準備しておく必要があるんですね。
田中先生:
ハワイは、アメリカで築いてきた資産や生活を手放さず、日本での新しい暮らしへ移行するための中間地点として、よいシナリオだと思います。
富田さん:
私が、ハワイをおすすめするもう一つの理由として、ここにはリタイア後のライフスタイルにマッチした、さまざまなタイプの不動産があることです。
一軒家やコンドミニアムだけでなく、例えば、ホテルコンドミニアムのように、ご自身たちが使わない時にはバケーションレンタルで貸し出せる物件が見つかるのもハワイの特長です。二拠点生活の間にも家賃収入で管理費を賄い、インカムゲインを得ることができます。
またリタイア後は、ダウンサイズした暮らしを希望する方も多いですよね。ハワイには車なしでも、徒歩圏内だけで快適に暮らせる街づくりが進み、人気となっています。ワイキキや、アラモアナ、カカアコなど、日系スーパーや日本食レストランの充実には目覚ましいものがあります。
メインランドの大きな家を売却し、ハワイで日本的な暮らしを満喫できる小さなアメリカの拠点を残す。そして日本に通いながら、自分に合う場所をゆっくり探す。 弊社であれば、日本側での不動産探しも可能なので、アメリカ・日本どちらでも、売却から買い替えまでをトータルでお任せいただけます。
それぞれの方が満足のいく帰国のために、段階的に進めるお手伝いができればと思います。
田中先生:
あまり調べずに、本帰国してしまってからでは、取り返しがつかないこともあります。
ぜひ、早めのご相談とご準備に、我々のようなプロフェッショナルを頼っていただきたいですね。
富田さん:
田中先生、本日はありがとうございました。
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