去る2019年6月5日、リストサザビーズ・インターナショナルリアルティ社が、日本から市川俊治氏を招き(海外年金相談センター)「日米の年金、国籍選択、老後の日本帰国」をテーマとした講演会を開催した。会場の「ワイアラエカントリークラブ」のクラブハウスには、将来の日本帰国やデュアルライフを検討する約50名のハワイ在住の参加者が集まった。
略歴 : 日本企業に38年勤務(内ニューヨーク・シカゴ駐在8年間)後、外務省改革の一環として始まった領事シニアボランティア制度の第1期生として2003年からNY総領事館に3年間勤務。その後2009年からサンフランシスコ総領事館に3年間勤務。帰国後、「海外年金相談センター」を設立し、民と官の経験と知識を基に「年金・国籍・老後の日本帰国」の相談をE-Mail、電話等で受けている。
市川先生のお話の中から、重要と思われるエッセンスをまとめてお届けする。
日本と米国で支払った年金の受け取りについて
●2017年の年金支給ルールの改定により、他国と比較しても厳しかった日本の年金受給資格の保険料納付期間が、25年から10年へと大幅に短縮されたこと。(遺族年金・障害年金の受給要件はこれまで通り25年以上)
●日本と米国の間には2005年に日米社会保障協定が結ばれ、両国で支払った保健期間・保険料を通算して受給できる、ということ。この協定により保険料の掛け捨てや、二重払いなど加入者の不利益が回避できる。
●日米の年金制度はそれぞれ別だが、需給条件を満たせば両国からそれぞれの年金を受給できる。
●日米の年金所得は、日米租税条約により住んでいる国に納税となる。
●年金は世界中のどこにでも送金してもらえる。
●将来の備えとして、自分の年金情報を確認しておくことは大切。日本年金機構ホームページの「ねんきんネット」から、自分の年金予想額、支払い期間などを確認できる。
年金支払い記録、将来見込み額などが分かる。
ねんきんネット
●東京の千代田年金事務所は海外在住者向け窓口もあり、予約も受け付けていて、おすすめ。
【日米の年金に悩む方に朗報です!】
市川先生は、年金の受給資格があるか、年金額はどれほどか、支給開始はいつからかなどをボランティアで調査してくださるとのこと。また、年金申請手続き代行も対応しておられます。
アメリカ国籍を取得した日本人の老後の日本帰国・国籍選択について
●法律では、日本は二重国籍を認めておらず、アメリカでは認めている。
●日本国籍以外の国籍を取得した場合、日本の国籍法上、国籍を喪失し、戸籍も除籍となり、パスポートも使えなくなる、というのが決まり。本来は、3か月以内に「国籍喪失届」を本籍地の役所または日本大使館や領事館に提出しなくてはならない。しかし申請をしなくても罰則はない。
●米国籍保持者の日本への長期帰国の場合には、在留資格認定書を、日本の居住予定地を管轄する地方入国管理局に申請する。
●元日本人の場合、帰化申請手続きを行うと、1-2年でとれる。日本以外の国籍の人は5年の在留期間が必要となる。
そのほか、米国市民権と、グリーンカード+日本国籍の場合のメリットデメリット、また米国市民権の放棄の仕方や、国籍による日米の遺産相続ルールなどに多岐にわたるお話をいただいた。
リストサザビーズ・インターナショナルリアルティ社のお客様サポートサービスについて
さて、今回、「日米の年金、国籍選択、老後の日本帰国」講演会を開催したリストサザビーズ社だが、なぜ不動産会社であるリストサザビーズ社がこういったテーマでの講演会を開くに至ったのか。
同社のハワイオフィス、クライアントリレーションエグゼクティブの三枝肇幸氏からは、下記のコメントをいただいた。
リストサザビーズは日本・横浜を本社に日本国内9拠点、また海外はハワイ2拠点、香港、シンガポール、フィリピン、タイと、アジア各地にオフィスを展開しています。グローバル社会における皆様のご不便・お悩みの解消シームレスにサポートできる不動産会社として、今回市川先生をお招きして、このような講演会を開催しました。
日本のみならず、海外主要マーケットでのネットワークを生かし、米国税務申告のサポートや、日本にお戻りになった際のお住まい探し、また日本に残してしまったご資産を売却されたいなどといった、お困りごとをなんでも受けられる体制を整えています。
日本では、一社で勤め上げたり、国内だけで一生を終わる人の比率は下がり、ライフステージごとに住む場所や働く場所を選ぶ人も増えてくるであろう。
かたやアメリカでは、トランプ政権になってからビザの申請や更新が長期化・複雑化するなど、海外に出て移民として生きる道も、また流動的なものとなってきている。
市川先生や、リストサザビーズインターナショナルリアルティ社のように、最新情報のハブとなるプロフェッショナルたちとのリレーションを持ち、「いざ」というときのために、情報のアップデートをしておいて損はない。