ハワイ州で2年間の仮想通貨イニシアティブが始動

ハワイ州で2年間の仮想通貨イニシアティブが始動

更新日 2020.09.24

ハワイ州で2年の仮想通貨テストプログラムがスタート 


ハワイ州で「デジタルカレンシー・イノベーション・ラボ」という仮想通貨導入の2年間の取り組みがスタートした。

これは、仮想通貨の事業者12社に対し、2年間限定でハワイ州内での事業運営を許可するという試験的なプログラムである。

このプログラムを通じて、ハワイ州住民もビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ZCashなどの仮想通貨の購入や取引が可能になった。
 

このイニシアティブは、ハワイ州の商務消費者局(DCCA)金融局(DFI)、またハワイ技術開発コーポレーション(HTDC)の協働により発足したものである。

イニシアティブのキーパーソンである商務消費者局(DCCA)の金融監督部コミッショナー、アイリス・イケダさんと、同イニシアティブに参加する企業の一社であるBitFlyerUSAのCOOであるジョエル・エドガートンさんにお話を伺った。 

ハワイ金融監督局 コミッショナー
 Iris Ikeda氏
BitFlyer USA COO 
Joel Edgerton氏

DCCA イケダさん:
今回のイニシアティブには19社の応募があり、その中から12社が選ばれました。選出された企業はすべて仮想通貨の売買や送金をすでに他の州で行っている実績のある企業であり、コンサルティング会社や創業直後の会社などは選ばれていません。

ハワイ州の法律の中で定義する一般的な金融決済の中には、仮想通貨は含まれていませんでした。まずはこの12社に、ハワイでの仮想通貨ビジネスを2年間にわたり行ってもらい、その中でどういった結果や影響が生まれるか。それを踏まえて、2年後にハワイ州としての法的な整備などを含めて検証することになります。



 

ところで、仮想通貨といえば日本ではいくつかの事件も起きたため、怖いものというイメージを持っている人も多いかもしれない。

今回のイニシアティブに、日本に本社がある企業として唯一参加しているBitFlyer社。そのアメリカ法人COOのエドガートンさんはこのように話す。
 

BitFlyer エドガートンさん:

ハワイ州の金融の法律はアメリカ国内でもかなり厳しいものなのですが、今回のイニシアティブに参加できて光栄です。

BitFlyer本社のある日本は仮想通貨取引に対しては、過去に起きた事件の再発を防ぐべく、世界的にもかなり法整備の進んでいる「デジタルカレンシー応援国」です。そこで培ってきた安全性の高いワールドクラスの仮想通貨取引をハワイのみなさんにもぜひ経験いただきたいと思います。

今までの通貨は各国の中央銀行が発行し、管理してきたものです。既存の金融の考え方からすると「国が発行していない通貨は信用に足るのか?」という疑問が湧くと思います。しかし一方で、国が発行・管理する通貨であるということは、ある日突然、国の決定で通貨の切り下げが起こる、引き出し額が制限されるなど、国や政治やあり方で通貨価値が大きく左右されるものでもあります。


仮想通貨は、取引のログが書き換えのできないブロックチェーン暗号技術を元にオンライン上で共有されていくため、国や金融機関の管理に依存しない、透明性の高い取引を可能にしました。

現在、BitFlyer社はハワイ州住民に対して、口座開設キャンペーンを行っているのでご興味のある方はチェックしていただきたい。

仮想通貨決済の可能性


日本では、家電量販のビックカメラや、クラウドファンディングサイトのキャンプファイヤなど、仮想通貨での支払いを受け付ける店舗やサイトなどが増えてきている。

仮想通貨の相場は毎日変わるが、自分が持っている仮想通貨を両替することなく、国をまたいだ決済であってもそのままで利用することができるというメリットがある。

ハワイでも、仮想通貨を実際に使える実店舗やWEBサイトが増えるのだろうか?

DCCA イケダさん:

たとえば、サンフランシスコの観光地「フィッシャーマンズ・ワーフ」では、シーフードを仮想通貨で購入できるお店が実際に出来ています。

多くの国からのビジターがある場所ほど両替をしなくて済むなど、仮想通貨の利便性は高いと思います。ただ、ハワイでどのくらい実際に店舗や企業が仮想通貨決済を導入するかは未知数です。州としてそれを積極的に後押しする策は今のところ考えておらず、まずは市場の動きに任せるスタンスです。

しかし、ハワイでもビットコインで支払いを受け付けるホテルが出始めるなど、これを機に利用が広まっていく可能性はある。

カウアイショアホテル ビットコインでの予約支払い受付を開始




それにしても、シーフードの購入程度であれば、それほど大きな差は生まないが、不動産など額の大きな決済に仮想通貨が導入されるようなことになれば、インパクトが違ってくる。

例えば、円資産を持っている人が、ドル建てでハワイ不動産を購入する場合、まず円からドルへの換金手数料(一般的に1ドルにつき1円)また日本の銀行からアメリカの銀行への海外送金手数料(総金額の0.05%程度)などがかかる。100万ドル相当の換金と送金の手数料だけでざっと150万ほどかかっているのが現状だ。


これが自分が持っている仮想通貨をそのまま、海外での支払いに充てられるとしたら? これらの手数料はぐっと削減できる。

BitFlyer エドガートンさん:

仮想通貨の利点はいろいろありますが、海外送金にまつわる手数料とリスクが軽減できることは大きなメリットです。
仮想通貨の海外送金手数料は数円程度です。しかも、銀行経由だと送金に数日かかっていたのが、仮想通貨であれば数分で着金するなど、時間的なロスもなくなります。

BitFlyer 海外送金について



ここまで大きな額の売買に、仮想通貨が使われる体制が一足飛びに整うことはないと思うが、今後、仮想通貨を利用する人が増えてくれば、可能性としては当然ある。

 

ブロックチェーンでの行政やビジネスサービスの可能性


一方で、仮想通貨のベースになっているブロックチェーン技術そのものは、決済以外にも色々なところで利用されており、最も有名なのは行政の仕組みそのものをブロックチェーンベースで作っているエストニアだろう。

Eレジデンシー(国籍の発行)、納税などもすべてブロックチェーンベース、オンラインベースで行っているとのことで、この数年日本でも注目を集めている。

エストニアが電子国家に生まれ変わった本当の理由
 

ハワイ州でも、ブロックチェーン技術を行政に取り込むような構想があるのだろうか?

DCCA イケダさん:

基本的にブロックチェーンを用いることにより透明性が高まることは非常によいこと
と考えています。

例えば、過去の医療記録をブロックチェーンベースで保管しておくことで、病院やエリアを越えて一元管理・共有できるなど、金融取引以外にも発展性のある技術です。

一方で、州にとっても、住民にとっても未知な技術であることも事実ですので、利用者保護は最優先です。テクノロジーの導入推進と、安心して使える法整備とのバランスを取ることがまずは金融局としてのミッションだと思っています。

BitFlyer エドガートンさん:

ブロックチェーン技術というのは、基本的にすべてのサプライチェーンに置き換わることができ
、透明性を高めることができると考えています。

例えば食品のサプライチェーンの場合。生産者や生産地、収穫した時間、出荷した時間、販売された時間といったものもすべてあとから上書き出来ないオンライン上の台帳に記録されていく形になります。 

同様に、行政のプロセスにおいても、例えば運転免許証の発行管理をブロックチェーンで行い、個人と運転免許証を紐付けることで、選挙をオンラインで実施することなども技術的には可能です。

エストニアは人口130万人、ハワイは人口140万人。いきなり大掛かりな仕組みの導入を全米レベルで行うにはリスクがありますが、ハワイはこういった実証実験のテスト地としても最適なサイズではないしょうか?

他にも、不動産取引の際に現状ではエスクローを経由で行っている、名義や抵当権調査なども、ブロックチェーンベースでログを取っておけば、透明性を高めることができる。知らないうちに抵当権が別の人についていた!といった事故もなくなる。



パンデミック後、「脱・観光業依存」の議論があちこちで起きたハワイだが、産業構造をガラリと変える策の前に、例えばどこよりも仮想通貨の受け入れが進んだ観光地になる、といった変革の方向性もある。

ビーチの美しさといった変わることのない「オールドハワイ」の資産を活かしながら、パンデミック後の「ニューハワイ」の価値をどのように作っていくのか。
ヨーロッパの小国・エストニアのように、「アメリカの小州・ハワイ」が生まれ変わっていくとしたら、ブロックチェーンは必ず必要になるはずだ。

ここからの2年間で、ハワイのビジネスや行政に、どのようにブロックチェーンが浸透していくのか、または、いかないのか。2年後が楽しみなイニシアティブのスタートだ。

 

【今回のイニシアティブに参加している12社の一覧】
Apex CryptobitFlyer USABlockFi TradingCEX.IOCloud NaluCoinmeErisXFlexa NetworkGemini Trust CompanyNovi FinancialRiver Financial 、Robinhood Crypto

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