シリーズ!ハワイ不動産、相続トラブル事例と回避策!【ケース2】

更新日 2021.05.22

米国不動産を個人所有、または共同所有する方が亡くなった場合、その不動産の名義変更(相続)を行うには「プロベート」という裁判所の監視下で行われる遺産分割・相続手続きが必要となる。その手続きは、完了するまでに数年かかるという。その為、相続対策においてプロベート回避策はとても重要な要素となっている。

ここでは、エステートプラン、リビングトラスト、資産形成、日米間の相続対策などを専門とし、アメリカで17年の実績をもつ佐野郁子弁護士に「実際にあった相続トラブル事例と回避策」をシリーズとし、複数回にわたり解説してもらう。

〉〉アメリカの不動産所有形態、相続ルールのまとめはこちらから

不動産の所有名義が問題となり、相続時に面倒な手続きが必要になったトラブル事例


 

家族構成:母、娘
テナンシー・イン・コモン(Tenancy in Common)という形態でハワイの不動産を購入し、娘はハワイ不動産に居住している。
テナンシー・イン・コモン
*豆知識
2人以上の個人もしくは法人が不動産を所有する形態で、各自が個別に権利を有する。所有割合は均等でなくてもよいのが特徴。 各自の持分に対して自由に処分をすることができ、他の共同所有者の承諾なしに売却や抵当に入れることが可能。

経緯と発生したトラブル

母と娘がハワイの不動産物件をテナンシー・イン・コモン(Tenancy in Common)という形態で購入し、娘のみそのハワイの物件に居住。

母の生前に、母の所有権を娘名義に変更しようと考えたが、税理士からそのようにすると「贈与税の課税対象になる」とアドバイスを受け、断念していた。その後、母が亡くなり、唯一の法定相続人である娘が母の持分を相続することになった。

法定相続人は娘のみである為、争いは生じない。ただ、米国で不動産や金融資産を相続するには、原則として裁判所の監視下で行われる「プロベート(Probate)」という遺産分割手続きが必要となる。

このケースでもプロベートを経てからでなければ母から娘への相続はできず、結果、面倒な手続きと時間を要することになってしまった。 

 

ハワイ州のプロベート
*豆知識
ハワイ州では、亡くなった方の資産総額が10万ドル以上ある場合、または不動産を所有している場合には、遺言書の有無に関わらず、原則としてプロベートを経ないと相続ができない。 ハワイ州には3種類のプロベートがあり、本件のように遺族間で争いがなく、債権者との問題もない場合には、そのうちの1つのInformal Probateという簡易プロベートを利用することができる。 それでも、プロベート中は遺産が凍結され、最終的な遺産分割まで1年以上かかり、その間に裁判所や弁護士費用のほか、不動産の管理費や固定資産税などかかるため、遺産が目減りすることに。そしてこの手続きでは個人情報や家族構成、遺産目録などのプライバシーが守られず、公にされる。

どのような回避策があったのか

それでは、今回のようなケースの場合、どのような回避策があったのか?

母の生前に3つ対策のいずれかを検討することで回避することができた。 

【1つ目】
母の生前に所有形態をジョイント・テナンシー(Joint Tenancy)に変更する。

→各自の占有権の割合が変わらなければ、贈与税の心配はない。しかしこの場合は、娘が相続したあとに娘の単独所有になるので注意が必要。

【2つ目】
母と娘それぞれが、各自の占有権に対し、TODD(Transfer on Death Deed)で不動産の「死亡時の受取人」をあらかじめ指定しておく。

→不動産が所在するカウンティの登記所にTODDをきちんと登記しておくことで、プロベートなしで不動産を相続することが可能になる。ハワイではTODDが活用されることが多々あるが、TODDが利用できる州は限られている。

【3つ目】
母と娘それぞれが各自のリビングトラスト(Revocable Inter Vivos Trust、通称「Living Trust」)を設立し、トラスト名義同士でテナンシー・イン・コモン(共有不動産権)で所有。

→各自のリビングトラストに相続人を指定することにより、プロベートなしで相続人への名義変更が可能。


 

不動産購入時の名義選びがとても重要

◎佐野弁護士からのワンポイントアドバイス◎

最初から母と娘の共同名義にせず、ハワイの不動産を法人名義またはトラスト名義で所有することが賢明といえるでしょう。

母のトラスト名義で不動産を所有する場合、不動産は母の所有財産とみなされますが、娘をトラスティ(管財人)とすることで、母の存命中の不動産管理や売却は娘が代行できます。さらに、トラストでハワイ不動産の相続人を指定することにより、母の死後はプロベートの必要なく、娘が自分名義に変更できます。この場合、登記所に母の死亡証明書と名義変更を登記するだけの簡単な手続きで済みます。

ハワイで不動産を所有している方や、これから購入を検討される方は、どのような所有形態が最適であるか、アメリカの相続に詳しい専門家にご相談されることをおすすめします。


〉〉関連する記事はこちらから

〉ハワイ不動産、相続トラブル事例と回避策!ケース1

〉ハワイ不動産、相続トラブル事例と回避策!ケース3

〉ハワイ不動産、相続トラブル事例と回避策!ケース4

オンラインセミナー開催のお知らせ(終了しました)
6月11日(金)午後3時(ハワイ時間)
6月12日(土)午前10時(日本時間)
オンラインセミナー開催
米国不動産の相続ルールを徹底的に解説!』

相続を踏まえた米国不動産の所有形態、事故や病気で米国不動産の管理ができなくなった時の事前対策、アメリカ特有の相続手続き「プロベート」とその回避方法などわかりやすく解説。
お申し込みは以下のリンクまたはQRコードから

https://bit.ly/33HPjtp

 

「弁護士法人佐野&アソシエーツ」のYouTube チャンネル是非ご視聴ください!
 

簡単解説!『アメリカの相続』
こちらから視聴ください。

 

関連キーワード

各カテゴリーのお知らせを見る

不動産会社・
エージェントにお問合せ
閉じる