今日はハワイ不動産の売却タイミングを”税率だけ”にフォーカスして考えるべきではないというお話をします。
2022年から米国のインフレが進んだ結果ハワイ不動産はどんどん値上がりし、売りに出したらすぐにオファーが来る状態が続きました。それに加えて32年ぶりに1ドル151.95円をつけるなど為替変動も激しく「売却するなら今だ」と考えた人も多かったと思います。
しかし、保有期間が5年以内だと短期譲渡となり、「税金が高いから5年を超えるまで待った方がいい」と税理士からストップされ、売りのタイミングを逃したと感じている方もいらっしゃるのではないかと思います。
譲渡所得の計算上でいう長期保有の5年とは「購入してから売却するまでの期間」で判定するのではなく「売却した年の1月1日現在」で5年を超えるかどうか判定するため、場合によっては6年近く保有しなければ該当しないケースもあります。このことから、2017年以前に購入された方はこれから長期譲渡に該当することになるといえます。
しかし、売却判断で重要なのは税金よりもむしろ物件価額の動向と為替のタイミングです(為替も加味しなければならないのが日本の不動産との決定的な違い)。
5年経つと確かに税率は下がりますが、税金を下げることよりも手取りを増やすことが本来の目的だと考えると「物件価額が上げモードか下げモードか」、「為替は円安モードか円高モードか」が重要となり、5年にこだわるのは意味がないことになってしまいます。
下記の例は長期譲渡にこだわって3か月待っている間に物件価額が下がり、それに加えて円高にブレため300万円ほど手取りが減ってしまったケースです(3か月分の減価償却は省略して計算しています)。
売却価額1ドル151.95円で
物件価格400,000ドル=60,780,000円
取得費(取得価額-減価償却)が40,000,000円とすると、
譲渡所得=20,780,000円
所得税・住民税(税率)39.63%=8,235,100円
手取り額 60,780,000-8235,100=52,544,900円
売却価額132.7円で
物件価格390,000ドル=51,753,000円
取得費(取得価額-減価償却)が40,000,000円とすると
譲渡所得=11,753,000円
所得税・住民税(税率20.315%)=2,387,600円
手取り額 51,753,000円-2,387,600円=49,365,400円
「不動産は上がるのか下がるのか?「為替は円安になるのか円高になるのか」は神のみぞ知るところですが、売却するかどうかの判断ははさらに「日本に戻してほぼゼロ金利で運用するのか?」「長期的に円だけでなくドルにも分散投資し続けるのか?」など売却後のお金(税引き後)をどう運用するかも考えて判断しなければなりません。
減価償却節税ブームに乗って購入したハワイ不動産が初めてのドル投資という方も多いと思います。その人たちはいま税務だけでなくこれからの資産形成に重きを置いて出口戦略を検討する時期なのかもしれません。
新潟県出身。日本とハワイの税理士、会計士ネッ トワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。ホノルル日本人商工会議所所属。著書『会社の節税するな らこの一冊』(自由国民社) 『残念な相続』 (日経 BP社)、『熱血税理士がずばり指摘!社長!それや めませんか』(日経BP社)