実録!ハワイのロックダウンVol.8  ホノルルは再び全面ロックダウンへ逆戻り

実録!ハワイのロックダウンVol.8  ホノルルは再び全面ロックダウンへ逆戻り

更新日 2020.08.27

オアフ島では8月27日から9月9日までの2週間、3月~4月に行っていたような全面ロックダウン状態に逆戻りしている。今、ホノルルで何が起こっているのか?「実録!ハワイのロックダウンVol.8」。

目次

8月27日からホノルルは再びロックダウンへ

ホノルル市(オアフ島)は8月27日から9月9日までの2週間、再び本格的なロックダウンに入ることとなった。

これは3月に行われた全面ロックダウン、Stay-at-home, work-from-home order (外出禁止・自宅勤務命令)とほぼ同内容となる。その後、段階的に経済を再開させてきたが、再び3月の状態へのフェイズを逆戻りさせることになり、落胆の声が広がった。
 

今回の命令の概要は以下のようになっている。

  • エッセンシャルワーク(食品店、医療、チャイルドケア、シニアケア、教育、建設、水道、交通、輸送、宗教など)は引き続き継続可能
  • それ以外の業務(小売店、理美容やネイル、マッサージ、ジムなど)は営業停止
  • レストランは店内飲食は禁止となり、持ち帰りとデリバリーのみの営業とする
  • 公立学校は全てオンライン授業に。私立学校もできるだけオンライン授業を推奨。
  • 食料品の買い出しや医薬品や薬の入手、医療を受けるための外出などの必要なサービスのための外出はOK
  • 基本は自宅勤務
後述するが、短期間にコロコロと変わる行政命令に、オアフ島内の経済や市民生活は、振り回されているというのが、率直なところだ。

ハワイでの感染状況

さて、今回の再ロックダウンだが、背景として7月後半以降の連日3桁超えの感染拡大がある。下のグラフのように、7月初旬より感染者数が二桁台となり、8月から一日の感染者数は連日三桁超えで推移している。

画像引用元:https://www.facebook.com/MayorKirk/
 

再ロックダウンする理由は「病床数不足」

なぜホノルルは再びロックダウンという強行措置に戻らざるを得ないのか?

それは、ハワイの医療機関の病床数不足である。そもそも、ハワイには大きな病院が少ないが、そのハワイ州内のICU病床の使用率は現在9割に達している。

8月26日現在、新型コロナ感染者総数は7260。その中で現在も治療中のケースは4921件、入院が必要な感染者は444人に上っている。救急車の利用や急患の受付にも制限がかかっている状況に陥っている。最も大きな病院であるクイーンズ・メディカルセンターでの病床利用率も9割を超えている状態だ。

では、一時的にでも病床を増やすなどの方策は取れないのか?という意見ももちろん出ているのだが、ハワイはコロナ前から恒常的な医師不足、看護師不足となっている。

州政府は、連邦政府にも助けを求め、看護師資格を取ったばかりの新人でも採用するなど求人も強化して行っているという。

しかし、3月のロックダウンから半年近く島を閉鎖し時間稼ぎをしたにも関わらず、この間にオアフ島の医療キャパシティの拡充が進んだ、という話はほぼ聞かない。

再びロックダウン状態に戻すという判断は、果たしてどこまで効果を見込めるのか。市民の不満は高まっている。

ハワイでの感染拡大の背景

最初の3月のロックダウン後、5月には明らかにロックダウン効果が出た。その後、どのように感染拡大は起きたのか、振り返ってみよう。

5月半ばには陽性者ゼロからひと桁台の日が続くなど、住民の間でも安心感が広がった。そんな中、5月16日からはビーチや公園も再開され、社会的な集まりも10人までOKなど規制が緩和された
 

その頃は陽性者が出ても経路が確認できるケースが多かった。例えば老人介護施設や病院、特定のバーやジム、葬式、軍基地内、企業の研修会場などでの感染が報道された。 
 

しかし、6月後半あたりから行政や病院サイドからの再三の注意にも関わらず、ソーシャルディスタンスを守らずにマスク非着用でBBQなど大人数で集まる人達が散見された。「気の緩んだ行動」を取る人が明らかに増え、それが今に続く経路不明の市中感染増につながっていると見られる。

ホノルル市のカーク・コードウェル市長は、バーの営業を停止し、更に8月19日から28日間にわたって「アクト・ナウ・ホノルル」と呼ばれる行動規制案(バーの閉鎖、ビーチや公園の閉鎖、集まりは5人以下など)を発動させたばかりであった。

しかし、その結果の検証も待たず、8月27日にはさらに厳しいこの再ロックダウンに踏み切った。またハワイ州の命令と、ホノルル市の命令に矛盾するところもあり、混乱が広がった。対応に追われるビジネスオーナーからは、コロコロ変わる行政命令に不満の声が上がった。
 


ちなみに、3月26日から今に至るまで、ハワイ州外からの渡航者の14日間隔離義務は継続中である。それでも毎日1000ー2000人前後のハワイへの渡航者がホノルル空港に到着している。(ハワイへの着任者や転入者や、帰州者も含む)。これらの渡航者の隔離義務を監視するためのデバイス等はなく、自粛に頼るしかないため、違反者の逮捕も相変わらず出ている。ここは感染源のグレイエリアとなっている。

感染者の年齢や構成など

若年層への広がり

ハワイの新型コロナウイルス陽性者を年齢別に見ると、18才から29才までのヤングアダルト層。続いて多いのが30才から39才までのアダルト層と、活発な世代に広がっている。

ハワイ コロナ
画像引用元:https://health.hawaii.gov/coronavirusdisease2019/

特にヤングアダルト層では感染しても無症状であることも多々あり、無自覚に感染を拡大しているケースが跡を立たない。

 

人種によって感染率に大きな差

そして今ハワイで注目されているのが、人種別での感染率の差である。特にパフィシックアイランダー(ネイティブハワイアンを除くポリネシア系やマイクロネシア系の人々)の感染率が突出して高くなっている。

チャート参照:ホノルルスターアドバタイザー

このチャートは、ハワイ州内の人種別に、人口の比率(水色の棒グラフ)と、全コロナ陽性者のうちにその人種が占める比率(紺色の棒グラフ)で比較したもの。人種は左から、白人、ネイティブハワイアン、パシフィックアイランダー、フィリピン人、日本人、中国人、その他アジア人、黒人、その他となっている。

【ハワイで感染率の高い人種】
●パシフィックアイランダー(左から3番目)はハワイ人口全体の4%しかいないにも関わらず、新型コロナ感染数の比率は30%と突出して高い
●フィリピン人(左から4番目)も、人口比16%に対して感染者数比率は21%と高い

【感染率の低い人種】
●日本人(左から5番目)は人口比15%に対して感染数比率10%と低い
●ネイティブハワイアン(左から2番め)は人口比21%に対して感染数比率12%とさらに低い


パシフィックアイランダーやフィリピン人の感染率の高さには、様々な要因があるが、理由として最も大きいのは文化的習慣と居住環境と言われている。狭い空間に数世代に渡る大家族で住んでいること多く、葬儀にマスク無しで集まるなどの生活習慣が、コミュニティ内・家族間での感染率の高さに繋がっている。

またこの2つのコミュニティの人たちは、介護士、スーパーマーケット店員、バス運転手、配送業者などステイホームができない仕事に従事している人が多いことも関連性が示唆されている。
 

社会問題と感染

更にハワイの社会問題の一つであるホームレスの間でも感染が拡大している。あるホームレスシェルターでは収容者のうち70%が陽性となり、先日はそのシェルターのスタッフが命を落としたという悲しいニュースも入ってきた。

またホノルル刑務所でも受刑者約260人、スタッフ約40名が陽性となるクラスタが発生するなど、密になることが前提の施設も拡大の現場となっている。

 

60000人規模の大量PCR検査実施へ

今回の再ロックダウンに加え、ホノルル市のカーク・コードウェル市長は、連邦政府と州政府の協力の元、オアフ島全体で60000人規模の大量PCR検査実施すると発表した。

これは無症状でも医師の書類なしに無料で受けられるPCR検査で、各地の公園などでドライブスルー形式で行われる。事前登録に必要な情報は名前、生年月日、住所、メールアドレスだけであり、結果はメールアドレスに送られてくるというシステムだ。
 

この大量PCR検査実施に関して、一部の市民からは「今日感染していなくても明日感染するかもしれない」「信憑性があるのか疑問だ」「税金の無駄遣い」などの意見が出ている。その一方で、今後パンデミックが起こりそうな地域を特定し、次のクラスター発生の食い止めにつながる可能性もある。


ハワイ州内の医師からは、これからインフルエンザのシーズンになる事を受けて、インフルエンザと新型コロナウイルスのツインデミックを危惧する声も上がっている。

ハワイ州のイゲ知事は、観光再開(事前陰性検査があれば14日の自己隔離義務免除策)を少なくとも10月1日まで延期すると発表している。それに加えて今回の再ロックダウンと、ハワイ経済はトンネルの出口がまだ見えない。

前述のように、医療キャパシティの引き上げがままならないのに、検査キャパシティだけを拡大しているホノルル市の策がどれほど理に適っているのか?
市民に納得の行く説明はない。

しかし、今回のロックダウンを新型コロナウイルスを再び制御するためのものと信じて、前向きに捉えたい。

 

ハワイのロックダウンのこれまでの経緯が分かる記事はこちらから>>







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