ハワイのロックダウンの概要、振り返り
まず、ハワイがざっくりとどのようにロックダウンに至ったかをおさらいする。
【3月6日】 ハワイで初の感染者が確認。
【3月17日】 ハワイ州イゲ知事より「30日間、ハワイへの渡航を自粛してほしい」という衝撃的な声明を発表。
【3月20日】 レストラン内での飲食サービス提供を禁止する命令が出される。持ち帰りやオンラインデリバリー、ドライブスルーのみの営業可に。
【3月22日】 ホノルル市長より、3月23日~4月30日まで、オアフ島の外出禁止令を発表(Stay-at-home, work-at-home order)が発令。エッセンシャルサービス以外のビジネスが休業へ。
【3月26日】 ハワイへの州外からの到着者(旅行者、また州外からハワイに戻ってきた住民含む)に対して14日間の自己隔離を義務付け開始。事実上のハワイ州の封鎖。ハワイ州全体でも外出禁止令発令、州内の他島への渡航も基本的に禁止。
このように、待ったなしで始まったハワイ州ロックダウンを住民は冷静に受け止め、助け合いの精神で乗り切ろうとしている。
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”ハワイ州封鎖”後のハワイ来訪者数は?
実際、訪問者数はどのくらい減少したのだろうか。
3月26日より14日間の自己隔離を義務化する”事実上のハワイ州の封鎖”には入ったが、実際にはその後の1カ月で一日平均125人がいまだに到着しており、この1カ月で約4000近い来訪者があったという。
その中には、ハワイに転勤になったミリタリーの人やその家族、ハワイに働きにくる建設や医療などのエッセンシャルワーカー、また元ハワイの住民で他州の大学に通う学生が親元に戻ってくるなどのケースも含まれている。しかし、安い航空券に目をつけて、お金も自己隔離先もなくやってくる考えなしの来訪者や、片道切符できたホームレスなども含まれており、即刻送り返されるケースも出ている。また、自己隔離場所から出歩いて、逮捕される人も各島で続いている。
これらの送還費用はハワイ州の税から支払われるわけで、無責任な来訪者には、ロックダウンの痛みを受け入れている住民からも怒りの声が上がっている。
ロックダウン後の新型コロナウィルス感染者数の推移、その効果は?
さて、肝心のロックダウン後、新型コロナウィルス感染者数はどのように推移したのだろうか。4月28日現在発表されている最新のハワイ州保健局からの公式データがこちら。精度重視で過去10日間に発症した患者数を含んでいないとのことだが、それでも3月17日ごろ、新規感染者が30人を超えたところから、確実に下がっている。
参照:State of Hawaii Department of Health
また、ハワイ州の人口の約7割を占めるオアフ島では毎日のデータを更新。4月20日初の新規感染者ゼロ人を記録、その後も数名やゼロ名という日が続き、かなりの効果を上げている。
参照:Oneoahu.org
特に4月17日以降感染者数は、ガクンと下がり始めたのがお分かりいただけるだろう。数値面からも明らかにロックダウン効果が見えてきたことから、当初の予定通り、4月30日でロックダウン期間が終わるだろう、という人々の期待は当然高まっていった。
しかし、ハワイ州はさらに慎重に事態を見ていたようだ。
「今こそ、気を緩めずに」というメッセージ
ロックダウン延長へ
これらの希望を持たせる明るいニュースを発表しながらも、4月中旬から「ロックダウン期間の中だるみ」を引き締めるための発信が定期的に繰り出された。
まず4月10-13日、イースター(復活祭)の週末3日間、夜間外出禁止命令が発令された。通常なら家族や友人など大勢が集まりお祝いする3連休での感染拡大を警戒し、この3日間は夜11時から翌朝5時までの間、外出禁止令が出され、検問も設置された。(エッセンシャルワーカーの通勤を除く)ワイキキのストリートはさらに静まりかえった。
また、4月20日より、マスク着用がそれまでの「推奨」から「必須」となり、公共の場・店内・公共交通機関内などで必着となった。(一部例外あり)ほかにもボートや釣り・ハイキングなどの野外活動にも人数制限や罰金を設定したりと、気のゆるみを引き締めにかかる命令やニュースが発信された。
これらの「期待値調整」的なコミュニケーションを経て4月21日、ホノルル市長はロックダウン期間を5月31日まで延長することを発表した。続いて、ハワイ州全体も同内容を発表。
当然だが、住民の中には大きな落胆が広がった。
再開を願う州民・市民からのプレッシャーを受け止めつつも、一貫して再開までの道のりは一足飛びには行かない、という慎重な姿勢を崩していない。
トランプ大統領の経済再開ガイドライン
一方、国としてのアメリカの動きは、というと、4月16日、トランプ大統領は「オープニング・アップ・アメリカ・アゲイン」と名付けられた経済再開のガイドラインを発表した。
実際の経済再開の決定は、各州の判断に任せられるが、下記の3つを再開の条件とした。
- 新型コロナウィルスまたはインフルエンザのような患者の検査の陽性率や感染者数が過去14日間で減少傾向にあること
- 急患以外の患者も含めた医療の提供ができること
- 抗体検査を含む、医療従事者への強固な検査プログラムの実施
その上でフェイズを1-3に分けて、 1>2>3と段階的に解除し、その途中で感染者の再増加が見えたら、フェイズをもとに戻していく。
- フェイズ1は、10人以上の集まりは社会的距離を保って実施可(取れないなら自粛)。 依然としてテレワーク推奨、人が集まる共有エリアはクローズ、不要不急の旅行は禁止。学校も休校。老人や持病のある人の訪問禁止。大型イベント、ジムは社会的距離などの条件を厳しく守って再開OK。外科手術も選択的に再開。バーは引き続き営業不可。
- フェイズ2は、50人以上の集まりは社会的距離を保って実施可。依然としてテレワーク推奨。不急の旅行も再開。学校再開。大型イベントは条件を中庸レベルで実施OK。バーも再開可だが密度を下げて営業。
- フェイズ3は、オフィスでの勤務再開。大型イベントは社会的距離を保つ条件で、再開OK。
しかし最終的にはロックダウン再開は、各州の判断に委ねられおり、このガイドラインにどこまで各州が従うのかは、わからない。
トランプ大統領は一貫して経済再開にアクセルを踏み込みたがっており、何度も先走った発言をしては訂正を入れている。
大統領再選を狙っていた矢先のコロナ騒ぎ。そもそも、トランプ大統領の共和党は「小さな政府」主義であり、本来ならば、今回の220兆を超える経済的救済策も、新型コロナウィルステストの無保険者向け無料実施なども、やりたいはずはない。そういう「大きな政府」のやりそうな、つまり民主党がやりそうなことは、本当はトランプ大統領は大嫌いなはずだ。
そしてハワイ州といえば、民主党の大統領、そして皆保険制度「オバマケア」を導入させたオバマ大統領を生んだ州。当然、民主党の強い州である。ハワイの住民がロックダウンに協力的な姿勢で住民が取り組んでいるのも、民主党の強い風土あってのことだろう。
また、今回、新型コロナウィルスの被害が大きかった、ニューヨーク州、カリフォルニア州も代表的な民主党支持州である。
アメリカ国内各州の経済再開の判断は、ハワイ州も含め「州のカラー」も出ることだろう。
ハワイ州、ロックダウン解除への道のりは
前述の通り、住民の期待に反して4月30日までの予定だったハワイのロックダウン期間は、5月31日までに延長された。
この発表をした4月21日、ホノルル市長は「悪いニュースばかりじゃないよ」とばかりに、一部ビジネス・施設の再開案を発表。
・4月30日より、カーディーラー、自動式洗車場、不動産業などアポイントを取っての商談やショーイングなど、距離を保ち、マスク着用で行ってよい。ゴルフ場も再開。
・4月25日より市の公園の再開。(ウォーキングなどの運動可)
再開によって経済的にインパクトのある領域、つまり多くのリテールストアや、レストランの店内飲食、また理美容店やマッサージなどのビューティ関連のビジネスなどについては閉じられたままとなっている。
インパクトの大きい領域ほど、事業者数、従業員数、顧客数のどれもが多いビジネスとなる。再開に向け、慎重にならざるを得ないのはわかる。しかし、ハワイの失業者数は、州の就労者の37%、今や全米一の高失業率だ。
トランプ大統領のガイドラインを参照にするなばら、新規感染者減少トレンドが続いて2週間をもうすぐ超える。
ハワイでも、5月上旬にはさらに大きな再開へのプランが見えてくることを期待している。
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