一方、ウォーク、ジョグ、ラン、スイム、サーフィン、ハイキングなどの屋外や海での運動は認められるなど、食料品を買う以外、家から一歩も出られない厳しいロックダウンを課している国よりは、ゆるいロックダウンとなっていた。
その後、4月20日ごろからはロックダウン効果が出始め、新規患者数が毎日ゼロ~数人と「感染カーブを低くすること」に成功しており、再拡大の兆しもないため、段階的に州内の経済再開に踏み切った。
ロックダウン解除、第1弾(4月30日~)
Vol.4でお伝えした通り 4月30日より下記のような解除が行われた。
【オアフ島の4月30日からの再開業種】
- 不動産業者によるオンラインやリモートでのサービス
- 予約制の自動車販売・リース
- 機械式洗車などの全自動式サービス
- ペットの出張グルーミング・
サービスや出張洗車サービスなどの出張サービス - ピアノの個人レッスンなど1対1対応の個人サービス
- 公営及び民営のゴルフ場
その後も、新規感染者が一桁台をキープできていることにより、トランプ大統領が提示していた解除ガイドライン(再開フェイズしてから2週間、新規感染者増が見られないこと)に沿う形で、5月5日にさらに大きな経済再開がハワイ州のイゲ知事から発表された。
ロックダウン解除、第2弾(5月7日~)
イゲ知事は、5月5日のプレスカンファレンスで、5月7日からハワイ州全体に対して出していた「Stay-at-Home Order」(外出禁止令)を緩和し「Safer-at-Home」(自宅での安全命令)へ切り替えることを発表。併せて、5月7日からハワイ州内全体の小売り業やショッピングモールを含む経済再開を発表した。
その後、同日午後、オアフ島を管轄するホノルル市長、カーク・コードウェル氏がプレスカンファレンスにて、知事の決定に対し「自分は早すぎると考えている。小売業の再開は5月15日からが妥当。」と不満を表明。
州知事は、各島の市長と協議の上での決定としていたが、実際には合意ができていなかったことが露見し、混乱を招く事態となった。
同日夜9時頃にイゲ知事が前言を撤回し、オアフ島のリテール再開は結局5月15日からに決着した。
【オアフ島の5月15日からの再開業種】
- ショッピングモール・小売店舗
- 花屋、ランドスケープなどの食品でない農業
- 天文台やその関連サービス
- 出張ベースでのペットグルーミングサービス
- 選択的な手術を含む医療サービス
- 今までエッセンシャルサービスに入っていなかった非営利活動
- ホールセールビジネス
事業者数が多い小売り業や、人の集まるショッピングモールの再開は大きなニュースである。
再開後の運営ガイドラインとしては、店内キャパシティの50%の占有率で運営すること、ソーシャルディスタンスを守ること、スニーズガード(レジなどに設置するプラスティック製の仕切り)や、ハンドサニタイザーの設置など各種予防措置をとることなどが挙げられている。
ロックダウン解除、第3弾は?
この小売業とショッピングモールなどの再開が順調にいけば、次にホノルル市長が言及しているのがレストランの再開である。
オアフ島のレストランは3月20日より店内飲食禁止となり、持ち帰りとデリバリーのみの営業となっており、バーは営業禁止となっている。ロックダウン期間を乗り越えられず、リケリケドライブインなど閉店を発表するところが出始めている。
レストラン業も、小売業と同様に席数を半分ほどに減らして行うなど、規制がある形での再開になるだろうと言われている。
また、ビューティ系のサロン、理美容室などの残りの業界もこれに続いて検討されていくだろう。
観光業の再開までの道のり
上記の話は、最初のフェイズとしての「ハワイ州内での経済再開」の話だが、さらに大きなインパクトを持つのがその次のフェイズ「観光業の再開」である。
人口130万人のハワイ州に対して、年間ハワイ訪問者は1000万人。
いつから、どのように渡航者を受け入れ、観光業を再開していくのか?
日々活発な議論が行われている。
1、ハワイ州内の各島の渡航制限解除
すでにイゲ知事が「5月内に解除」という具体的なスケジュール付きで、可能性について言及しており、各島で大きなクラスターなどが発生しない限り実現するだろう。
2、アメリカ本土からの国内旅行者の受け入れ
この国内旅行者の受け入れ判断が、一番の難所となるだろう。
5月11日現在、アメリカ各州のロックダウン~解除の状況はこのようになっている。黄色が厳しくロックダウン中の州、濃いブルーが部分的に解除、薄いブルーが近日解除、となっている。ハワイも部分的に解除組に入っている。
参照:ニューヨークタイムズ
厳しくロックダウン中の州(黄色)は、ニューヨーク含む東海岸と、カリフォルニアを含む西海岸とに集中している。
2019年のハワイの旅行者は初の1000万人越えをしたが、そのうち約680万人がアメリカ本土からの国内旅行者である。
さらに、そのうちの460万人が「アメリカ西半分」の州から、220万人が「アメリカの東半分」から来ている。西側:東側=ざっくり2:1の人数比となっている。
「西側半分」の代表、全米最大の人口3300万人を抱えるカリフォルニア州は、ハワイにとって最大の「お客様」だが、まだコロナ感染拡大カーブを抑えられていない。
一方「東側半分」の代表、1800万人のニューヨーク州の感染カーブは、絶対数は多いものの、フラットになってきた。
このように、各州の感染拡大カーブにばらつきがあれば、現在行われている14日間の自己隔離条件の撤廃をまず国内旅行者に対して行うことも難しくなるだろう。
ホノルル市のコードウェル市長は、経済再開のカギとして、さらなる陽性検査と抗体検査の実施、そして感染可能性がある人の追跡システムの構築を挙げている。14日間の自己隔離義務を取り下げたとしても何等かの追跡システムは引き続き到着者に対しても実施される可能性が高い。
「追跡システム」案として、訪問者の足首に付けるGSPトラッキングデバイスの導入法案も検討されているそうだ。アメリカでは足首のGPSトラッキングデバイスは、犯罪者がつけるものとして認知されている。果たしてそこまでするべきか。
「厳しい安全管理」と、「リラックスできるバケーション先としてのハワイ」とのせめぎ合いだ。
ハワイ州としては、「主要各州の感染カーブ」をにらみながら、いつ、どのような方法、基準で「旅行者受け入れ条件緩和」を行うべきか。 明確な観光再開への工程は不確定要素を多く含んでいる。
3、アメリカ以外の国からの旅行者の受け入れ
日本からの150万人の旅行者を含む、約300万人の国外からの訪問者は、アメリカ国内旅行者の受け入れ態勢が軌道にのり、「感染の再拡大がない」ということを一定期間確認してからとなるだろう。
また、コロナ禍が広がったアメリカに対して、各国がどのように渡航制限を解除するか?という問題も大きい。ハワイは感染が広がらなかったとは言え、「アメリカへの渡航制限」はハワイにも当然及ぶ。
幸いハワイは今までのところ、新型コロナウィルスの感染を食い止めることに成功している。
観光業の一日も早い復興を願う観光従事者は多いが、同時に性急な解除に対しての懸念を持つ人も多い。ハワイ州として、またオアフ島として、今後も慎重な舵取りが続く。
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