ハワイの生活でロックダウン前と後で変化したこととは?
3月26日にハワイ州としてのロックダウン(来訪者全員に14日間の自己隔離を義務付ける、実質的な州の閉鎖)始まってからおよそ2週間。その前週の3月20日からレストラン内での飲食ができなくなり、ホノルルのあるオアフ島では3月23日より住民の外出禁止令が執行された。
当初は、観光業・レストラン業に就く人々を中心に、多くの住人が不安や困惑を覚えたが、ロックダウンから2週間が経ち、様々な公的サポートが周知され、コミュニティやボランディアが立ち上がるにつれ、ハワイらしい助け合いのスピリットを活かし、冷静にこの窮地を乗り越えようと結束が高まっている。
握手の代わりにシャカしよう
ロックダウン前のハワイでの友人や家族間の挨拶といえば、握手、抱擁やキスをするなどが一般的だった。しかしロックダウン後は、6フィート(1.82メートル)のソーシャルディスタンスを守ることが浸透し、道で友人と会っても距離を保ちながら軽く挨拶を交わすのにとどまっている。また、握手の代わりにハワイのハンドサインである「シャカ(’ありがとう’などの意味)」を交わす人も多く見られるようになった。
ハワイのスーパーマーケットから無くなった意外なもの
日本や欧米各国でも食料やトイレットペーパーなどの買い占めが話題になっているが、ハワイも例外ではなく、ロックダウン直前や直後では、米やパスタ、缶詰など保存の効く食料品やハンドソープ、消毒液、トイレットペーパーなどが一斉にスーパーの棚から消えた。州外からのサプライが止まっているわけではなく、品薄気味だが、補充されている。
一方で野菜や卵などの生鮮食品など、日持ちがしないものは当初から以前と変わらず普通に変えているが、今は意外なところで、乳製加工品が品薄になっていたりするのが目立つようになった。特に嗜好品であるチーズやアイスクリームなどが一部の店が品切れになっていた。そもそもハワイは食料自給率が10-15%と低い州であり特に乳製品の州内の生産量は極めて低い。
アメリカ本土でのコロナ禍の広がりにより、食料の生産や輸送のサプライチェーンが滞った場合、ハワイのように陸路のない州にはしわ寄せが来やすい。今後も、意外なところでサプライの不足が出てくるかもしれない。
アルコール飲料が売れている
一方でハワイのスーパーやドラッグストアで徐々に売り上げを伸ばしているのが、ビールやワインといったアルコール飲料で売り上げが20%ほどアップしているそうだ。ロックダウン以降、島内のあらゆるバーやレストランでの飲食ができなくなり、テレワークが推奨され家にいる時間が増えたため、外でアルコールを楽しんでいた人たちが、一気に家飲み族に転身したからだ。また、ロックダウン中の閉塞感を吹き飛ばす為に、友人たちとオンラインでハッピーアワーを楽しむ人たちも増えてきている。
「今はハワイに来ないでください」
ロックダウン以前では絶対に聞かれなかったこの言葉。現在、毎週火・木の13時(ハワイ時間)から行われているホノルル市長の定例会見では「今はハワイに来ないでください」の言葉が繰り返されている。3月26日のロックダウン以降も、ハワイ州の住民と関係者以外で毎日100名前後が州外から到着。ハワイに別荘を持っていた人が自己隔離するならハワイで、と渡航してくるケースもあれば、安くなったチケットに惹かれてやってくる人も混ざっているようだ。気になるのはそれらの中にホームレスが混ざっていたこと。このロックダウン期間に、自己隔離する場所もお金もないのに、ホームレスシェルター目当てに片道切符でアメリカ本土からやってくるホームレスがいたというニュースには、地元住民からも厳しい対処を求める声が上がった。
オアフ島民は外出時のマスク着用
現在でもマスク着用に関しては世界中で議論がなされているが、トランプ大統領がマスクの有効性を認めたのと時を同じくして、4月3日からオアフ島でも住民は外出時のマスク着用が強く推奨されている。目的は他人から感染するのを防ぐためではなく、自分が無自覚のコロナ感染者である可能性を認識しウイルスを撒き散らすのを防ぐためである。ハワイでもマスクの品切れが続いているが、ホノルル市長は医療用マスクは医療者に回し、住民は布マスクなどを活用するように指示している。もともとマスク着用はハワイの習慣にはないものの、アジア系住民が多いハワイでは、かなり多くの住民がこの勧告に素直に従っているように思える。
サーフィン・散歩・ラン・ハイクはOK!ビーチで日光浴はNG!
不要不急の外出が禁止されているオアフ島だが、犬の散歩と歩道でのジョギングやウオーキング(公園は閉鎖中・立ち入り禁止)など最低限のエクササイズは認められている。そんなオアフ島でロックダウン前後で激変した風景といえばやはりビーチ。エクササイズとしてサーフィンは認められているが、ビーチでの休憩や日光浴は禁止されているので、ビーチはほぼ無人状態である。またサーファーも海から上がったらまっすく車に乗って家に帰らなければならない。ところがサーファー同士のコミュニティでは駐車しているところ(駐車場は閉鎖されているので、路駐してある道)で話し込むケースが後を絶たず、とうとう市長が注意喚起をする事態に。また駐車した車の中で一定時間を超えて話をするのも禁止されていて、逮捕者や違反切符を切られた人も続出している。罰金は最大$5000、また最長1年の禁固刑となる。4月7日から、ホノルル警察は、この外出禁止命令違反の取り締まりを強化すると発表した。
ロックダウン中のハワイを応援するコミュニティの輪
もともとアロハスピリットの盛んなハワイ。この危機を一緒に乗り越えようと相互扶助のアクティビティやコミュニティの輪が広がっている。
アロハ・マスク(alohamask.org)の取り組み
4月3日の島民へのマスク着用が勧告された際、一番多く聞かれた質問がどこでマスクを手に入れるかであった。現在、ハワイのアロハシャツメーカーやアパレルではマスク生産に乗り出しているが、alohamask.orgでは、手作りマスクの型紙を提供したり、縫い子のボランティアを募集している。ボランティアには登録後キットが送られミシンで簡単に縫うだけで仕上げられるようになっている。
クプナを守る取り組み
クプナとはハワイ語で年長者や祖先などを表す言葉であるが、ロックダウン以降、スーパーなどで優先的に買い物ができる時間(クプナアワー)が設定されるなど年長者をサポートする取り組みが続いている。また人気のレストラン・DA Spotが中心となって組織したMalama mealsでは、公営住宅、ホームレスコミュニティ、介護施設に住むクプナや障害者を対象にフードトラックやケータリングのサービスを行なっている。
子供を守る取り組み Grab-and-go
学校が休みになり給食が取れなくなった子供たちを守る取り組みも始まっている。YMCA Grab-and-goでは、島内の公立学校の敷地などで子供たちに朝食または昼食を無料で配布している。アメリカでは子供の飢餓問題が深刻でありハワイも例外ではない。貧困の中にいる子供たちにとっては、1日1食でも栄養価の高い食事を取れるこの取り組みは、とても貴重だ。
ハワイのレストラン業界を守る取り組み Food-A-Go-go
ロックダウン中のハワイ経済を活況化させ、苦境にあるレストラン業界を支えるために、Hawaii Agricultural Foundationが立ち上げたのが、各レストランのテイクアウトやデリバリーを掲載した無料のポータルサイトFood-A-Go-goである。このポータルサイトから直接オーダーはできないが、知らなかったレストランや新しい味を見つけることができると好評だ。島内の農家と消費者を守る取り組み Farm to Car
以前は多くの人が利用していたファーマーズ・マーケット。今ではほとんどが自粛されている中、オアフ島でファーマーズ・マーケットを主催していたHawai‘i Farm BureauがFarm to Carと呼ばれる新たな取り組みを始めた。これはあらかじめオンラインで野菜をオーダーし、ファーマーズ・マーケットが行われていた場所でピックアップできるという仕組み。初回は200組限定のところに3000を上回る希望が殺到し、あっと言う間に売れ切れ。今後も継続していくので希望者は会員登録してニュースレターで事前に情報を入手するのが最善だ。
今は各々ができるそれぞれの取り組みを
ハワイではこの時期に犯罪を犯した場合、通常時よりも重い刑罰が課されることが決定しているが、閉店しているショップやレストランが並ぶワイキキや、低所得者が多く住む地域を中心に治安の悪化が心配されている。
その一方で、上記のように様々な業種の人たちが今コミュニティのためにできる最善の取り組みを始めている。プラスチック加工会社は医療用の防御マスクの生産を始め、コクアラムやベントテールビアなどアルコール製造業の人たちはサニタイザーの生産を始めた。また食品加工会社は加工品を無料や格安で配布し、ワードビレッジなどでもともと無料で開催されていたヨガ教室もオンラインで続けられるなど、外出禁止の続く生活をアロハスピリットで今を乗り越えようとしている。
ハワイのロックダウン関連記事はこちら>
実録!ハワイのロックダウン 記事一覧>
本記事↓